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ブルック・ハリントン(著), 庭田よう子(訳), ウェルス・マネジャー 富裕層の金庫番 世界トップ1%の資産防衛

著者自らがthe Society of Trust and Estate Practitioners (STEP) の資格を取得し、ウェルス・マネジャーのインサイダーとして同業者たちへのインタビューを行っている。こうした同業のよしみを活かしてかなり踏み込んだ情報を引き出しているのはさすがとしか言いようがない。本書で扱う富裕層は日本でよく取り上げられる野村総合研究所の定義よりは一段上で、3,000万ドル以上の運用可能残高が最低ラインとされている。彼らは従来の有閑階級とは異なる種...
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横山雅司, マンガ「実は〇〇」な動物図鑑

クック先生の動物講座の書籍化。動物を美化しない毒入りのまま出版に至ったのが素晴らしい。子供向けにも良い内容。寄生虫などの子どもの食いつきが良いネタも多数収録。
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ブレイディみかこ, 子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から

英国の底辺託児所 (緊縮託児所) で働く著者によるドキュメンタリ。現場の視点は、外部のジャーナリストの著作とは一線を画している。英国の分断、下層英語を話す者への緩やかな差別、ダイヴァーシティの実態、ワーキングクラスの右傾化の背景、英国のDVの実態など、現場からしか見られない暗部がこれでもかと描かれている。おすすめ。
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縄文ZINE(編), 望月昭秀(著), 小久保拓也(著), 山田康弘 (著), 佐々木由香(著), 山科哲(著), 白鳥兄弟(著), 松井実 (著), 金子昭彦 (著), 吉田泰幸 (著), 菅豊 (著), 土偶を読むを読む

ベストセラーとなったの検証本。たびたび売れてしまうトンデモ本の検証は誰かがやらねばならないにもかかわらず学術的には評価されない仕事であり、こうした努力に頭が下がる。本書ではこうした作業を "雪かき" と表現しており、実に的確な例えだと思う。こうした検証本としての役割を抜きにして、現在の縄文研究を学ぶうえでも良書。土偶がどこまでわかっていて、何がわかっていないのか、その概観を掴むことができる。
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ニック・エンフィールド(著), 夏目大(訳), 会話の科学 あなたはなぜ「え?」と言ってしまうのか

主流の言語学は書き言葉を研究対象としているが、本書で扱う相互作用言語学は話し言葉による "会話" に注目している。会話には書き言葉とは異なるルールがある。例えば、質問には応答しなくてはいけない、応答をしない場合は質問者は相手を非難する権利を得る、これから話す内容を予告した話者を遮ることは許されない、予告された側は続きを促す信号 (相槌) を送らなくてはいけない、一度に話すのは一人、などのルールは様々な言語の会話に共通して見られる。また、これらのルールに時間が深く関わっていると...
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本棚の話

本は減らない自宅の書斎はすでに本に埋もれている。天井までの大型の本棚が5台設置されてはいるものの、そんなものはとうの昔に使い果たし、溢れた本は段ボールに詰め込まれて宅内の収納に分散して置かれている。容積、重量、どの点から見ても対策が必要な状況である。もちろん本自体を減らすという抜本的な対策が必要なのは重々承知であるが、その試みはいずれも挫折してきた。もちろん読み返すことがない本は随時処分しているが、保存する必要がある本は日々増える一方である。電子書籍への移行は何度か試みてはい...
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柳治男, <学級> の歴史学

現代の日本の公教育で当たり前となっている "学級" だが、中世までの学校には存在しないものであった。当時は教室 (class room) すら存在せず、ひとつの教場 (school room) にまちまちの年齢の生徒が集まって教育を受けるのが一般的であった。本書は学級制に基づく学校、すなわち義務教育制度が成立する過程を丁寧になぞり、その上で現代日本の学校がはらんでいる問題を明らかにするものである。学級が存在するにはその前提として学習内容を時間割として定めておく必要がある。これ...
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長沼伸一郎, 現代経済学の直観的方法

現代経済学と銘打っているが中身はほぼマクロ経済学で、ミクロ経済学はほぼ触れられない。それでも、古典派経済学とケインズ経済学の基礎を大づかみするという目的だけに絞れば良書といえる。それぞれの経済学の生まれた時代背景も添えられているのもわかりやすい。最後の第9章のみは既存経済学の解説から離れて自説を展開しており、他の部分とだいぶ毛色が異なるので注意が必要。著者の専門である物理学の縮退や囲碁の概念を用いて経済を説明しようという試みは面白いが、別の著作で展開するべきだったと思う。
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中村富士美, 「おかえり」と言える、その日まで 山岳遭難捜索の現場から

山岳遭難捜索チームLiSSの代表を務める中村氏による実録レポート。看護学校で学んだというプロファイリング術を駆使して遭難時の行動を推測していく様子は推理小説のよう。もちろん、登山者の心得としても役に立つ。欲を言えばもう少しボリュームが欲しいところで、ここは続編に期待する。
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Hayato Ito, 普通の人が資産運用で99点をとる方法とその考え方

同名のサイトに加筆して書籍化したもの。資産運用自体の考え方自体はまともなので、普通の人に勧めるには良い本だろう。ただし、税に関する記述に粗があるのは注意。いざとなればいつでも逃げられるNISAはまだしも、iDeCoのように長期間資産を拘束されるにもかかわらずコロコロ変わる仕組み (実際に退職所得控除の改悪が迫っている。特別法人税もいつ復活してもおかしくない) に対し、そのあたりの説明なしに無条件で最優先に投資するように勧めるのはあまりに楽観的すぎると思う。