politics

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伊藤祐靖, 邦人奪還 自衛隊特殊部隊が動くとき

小説の体裁を取ってはいるが、実態はシミュレーションシナリオに近い。著者は海上自衛隊の特別警備隊の創設に関わり専任将隊長も務めた経歴の持ち主だけに、細部の書き込みひとつひとつが地に足がついている。有事の際の勇姿だけでなく、その裏にある政治や、彼らの退職後の事情までをも描いているのが素晴らしい。
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ブレイディみかこ, 子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から

英国の底辺託児所 (緊縮託児所) で働く著者によるドキュメンタリ。現場の視点は、外部のジャーナリストの著作とは一線を画している。英国の分断、下層英語を話す者への緩やかな差別、ダイヴァーシティの実態、ワーキングクラスの右傾化の背景、英国のDVの実態など、現場からしか見られない暗部がこれでもかと描かれている。おすすめ。
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ブルース・ブエノ・デ・メスキータ(著), アラスター・スミス(著), 四本健二(訳), 浅野宜之(訳), 独裁者のためのハンドブック

ポリティカルサイエンス本。権力維持の構造は独裁政権だろうと民主主義だろうと同じであるという視点に立つことで新たな発見がある。政治とは権力を保持することであり、それは独裁政権でも民主主義でも変わりがない。その権力の後ろ盾は名目的な有権者集団 (取り替えのきく者)、実質的な有権者集団 (影響力のある者)、盟友集団 (かけがえのない者) の多層構造になっており、これも政治体制に依らず不変である。独裁政権では言わずもがな小さな盟友集団が実際にリーダーを選んでおり、その他の多くの人々は...
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橘玲, テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想

技術の裏付けを得て先鋭化するリバタリアンの物語。テクノ・リバタリアンの思想そのものに加え、それを推し進めるイーロン・マスク、ピーター・ティール、サム・アルトマン、ヴィタリック・ブリテンといった人物を生い立ちから追っているのも興味深い。彼らがたどり着いたユニヴァーサル・ベーシックインカム (USI) や共同所有自己申告税 (COST) といった政策案も押さえられてており最新の事情も掴める。
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ジェフリー・ケイン(著), 濱野大道(訳), AI監獄ウイグル

様々なディジタル技術を駆使した監視により監獄となったウイグルの告発本。日本語版の表題にAIと入っているのはマーケティング上の理由かと思われる。AIは監視を実現する要素技術の一つに過ぎず、、実際には保甲制度を始めとするアナログな末端の監視制度が担っている役割が大きい。原著のThe perfect police stateのほうが内容をよく表している。衝撃的な内容だが、彼の国のことなのでさもありなんと言ったところ。原著はすでに3年前の出版なので、現在ではさらに自体が悪化しているの...
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大村大次郎, 脱税の世界史

国家につきものの税金だが、その歴史は常に脱税と共にあった。古代ギリシャからビートルズまで、古今東西の脱税を取り上げている。著者は元国税調査官ということもあり、徴収側の理屈に偏っているのは注意。
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大内伸哉, どこまでやったらクビになるか サラリーマンのための労働法入門

タイトルからはサラリーマンがどこまで攻められるかという指南本を想像してしまうが、中身はかなりまっとうな労働法の事例集。賃金、労働時間、転職など、労働者が直面する問題は一通りカバーされている。
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井上達夫, リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください

いわゆる "エリート主義で偽善的なリベラル" が信用を失って久しいが、本来のリベラリズムは正義を柱とする強固な主張である。本書の多くの部分はこの正義に関する議論が占めている。ここで言う正義とは反転可能性を持つ正義概念であり、すなわち、自分の他人に対する行動や要求が、もし自分がその他者だったとしても受け入れられるかどうかによって判定される。これを曖昧にしてご都合主義的に二重基準 (ダブルスタンダード) な正義の使い分けをしてしまっているのがリベラルの没落の原因の一つの理由だろう...
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西村晋(著), 井上純一(イラスト), 中国共産党 世界最強の組織 1億党員の入党・教育から活動まで

中国共産党と聞くと党大会のニュースで見る党中央ばかりが思い浮かぶが、それは中国共産党の頂点の部分に過ぎない。日本の報道によくある中国共産党の組織図も最上層部のみに過ぎず、実際には1億人に迫る一般党員が何層もの階層を形成して中国共産党を支えている。これだけの巨大組織をトップダウンだけで動かすのは不可能であり、ビジョンを共有して人の和 ("人和" は孫氏にも出てくる言葉であり中国の組織にも馴染みが深い) を成す必要がある。この部分を担う仕組みが中国共産党には内蔵されており、党中央...
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奥山真司(監修), ビジネス教養 地政学

イラスト多めの地政学入門書。本当のさわりの部分だけなので、普段からこの分野のニュースを追っている人には得られるものが少ないかもしれない。