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橘玲, (日本人)

橘玲の新刊。表題ともなっている日本人論を出発点に、話は政治哲学にまで及ぶ。本書の日本人論の柱となっているのはWorld Values Surveyの国民性調査やイングルハートの価値調査による各国の価値観比較。それらを通じて極めて利己的で権威や権力を嫌う日本人像を導き出し、過去の日本人達の行動がすべてその日本人像から導かれることを示す。政治哲学に関する章は氏の過去の著作の集大成といったところだが、グローバリズムや正義といった視点からリバタニアリズム、リベラリズム、コミュタニアリ...
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郷田マモラ, モリのアサガオ 新人刑務官と或る死刑囚の物語 (1) (2) (3) (4)

死刑制度をテーマにした作品。とりあえず4巻まで一気読み。悩める新人刑務官の視点を中心に、加害者の死刑囚、遺族、各種の支援団体、ベテラン刑務官など、さまざまな切り口から死刑制度を考える作品となっている。死刑制度の意義についても、賛成側反対側の双方の考えがきちんと取り込まれており、作者の取材の成果が伺える。絵は少々癖があり好みが分かれそうだが、このテーマは誰もが考えるべきもの。食わず嫌いをせずに読んでほしい。
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神戸孝, 勝つ投資信託 良いファンド悪いファンドの見分け方

シャープレシオによる投資信託選定を進める本。当然ながら、アクティブ型の投資信託寄り。本書の一番の問題点は、シャープレシオによる選定を推奨しているにも関わらず、肝心の過去のシャープレシオと未来の利回りの相関を一切検証していないこと。また、各種の投信の比較を行う際に生存者効果によるバイアスを排除していない様に見える点も気になる。
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冬野花, インド人の頭ん中

インド在住の著者によるエッセイ集。すべて体験に基づいた内容なのでリアリティ十分。ただし、インド文化に対する背景知識が浅いためにどうしても表面的な話になりがちなのが難点か。読み物としては文句なし。
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安藤宏基, カップヌードルをぶっつぶせ! 創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀

あの安藤百福の跡を継いだ安藤宏基による経営論。二代目による視点であり、よくある創業者の自慢本とは一線を画す。最近の日清食品の考えもよく分かる。ブランド・マネージャー制度を核とした社内制度やブランド戦略などを理解してから日清食品の商品ラインナップを眺めてみると、各商品がどのような流れで生まれてきたかが想像できるようで楽しい。色々と気を使ってのことだと思われるが、競合他社への言及が殆ど無いところだけが難点といえば難点か。
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小出義雄, マラソンは毎日走っても完走できない 「ゆっくり」「速く」「長く」で目指す42.195キロ

ジョギングよりも少しだけ負荷の強いトレーニングの解説本。既にある程度ランニング経験があるが、ジョギング以外にどんなトレーニングを行ったら良いかがわからない市民ランナー向け。インターバルやレペティション、ビルドアップなど、陸上競技経験者には常識だが一般の市民ランナーにはまだまだ知名度の低いトレーニングの紹介が中心。それらを取り入れた練習メニューも具体的な内容でわかりやすい。
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デイビッド・セイン, 岡悦子, その英語、ネイティブはカチンときます

場面別の英語フレーズ集。少し刺激的なタイトルが付けられているが、要は意味の細かな濃淡に沿ってフレーズを並べたもの。全体的にボリューム控えめなので、細切れ時間に軽くチェックするくらいでどうぞ。
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井上純一, 中国嫁日記 (二)

中国嫁日記の続編。東日本大震災あり、義両親を連れての中国旅行あり、描き下ろしの出会いマンガありと、盛り沢山な内容。本編とは関係ないが、井上純一が井上純弌の新しいペンネームであることを初めて知った。
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水野俊哉, 幸福の商社、不幸のデパート 僕が3億円の借金地獄で見た景色

水野俊哉がIPO寸前まで行ったベンチャー企業を転かした時の体験談。一人称視点の自伝的な構成で、当時の経営者の心理がダイレクトに伝わってくる。一方でどん底の時期から7~8年が経過していることもあり、当時の自分を客観視した上で選択の失敗を分析できている点も良い。借金を抱えてしまった際の対処方法にも触れられているが、断片的な内容でしかないので、そのあたりを期待する人は他の専門書を併読したほうが良いだろう。
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岡本健太郎, 山賊ダイアリー (2)

共に猟をする仲間も増え、狩猟の幅も広がってきた。単純な狩猟に加えて、猪や雉の解体、スズメバチ駆除など、都会ぐらしの目からは非日常の体験が次々と出てくるのは楽しい。