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南直人, ヨーロッパの舌はどう変わったか 十九世紀食卓革命

19世紀に起きた社会構造の変化がヨーロッパの食生活に与えた影響を解説する。新世界から得られた新たな食材 (ジャガイモ、トウモロコシ、コーヒー、紅茶) や新たな食品加工方法の発明 (缶詰やマーガリン) はもちろんのこと、都市化に伴う人口変動や流通の発達、テーブルマナーの洗練といった社会的な要因がヨーロッパの食生活に様々な影響を与えてきたことがよく分かる。
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岡崎武志, 蔵書の苦しみ

タイトル通りの、蔵書をテーマにしたエッセイ集。著者自身の体験を中心に、知人や過去の文豪達の蔵書に関するエピソードなども。本好きの人間には共感できる内容も多い。後半ではこの蔵書の苦しみの救世主となる可能性を秘めている電子書籍についても少しだけ触れているが、ITには疎いらしくやや上滑りしている様に感じる。
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大橋悦夫, 佐々木正悟, スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術

自己啓発本とライフハックを合わせたようなスタイル。小ネタを詰め込んだ構成で読みやすい。GTD (Getting Things Done) の影響を受けていることもあり、親和性も高め。GTDを導入している人が補完的に読むのも良いかもしれない。IT系の小ネタには数合わせ的なものも見られるのがやや残念。
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芝崎みゆき, 古代エジプトうんちく図鑑

古代マヤ・アステカ不可思議大全の前作にあたる本。相変わらず尋常ではない書き込みで、読み応えは十分。古代エジプトの歴史はもちろん、エジプト旅行記が良い味を出している。
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あさりよしとお, アステロイド・マイナーズ (2)

アステロイド・マイナーズの3年半ぶりの続刊。今回も科学の小ネタを詰め込んだ作品ばかりで読みながらニヤリとしてしまう。どの作品も良いが、一番を決めるなら "独裁者の幻想" だろうか。著者が躊躇なく趣味に走っているのを見ていると嬉しくなる。
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西内啓, 統計学が最強の学問である

ビッグデータ時代に乗った統計学賛美本。前半の統計学を俯瞰した部分は読み物として上出来。このあたりは専門外の人にも楽しめる内容。後半は少々専門的な話になるので素養がある人向けか。一度統計学を学んだ人が、統計学の全体像を整理し直すには良い内容。
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ヴィトルト・リプチンスキ(著), 春日井晶子(訳), ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語

"この1,000年で発明された最高の道具" をテーマに調査を進めるうちに、次々とねじの歴史の深みに嵌っていく様子は上質の推理小説の趣。強いて欠点を挙げると、工具の歴史に詳しくない人間には少々図版が不足しているように思える。門外漢には文字だけでは想像がつかない部分がある。
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渡邉正裕, これが本当のマスコミだ 社員が教える企業ミシュラン

マスコミ各社の企業情報を、従業員の立場で評価したもの。週刊誌的に読むのなら面白いが、真偽が不明な情報や憶測と思われる内容も多いので話半分で。2005年の出版のため、現在では少し古くなっている点も注意。
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中村天風, 君に成功を贈る

様々な実業家に影響を与えた中村天風の著作 (明記されていないが、おそらく講演録を起こしたもの) 。多くの自己啓発本から参照されている種本だけあり、多くの気付きを与えてくれる。書いてあるのは言われてみれば当たり前のことばかりだが、よくよく考えてみると全くできてないことが多い。著者のペンネームと元ヨガ行者という経歴から宗教めいたものを感じる人もいるかと思うが、実際は宗教色はかなり薄め。アレルギーのある人も毛嫌いせずに読んで欲しい。
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山口揚平, なぜか日本人が知らなかった新しい株の本

比較的初心者向けの投資本。素朴な個別銘柄投資のファンダメンタルズ系で、インデックスなどは名前すら出てこない潔さ。企業価値や割安度の算出方法にやや独自性が見られるが、その有効性の検証は一切無し。バックテストの結果もない。コンサルタントの書いた本らしく、読みやすさだけは見事。