fiction

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城山三郎, 価格破壊

中内功をモデルにした (とされる) 経済小説。初出は昭和44年の週刊読売の連載と少し前の作品だが、そのエッセンスは古くなっていない。少々後味の悪い箇所があるものの、エンターテイメントとしても上々。
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長嶋有, 猛スピードで母は

芥川賞も受賞した表題作の "猛スピードで母は" と、映画化もされた "サイドカーに犬" の二本立て。どちらも何か大事件が描かれるわけではないけれど、ちりばめられた細かな表現が好み。
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麻耶雄嵩, 鴉

麻耶雄嵩の本を読むのは初めて。ちょっとクセのある登場人物の名前など少し読みにくい箇所はあるが、文庫500頁超を一気に読ませるだけの魅力はある。地図にない閉じた村という設定の非日常性にはやはり引き込まれる。その舞台装置を駆使したトリックはカタルシスも十分。
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我孫子武丸, 殺戮にいたる病

実は全然読んだことのない ("かまいたちの夜" は一度だけプレイしたけど) 我孫子武丸の代表作とのことで読んでみたが、気持ちよく騙され、最初に戻っての二度目の読書を楽しんだ。あまりミステリには詳しくないが、今はこの種の作品がトレンドなのだろうか。
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筒井康隆, ロートレック荘事件

あまり警戒せずに読み進めていたら、気持ちいいくらいに騙されていた。何を書いてもネタバレになるのでかけないが、普段ミステリを読まない人でも十分に楽しめるのでぜひ手にとって欲しい。
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赤城毅, 書物迷宮

書物狩人の続編。相変わらず少し説明的すぎるきらいがあるが、歴史的事実と虚構の微妙なバランスはお見事。
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赤城毅, 書物狩人

古書というものの中には、国家や宗教に大きな影響を与えかねないような価値を持つものが多数あるわけで、そこを主題に据えたミステリ。価値ある古書をどこからともなく入手する書物狩人 (ル・シャスール) というヒーロー象は古書好きにはたまらない。喜国雅彦先生も帯でそのようなことを述べている :-)娯楽小説としては申し分ない一冊。
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大森望(編), 日下三蔵(編), 虚構機関 年刊日本SF傑作選

読書に占めるSF率が低下しており、もはやどこから読んだら良いのかもわからなくなっている私のような人間には嬉しい傑作選。北國浩二、林譲治、伊藤計劃あたりはかなり好み。
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兼重日奈子, 幸せな売場のつくり方

小説仕立てのビジネス書。うまく回っていないファッション専門店を立て直すというお話だが、ファッション専門店に限らず多くの小売店に適用できそう。ただし、日用品の小売店や大規模店はまた違う方法論が必要だとは思う。
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ジェームズ・サーバー(著), 稲葉明雄(訳), 永井淳(訳), 村上博基(訳), 12人の指名打者 野球小説傑作選

"古き良きベースボール" をテーマに集められた12本の短編集。翻訳は今ひとつだが、それぞれ全く異なるテーマで書かれているので飽きずに楽しめる。全体的に当たりの作品が多いが、特に "新米審判" や "閃くスパイク" の様なベテランが新人を成長させるタイプのベタなストーリーが米国ベースボールの価値観を感じさせてくれて実にいい。