politics

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冷泉彰彦, 民主党のアメリカ 共和党のアメリカ

米国の二大政党の仕組みとそれぞれの対立軸は良く取り上げられるが、その原則では説明できないねじれの部分も多い。例えば共和党は小さな政府を指向しているにもかかわらず、なぜ小ブッシュ政権はあれだけの財政赤字を積み重ねてしまったのか、など。そういったねじれにいたった経緯や、歴史的な対立軸の推移などがきちんと押さえられているのは外国人にはありがたい。
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奥野修司, 沖縄幻想

癒しの島、長寿社会といったイメージを持たれることの多い沖縄。そのイメージの裏にある実体は、3K産業 (観光、公共事業、基地) だよりの経済だった。 そういった実体を受け止めた上で、沖縄をどう開発して行くべきかの論は、沖縄に対する愛が感じられて実に興味深い。 なお、本書には同じ著者によるに関する記述が所々に出てくるので、併せて読んでみた方が良いかもしれない。
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上杉隆, 世襲議員のからくり

なぜ世襲議員が生まれるのかという理由として、政治資金管理団体の非課税相続、後援会組織の世襲、看板の世襲の3点が解説されており非常にわかりやすい。中でも、政治資金管理団体の非課税相続については知らない人も多いと思うので一読をおすすめする。 ただし、肝心の世襲議員がなぜダメなのかについての考察が不十分。一部の世襲議員の問題行動を取り上げて叩いているだけで、非世襲の議員と比較しての客観的な評価がされていない。 本書の内容とは関係ないが、ブックオフオンラインでこの本を購入したら、上杉...
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山本直樹, レッド (1)

連合赤軍を中心とした革命運動を描くマンガ。 テーマは非常に面白く、当時の時代を感じさせる描写も良いのだけれど、膨大な登場人物の行動が淡々と描写されるという本書の構成はある程度の予備知識がないと理解しにくい。
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竹内薫, バカヤロー経済学

経済というものが、いかに各者のインセンティブによって動くものかがよく分かる。 後半は経済というよりもほとんど政治の話だが、これもインセンティブを軸に説明されておりわかりやすい。
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川島博之, 「食糧危機」をあおってはいけない

巷で良く騒がれる食糧危機説の実体を一つ一つ解きほぐしてくれる。「BRICsが世界の穀物を食らいつくす」、「買い負けで魚が手に入らなくなる」、「食料生産は限界に達している」などなど、よく語られる内容のほとんどが、過去にも定期的にブームとなっている (そして予測が大外れしている) 各種の食料危機説と同様に根拠のない煽りだということがよくわかる。 また、食料危機説に反論するだけでなく、それらが生まれる背景についても触れているのが面白い。特に、なぜ日本でだけ食糧危機が叫ばれるのかにつ...
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山下一仁, 農協の大罪 「農政トライアングル」が招く日本の食料不安

農協・自民党・農水省の農政トライアングルが、彼らの組織を守るため、高米価を維持せざるをえない構造となっていることがよくわかる。 巻末の食料安全保障に関する議論は少々悲観的すぎるとは思うが、主業農家が効率的な農業を行えるようにするための各種の提案はきわめて有力に見える。
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大塚英志, 「彼女たち」の連合赤軍 サブカルチャーと戦後民主主義

連合赤軍の女性たち、特に永田洋子を戦後のサブカルチャーの文脈から読み解こうという試み。 あくまでサブカルチャー側からの視点なので、どうしてもこじつけや記述の薄さを感じてしまう部分が多い。また、後半は連合赤軍よりも、オウム真理教、少女まんが、宮崎勤などの雑多な論考 (の既発表文書の収録) なので、連合赤軍よりもサブカルチャー一般に興味のある人向けか。
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松島悠佐, 戦争の教科書

"戦争の" 教科書というよりも、"日本の安全保障の" 教科書といった色が濃い。 なぜ戦争が起きるのかというメカニズムに始まり、戦争が起きうる可能性を踏まえた上で日本がどのように備えるべきかまでが良くまとまっている。筆者独自の新規性はあまり見られないものの、戦争の本質や自衛隊のあり方を考えるための入門書としてはおすすめできる。
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鯖田豊之, 金 (ゴールド) が語る20世紀 金本位制が揺らいでも

20世紀の日本と世界の歩みを金本位制という視点から切り取った歴史書。歴史の教科書的な記述が続き気軽に読みにくい箇所もあるものの、金重量換算した外貨準備高を通じて国力の変動をマクロ的に眺めるという試みは非常に新鮮であり、それらは各国の継戦能力を反映しているという意味から軍事面でも興味深い。 特にその軍事面に注目すると、太平洋戦争緒戦の日本の戦果が米国への膨大の金現送と軍需物資の買付に依存していたことは他の歴史書ではあまり触れられることのない事実かと思う。また、日清・日露戦争の間...