philosophy

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成毛眞, 本棚にもルールがある ズバ抜けて頭がいい人はなぜ本棚にこだわるのか

だいぶ思想が強めで、読む人を選ぶ本。読書とは純粋な楽しみのために読むことではなくビジネスに役立つ情報を仕入れることである、社会人として読むべき本のジャンルというものがある、文芸作品やコミックは頭から通しで読むだけなので本棚に保管する必要はない、本棚は自分がどう見られたいかを表すものである、といった思想に素直に共感できる人ならばおすすめできる。そうした思想はさておき、テクニックとしては参考になる部分はある。新鮮な本棚、メインの本棚、タワーの本棚 (辞書や事典、名言集などのよく使...
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橘玲, テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想

技術の裏付けを得て先鋭化するリバタリアンの物語。テクノ・リバタリアンの思想そのものに加え、それを推し進めるイーロン・マスク、ピーター・ティール、サム・アルトマン、ヴィタリック・ブリテンといった人物を生い立ちから追っているのも興味深い。彼らがたどり着いたユニヴァーサル・ベーシックインカム (USI) や共同所有自己申告税 (COST) といった政策案も押さえられてており最新の事情も掴める。
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真崎庸, ご飯の炊き方を変えると人生が変わる

著者は新井薬師前の日本料理店 "柾" の店主。タイトル通りご飯の炊き方の本だが、さすがにそれだけでは分量は少なめで、後半の出汁やおかずの話を除くと小冊子に収まる程度。数多の料理本と異なり、属人性を極力廃して再現性を上げるための工夫がなされているのが工学的で良い。火力は強火と蛍火のみで、微妙なさじ加減となる中火や中強火は使わない。人間が判断しなければならないのは沸騰したか、泡立ちがおさまったかだけで、あとは時間で管理する。余計な工夫をせずに本書に従えば誰でも安定したご飯が炊ける...
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大鐘良一, 小原健右,ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験

主にJAXAの宇宙飛行士選抜試験に密着したドキュメンタリ。元々JAXAは宇宙飛行士選抜試験の取材に積極的ではなかったが、NHKスペシャルで初めてその扉が開かれた。本書はその副産物に当たる。世間一般の宇宙飛行士のイメージというと、よくわからないけれど何か優秀な人といったところだろうが、その実態は大きく異なる。もちろん優秀であることに疑いはないのだが、それ以上に情熱や協調性、仲間を思いやる心が何よりも重視される。これは考えてみれば当たり前の話で、宇宙という閉塞環境で様々な国のメン...
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井上達夫, リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください

いわゆる "エリート主義で偽善的なリベラル" が信用を失って久しいが、本来のリベラリズムは正義を柱とする強固な主張である。本書の多くの部分はこの正義に関する議論が占めている。ここで言う正義とは反転可能性を持つ正義概念であり、すなわち、自分の他人に対する行動や要求が、もし自分がその他者だったとしても受け入れられるかどうかによって判定される。これを曖昧にしてご都合主義的に二重基準 (ダブルスタンダード) な正義の使い分けをしてしまっているのがリベラルの没落の原因の一つの理由だろう...
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施川ユウキ, 鬱ごはん (5)

前巻に引き続きコロナ禍の中でのフードデリバリー編。時事ネタを取り込みながらもどこか普遍的な感情を揺さぶってくる独特の作風は健在。
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橘玲, 無理ゲー社会

出自ではなく個人の能力や業績により人生が決まるメリトクラシーな社会の構造を解き明かすのが本書の大きなテーマ。しかし、その正体が明らかになるにつれ、多くの人にとって攻略不能な "無理ゲー" であることも明らかとなってしまう。特に現代社会では生まれ持った知能が否応なしに格差を生み出してしまうが、身分制社会のように生まれのせいにすることも許されず、同じゲームに参加することが強制される。この "無理ゲー" による格差の拡大を食い止めるのは、戦争や革命、統治の崩壊、疫病などによる社会の...
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齋藤孝, 上機嫌の作法

私には、不機嫌さは「なんらかの能力が欠如しているのを覆い隠すため」だとしか考えられません。という冒頭の考察は実に至言。また、世に蔓延る上機嫌はバカで不機嫌は知的という思い込みも何の根拠もないもので、知性のある上機嫌を目指そうという本書のメッセージには共感できる。肝心の上機嫌になる方法は散発的なtipsがずらずらと続くだけであまり体系立てられたものではないが、とりあえず思いつくものから試してみるくらいでまずは良いのではないかと思う。
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ビル・パーキンス(著), 児島修(訳), DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール

今までのマネー本はいかに資産を増やすかばかりで、その使い方についてはファイナンシャルプランナーに相談して必要な金額を見積りましょうとアドバイスするのがせいぜいだった。一方で本書はいかに資産を有効に活用して豊かな人生を送るかを述べている。そのメッセージは明快で、経験に投資をしろというもの。この方針はモノよりも経験に投資することが幸福度を高めてくれるという近年の幸福度の研究とも整合している。経験は記憶として残り、常に思い出を通して人生の出来事を再体験できる。自身の体験以外に家族の...
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施川ユウキ, 鬱ごはん (4)

相変わらず鬱々とした展開だが読み続けてしまう魅力がある。クーポンメールによるタダメシ、コロナ禍でのフードデリバリーのバイトなど、プロレタリア文学のような趣すらある。