history

book

岩村充, 貨幣進化論 「成長なき時代」の通貨システム

寓話を用いて貨幣の成り立ちを説明した後、金本位制からニクソン・ショックを経て現代に至るまでの貨幣の流れを駆け足で。貨幣の歴史を大掴みするには良書。
book

今尾恵介, 地図で読む戦争の時代

著者は古地図好きが高じて本職としてしまった方。全編から古地図への愛が感じられる。地図上の不自然な区割りの理由を探る、植民地の地図を読み解く、戦時改描の歴史など、軍事の歴史と密接に絡んでいる地図を眺めるのは実に楽しい。欲を言うならば、全編モノクロなのが残念。色が重要な意味を持つ地図だけでもカラーで収録して欲しかった。
book

山田奨治, <海賊版> の思想 18世紀英国の永久コピーライト闘争

現代の期限付きの著作権のきっかけとなった18世紀英国の法廷闘争を仔細に追いかけた作品。著作権の制限が決して遂行な理念だけではなく、海賊出版社の営利を求める姿勢によって生まれたというのは実に興味深い。
book

トーマス・クーン(著), 中山茂(訳), 科学革命の構造

実はまだ読んでいなかった古典。パラダイムとはもはや便利に使われる語となってしまっているが、元々は精緻に組み上げられた概念であるのがよく分かる。翻訳が今ひとつこなれていないのが残念。
book

松濤明, 新編・風雪のビヴァーク

昭和初期の伝説的登山家、松濤明の各種の著述から遺書までをまとめたもの。紀行文は登歩渓流会の会報に寄稿されたものが中心のため、山をやっている人以外にはあまり楽しめないかもしれないが、戦前戦後の登山事情を知る上では貴重な資料といえる。一方で、スポーツアルピニズム批判などの思想は現代でも通用する内容と感じる。
book

ダニエル・コーエン(著), 林昌宏(訳), 経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える

帯の宣伝文は "銃・病原菌・鉄" の経済版の様な印象を与えるが、方向性はだいぶ違う。全時代を通じた大きな仮説がやや弱いが、各時代の個別のエピソードは興味深いものが多い。
book

さくら剛(著), しりあがり寿(イラスト), 三国志男

三国志が好きすぎて中国の三国志遺跡を旅してしまった男の旅行記。著者はかなり濃い目の三国志ファンながら原点が横山光輝や光栄にあるので、私のようなライトなファンにも共感しやすい。一昔前のテキストサイトを思い出させるフォントいじりは好みが分かれるか。
book

礫川全次, 隠語の民俗学 差別とアイデンティティ

在野の研究者による隠語の世界への導き。先人の研究からきちんと解説しているので、初学者でも楽しめる構成となっている。隠語の性質上、記録が少なく想像に頼らざるをえない部分が多いとはいえ、語源の推定などでやや論理が飛躍している箇所が見られる。
book

武田知弘, ナチスの発明

表題通りのナチスの発明はごく一部で、大半はナチス時代のドイツに少しでも関係ある発明や製品、研究をこじつけたもの。それでも分量が足りなかったのか、後半はナチスの成り立ちや人物紹介で水増しされている。巻末に参考文献一覧はあるものの、すべて和書で二次資料が中心の上に各項目がどこから引用したものかがまったく示されていないので、話半分で読むのが良いだろう。コンラート・ツーゼが計算機における二進法利用を最初に発案したとするなど、明らかな誤りも見られる。
book

石毛直道(監修), 吉田集而(責任編集), 講座 食の文化 第1巻 人類の食文化

味の素食の文化センターの設立10週年を記念して企画されたシリーズの一冊目。人類の食文化という非常に大きく野心的なテーマを掲げており、地理や歴史はもちろんのこと、考古学から言語学まで様々な方面から仁るの食文化を捉えている。著者陣も非常に豪華で、その道を代表する面々ばかり。気軽に手に取る種類の本ではないが、食に興味がある方はぜひ一読して欲しい。食を捉える視点が広がることは保証できる。