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ジュリアン・バジーニ(著), 向井和美(訳), 100の思考実験 あなたはどこまで考えられるか

哲学の議論で用いられているものを中心に、思考実験を集めた本。帯には "これは「読む」本ではありません。「考える」本です。" とあるが、本数が多いのと各項の解説が淡白なため、やや読み飛ばし気味になってしまう。読み物としてみれば十分に面白い。
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ナシーム・ニコラス・タレブ(著), 望月衛(訳), ブラック・スワンの箴言

やで名を上げたナシーム・ニコラス・タレブによる格言をまとめたもの。どことなく英国風な皮肉に満ちた物言いが心地よい。
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杉山美奈子, 好かれるメール 嫌われるメール

メールのTIPS集だが、まだガラケー全盛の2010年発行だけあり、ガラケーメールの特有の内容が多い。ガラケーメールのマナーはローカルルールが多いが、それを独善的に決めているように見える点は気になる。一応はビジネスメールを対象としている様だが、妙に馴れ馴れしい表現が混ざっているのも気になる。それでも、考え方としては何とか頷ける点はある。また内容と直接関係はないが、右綴じで横書きは勘弁してほしい。視線が非常に不自然な流れとなる。
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神戸幸夫, 転落 ホームレス100人の証言

東京周辺でのホームレス100人へインタビューをまとめたもの。基本的に裏をとらずにインタビュー内容をそのまま信じている (と思われる) 内容なので、少し割り引いて読む必要があるかもしれない。それでも事例集として非常に興味深い。購入したのは初版だが、校正不足が目立つのが残念。
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荒井一博, 学歴社会の法則 教育を経済学から見直す

まずは表題ともなっている学歴社会の "法則" 。人的資本論やシグナリング理論といった主要な学説に加え、両親の学歴と子供の学歴の関係などをデータに基づいて論じる。このあたりは著者の専門分野でもあり、納得できる内容。後半は教育にまつわる雑多な話題をいくつか。経済学の視点からのバウチャー制度批判やいじめ対策、学級規模の最適化などは文献もきちんとしており非常に興味深い提言となっている。一方、著者の思い入れが感じられる英語教育論は個人的な経験に偏りすぎているように見える。随筆として読む...
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Robin Williams(著), 吉川典秀(訳), 米谷テツヤ(解説), ノンデザイナーズ・デザインブック フルカラー新装増補版

既にを発行当初の1990年代末頃に読んでいたが、改訂版で読み直し。大まかなストーリーは初版と変わらず、近接、反復、整列、コントラストの4原則の繰り返し。本職のデザイナーからすると物足りない内容だろうが、素人脱出には十分効果的。フルカラー化に伴い、色彩の基礎が追加されたのも良い。
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石井光太, ニッポン異国紀行 在日外国人のカネ・性愛・死

在日外国人にスポットを当てたルポタージュ。著者が過去に海外の貧困をテーマに掲げたノンフィクションを書いていたのと関係するのかもしれないが、在日外国人一般ではなく貧困層を選択的に取材している様に感じる。それらを週刊誌的な記事と割りきって眺めるのには良い。
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松原仁(編著), コンピュータ将棋の進歩

本棚を整理して発掘された1996年発行の幾分古い本だが、小谷善行による "コンピュータ将棋の今後" と題した予測が興味深いので紹介したい。この記事で小谷はコンピュータ将棋の棋力が最も強い人間 (最強の棋士) に達するのはいつ頃かを単純な外挿で予測しているが、結果としてこれが正解であった。コンピュータ将棋は1986年ごろにアマ10級程度の強さで始まり、この記事の描かれた1995年にはアマ2段近くの強さに達している。これはレーティングでは600と1700程度に相当するため、年率で...
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SCRAP, 人狼村からの脱出 狼を見つけないと、殺される

リアル脱出ゲームで名を上げたSCRAPのゲームブック。既存の脱出ゲームの単純なゲームブック化ではなく、ゲームブックという形態を生かした完全新作となっている。いわゆる人狼をモチーフとしているが、ゲームブックの特性上、心理戦よりもロジックを重視する形式となっているので、人狼の名前にはあまり先入観を持たないほうが良いかもしれない。難易度はやや高めで、細かなメモは必須。付属の捜査シートへの指示された書き込みだけでは完全な謎解きは覚束ない。難易度が高い分、自力で解けた時の感動は大きい。...
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谷崎潤一郎, 文章讀本 中央公論社版

もはや古典とも言える著作であり古文や漢文の知識までも要求されるが、その苦労をするだけの価値がある。実用的な文章と藝術的な文章を区別することなくすべての文章に共通する要素を抽出しているので、技術文書に応用出来る部分も多い。