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クレイグ・R・ライト(著), トム・ハウス(著), 薙野正明(訳), ベースボール革命 21世紀への野球理論

はまだセイバーメトリクスが普及する前の1989年の発行だが、今読んでも新鮮な内容が多い。 CERA (捕手防御率) 、エラー記録の欠点、タイ・カッブとピート・ローズの時代を超えた比較、ナックルボーラーの育成、ホーナス・ワグナーの再評価など、記録ヲタクには興味をそそられる内容ばかり。その中でも注目するべきは以下の2項目。 一つ目は多くの紙幅を割いている投手起用。メジャーリーグ黎明期から現在に至るまで、ルールや環境の変化が投手の寿命にどのような影響を与えてきたかを調査している。そ...
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筒井康隆, 幾たびもDIARY

ちょうど昭和が終わる頃の日記。 を執筆していた時期で、その生みの苦しみが伝わってくる。筒井康隆は買ってはあるが読んでいない本が多いのでそろそろ何とかしないと。
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小島英俊, 文豪たちの大陸横断鉄道

夏目漱石、永井荷風、里見弴、林芙美子、横光利一、野上弥生子といった文豪達が残した紀行文から当時の大陸横断鉄道の様子を辿ろうという企画本。面白くないわけがない。
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金山宣夫, 世界20カ国ノンバーバル事典

色々なジェスチャーが各国でどのような意味を持つかの調査結果。 20ヶ国を対象に50種類のジェスチャーに対する質問紙調査を行っているが、対象がアジア諸国に偏っておりその他の地域はやや少なめ。30年近く前の調査なので、今再調査すると異なる結果が出そう。また、あまりに学者然とした文章は好みが分かれるかもしれない。 ざっと眺めたところ、意外に世界中で似通った意味を持つジェスチャーが多いという印象。もちろん、日本でしか通じないジェスチャーもあるのだが、その多くは見るからに通用しなそうと...
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板橋悟, ピクト図解Lite

の要約版がiPhone Appとして提供されていたので読んでみた。完全版は$5.99だが、要約版のLiteは無償。 要約版しか読んでいないが、そのエッセンスはよく理解できる。要はモノとカネの流れに注目して図を書いてみようというだけなのだが、当たり前に見えても言われてみないとなかなか気付かないコロンブスの卵。
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John Dewan, The Fielding Bible

著者の欄にはJohn Dewanの名前しか書かれていないが、実際にはBill Jamesが大きく関与している。 実は野球の守備に関する統計は、ここ130年ほど進化していなかった。すなわち、試合数、刺殺、補殺、失策、守備率といった野球の黎明期に考えられた指標が惰性で使われ続けてきた。本書は、それらに代わる新たな守備指標を整備しようという野心的な試み。主に以下の4つの指標が用いられる。Relative Range Factor以外は地道な画像分析を基に算出した数値なので個人で検証...
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ダイアン・コイル(著), 室田泰弘(訳), 矢野裕子(訳), 伊藤恵子(訳), ソウルフルな経済学 格闘する最新経済学が1冊でわかる

「今時の経済学って何をやってるの?」という素朴な疑問に答えてくれる本。 あまり読みやすい本でも、読んで面白い本でもないが、経済学というものが浮世離れした数式を扱うだけの学問ではないということはよく伝わってくる。
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城繁幸, 3年で辞めた若者はどこへ行ったのか アウトサイダーの時代

昭和的価値観を廃してどう生きるべきかを示した本。タイトルは前作のが売れたために営業的な理由でつけられたものらしく、内容とはあまり関係がない。この手の労働関連の本をある程度読んでいる人には目新しい情報は少ない。
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ケン・スティグリッツ(著), 川越敏司+佐々木俊一郎+小川一仁(訳), オークションの人間行動学 最新理論からネットオークション必勝法まで

オークション理論の主要なところがよくまとまっている。 副題には "ネットオークション必勝法" と勇ましく書かれているが、Yahoo! オークションなどで広く行われている2位価格オークションでは自身の評価値そのままを狙い撃ち入札するべきという当たり前と言えば当たり前の結論が導かれている。 数学的に興味深いのは、2位価格オークションと1位価格オークションの様に異なる形式のオークションが戦略的同値であり、正しいビッドシェイディングが行われれば売り手の期待収入も買い手の余剰も同一とな...
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高橋洋一, 日本経済のウソ

帯に踊る "勝間和代氏推薦!!" の文字に一瞬怯んだが、内容は真っ当。 長らく続いている日本のデフレ状況について、その原因を日本銀行の失敗に求める。日本銀行は意図的に-1~0%のデフレを作り出しているという説は、その真意はともかくとして状況証拠は十分。