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牧野武文, ゲームの父・横井軍平伝 任天堂のDNAを創造した男

ゲームファンなら知らない人はいないあの横井軍平の伝記。遺したおもちゃやゲームを通して横井の生涯を描く。執筆時点で既に故人となっていたことや、本人があまり私的な文書を残していなかったこともあり、各場面での横井の心情を憶測だけで描いているような箇所があるのが気になる。それでも、横井の仕事をきちんとまとめた文書が少ない中で非常に貴重な資料といえる。
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那須川哲哉, テキストマイニングを使う技術/作る技術 基礎技術と適用事例から導く本質と活用法

テキストマイニングの入門書だが、教科書的な体裁ながら非常に実践的な内容。著者は元々IBMでTAKMIに携わっていた方で、ビジネス的な視点も備えており、TAKMIを用いたコンサルティングの経験から得られた知見も各所に見られる。基本的にテキストマイニングの利用者視点で書かれているため、本格的にテキストマイニングの研究をしようという向きには物足りないかもしれない。それでも、テキストマイニングの適用方法から関連技術まで大枠はひと通り押さえているので、入門書としては申し分ない。
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安藤宏基, カップヌードルをぶっつぶせ! 創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀

あの安藤百福の跡を継いだ安藤宏基による経営論。二代目による視点であり、よくある創業者の自慢本とは一線を画す。最近の日清食品の考えもよく分かる。ブランド・マネージャー制度を核とした社内制度やブランド戦略などを理解してから日清食品の商品ラインナップを眺めてみると、各商品がどのような流れで生まれてきたかが想像できるようで楽しい。色々と気を使ってのことだと思われるが、競合他社への言及が殆ど無いところだけが難点といえば難点か。
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水野俊哉, 幸福の商社、不幸のデパート 僕が3億円の借金地獄で見た景色

水野俊哉がIPO寸前まで行ったベンチャー企業を転かした時の体験談。一人称視点の自伝的な構成で、当時の経営者の心理がダイレクトに伝わってくる。一方でどん底の時期から7~8年が経過していることもあり、当時の自分を客観視した上で選択の失敗を分析できている点も良い。借金を抱えてしまった際の対処方法にも触れられているが、断片的な内容でしかないので、そのあたりを期待する人は他の専門書を併読したほうが良いだろう。
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板橋悟, ビジネスモデルを見える化する ピクト図解

以前読んだダイジェスト版がなかなかの出来だったので親本の方も。ピクト図を書く方法についてはダイジェスト版のままで、新しい情報は無い。差分は多数の事例とダイアグラム発想法やアナロジー発想法と組み合わせた応用例、発想の収束方法など。
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米川伸生, 回転寿司の経営学

経営学というよりは現在の回転寿司業界の業界地図といった趣。それはそれで最近の回転寿司事情に疎い人間には読み物として面白いが。経営学らしい視点は、業界内でのポジショニングとコストの内訳。ポジショニングとしてはグルメ系回転寿司と100円均一回転寿司の二極化の流れや各チェーンのポジショニングの変化の分析が主。回転寿司ならではのコスト構造も興味深い。他の外食産業と比較して異常に高い原価率 (F/Lコスト) でありながら、広告宣伝費、地代家賃を削りつつ薄利多売の構造を維持することで成り...
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茅原裕二, 佐藤さんはなぜいっぱいいるのか? 身近な疑問から解き明かす「商標」入門

弁理士による商標の話。原則論などの固い話ではなく実例から入るタイプなので読みやすい。取り上げられている実例もスターバックスとエクセルシオール、餃子の王将と大阪王将、ラーメンの大勝軒や家系など読み物としても面白いものばかりの上、一般のニュースではあまり取り上げられない商標という切り口で見ると新たな発見が多い。お勧め。
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小堺桂悦郎, 新版 なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?

少し前に売れた会計本の改訂版。小ネタを拾う本と割り切れば面白いが、会計の勉強には厳しい内容。文章はかなり癖が強いので、好みが分かれるだろう。
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水野俊哉, 成功本50冊「勝ち抜け」案内

いわゆる「成功本」の解説書だが、単なるカタログにとどまらず、起業経験もある著者の意思がきちんと入っているのが頼もしい。巻末に多くの成功本の共通項を抜き出した成功法則がまとめられているが、どれも納得できるものばかり。カタログ部分も手を抜いていない。概要に加えて、誤読しやすい点が指摘されているのもポイント。取り上げられている本はあえて振れ幅を広くとった印象がある。デール・カーネギーやナポレオン・ヒルといった定番からスピリチュアル系のトンデモ本まで種類に富む。
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谷口正次, メタル・ウォーズ 中国が世界の鉱物資源を支配する

ベースメタル、レアメタル、レアアースといった鉱物資源の世界規模での奪い合いを描いた作品。著者は小野田セメント出身で世界各地での鉱山開発の経験を通じて資源戦争 (メタル・ウォーズ) の現状を熟知しているため、日本の資源戦略のお粗末さに対する怒りが強く感じられる。マクロで見た統計的な情報と、自身の経験や現地取材によるミクロな情報の両方がきちんと押さえられており、資源戦争の現状を把握するには最良の一冊。反面、読み物として見ると少々厳しい。前半半分程度を中国の資源囲い込みの実例が占め...