fiction

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西澤保彦, 人格転移の殺人

SF要素含みのミステリ。突飛な設定ではあるが、ミステリとしてはフェアな範囲。 テンポが良く進むのは良いのだが、中盤がさすがに駆け足過ぎるか。
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東野圭吾, 仮面山荘殺人事件

十字屋敷のピエロに続いてもう一冊、東野圭吾の初期作品を。 冒頭からのそこはかとない違和感を小説だからとして無意識にスルーしていたが、その隙を見事に突かれた。帯の "本格ミステリーの傑作" のコピーには少々納得しかねるが、傑作であることには間違いない。
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歌野晶午, 死体を買う男

作中作という構造を活かした多層的な物語づくりは見事の一言。 著者の江戸川乱歩マニアぶりを十分に発揮した語り口も良いアクセントになっている。萩原朔太郎の人物造形も実に良い。
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法月綸太郎, 山口雅也, 有栖川有栖, 加納朋子, 西澤保彦, 恩田陸, 倉知淳, 若竹七海, 近藤史恵, 柴田よしき, 不条理な殺人

短編ミステリ10本を収めたアンソロジ。全体的に小粒な上、やや質のばらつきが大きい印象。 中では、法月綸太郎のトゥ・オブ・アスがベストか。
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ハリイ・ケメルマン(著), 永井淳(訳), 深町眞理子(訳), 九マイルは遠すぎる

安楽椅子探偵ものの古典だが、実は読んだことがなかった。 表題作の出来が突出しているように感じる。翻訳は及第点。
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折原一, 倒錯の死角 201号室の女

折原一の倒錯三部作の一作目。 覗く男と覗かれる女の視点を切り替えながらの構成はダレさせず、最後までページをめくる手が止まらない。 巻末の袋とじは今ひとつ意図がわからない。この長編を立ち読みする人はそれほど多くないはず。
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歌野晶午, 葉桜の季節に君を想うということ

歌野晶午のミステリ作品。 ネタバレになるので詳細は控えるが、トリックの質は少々強引さを感じて今ひとつ。巻末の補遺に著者自ら説明をしているところをみると、強引さは意識してのものだったのかもしれない。なお、補遺自体がネタバレになっているので未読の人は注意が必要。
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伊坂幸太郎, アヒルと鴨のコインロッカー

文学のようなミステリのような不思議な作品。 綿密に組み上げられたプロットは見事の一言。文体は少々スノッブな感じで好みが分かれるかもしれない。
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東野圭吾, 十字屋敷のピエロ

東野圭吾の初期作品。少し前のミステリらしいミステリが心地よい。 トリックだけをみると今ひとつだが、ピエロの人形視点の語りというアイディアは今なお新しい。
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服部まゆみ, この闇と光

ネタバレになるので詳しくは書かないが、仕掛けは実にお見事。文章も読みやすい。 登場人物の行動原理に少々無理を感じるのがやや難か。