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中村敏雄, スポーツの見方を変える

スポーツの高度化ばかりに注力し大衆化が軽視されてきた日本の姿を皮切りに、近代スポーツの本質や体育との違いを論じる。スポーツ文化を語る人は多々あり、Jリーグ立ち上げ後はスポーツと地域社会の関わりに踏み込んだ本も多いが、本書はそれらとはまた違った高度化と大衆化という対立軸を提供する。最終章の、競泳を例に挙げたスポーツや体育のあり方は、近代スポーツの限界をはっきりと自覚させてくれる好例。様々な報道で取り上げられる競泳はまるで水泳の代表の様な顔をしているが、実は水泳の様々な要素のうち...
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中尾佐助, 分類の発想 思考のルールをつくる

著者の専門とする植物学やその親玉である本草学・博物学はいわば分類を行うための学問と言える。その学問の中で、タクソンやクライテリオンがどの様に定義されているかは、他分野でも参考になるだろう。恥ずかしながら自分は今まで類型分類や規格分類、系譜分類の違いにすら鈍感であっったが、それらの分類手法の差を意識することで一段上からの視点を得られたことが実感できる。
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押切蓮介, ピコピコ少年

著者と同世代で完全にシンクロしてしまう。ゲームばっかりやっているダメ少年の自伝マンガなのだけれど、今思い返すと自分も負けないくらいダメ少年だった。
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John Dewan, The Fielding Bible

著者の欄にはJohn Dewanの名前しか書かれていないが、実際にはBill Jamesが大きく関与している。実は野球の守備に関する統計は、ここ130年ほど進化していなかった。すなわち、試合数、刺殺、補殺、失策、守備率といった野球の黎明期に考えられた指標が惰性で使われ続けてきた。本書は、それらに代わる新たな守備指標を整備しようという野心的な試み。主に以下の4つの指標が用いられる。Relative Range Factor以外は地道な画像分析を基に算出した数値なので個人で検証す...
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岡本かの子, 老妓抄

表題作の老妓抄の読後感の悪さが素晴らしい。それなりに好きなことができていて、それなりに生活にも不自由していないと感じている技術職・研究職の人間は一度読むべき。言いようのない罪悪感を感じてしまう。
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花里孝幸, 自然はそんなにヤワじゃない 誤解だらけの生態系

本職の生物学者が書いた環境本。そこらの環境保護団体が自分の好む一部の生物だけを保護せよと叫ぶのとは一線を画し、より大きな視点からの生態系観を与えてくれる。そもそも理想的な自然環境とは何なのか、生物多様性を高めるということはどういうことなのか、生態系は誰のためにあるのかなど、今まで何となく刷り込まれてきた自然への見方が大きく揺さぶられるテーマが盛りだくさん。おすすめ。
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サイモン・シン(著), エツァート・エルンスト(著), 青木薫(訳), 代替医療のトリック

数学、暗号、宇宙に続いて、サイモン・シンが新たに選んだテーマは代替医療。鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法といった代替医療を取り上げているが、それらを頭からオカルトと決めつけるのではなく、きちんとした臨床試験の結果をまとめた系統的レビューによって評価していこうという姿勢には好感が持てる。ただし、タイトルがネタバレになっているのだけは少し残念 (英語版の原題は "Trick or Treatment?" というもう少し中立なものなので、これは日本語版だけの問題)...
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富永直久, ワープロONE DAY 1日あれば10本指で打てる

古本で見つけて、懐かしくなって購入。中学生時代に (当時はお金もなかったので) 図書館で借りて授業中に練習をしていたら、本当に一日でタッチタイプができるようになったことを思い出す。教授法そのものに加えて、やる気にさせてくれるサイドストーリーが地味に良い。"熱中没頭の1日は、3万日を凌駕する" のフレーズは今も忘れられない。
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森川方達, 帝国ニッポン標語集 戦時国策スローガン・全記録

戦時中のスローガン4237句をまとめただけの本なのだが、下手な歴史書よりも、その時代のムードがよく伝わってくる。
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川島博之, 「食糧危機」をあおってはいけない

巷で良く騒がれる食糧危機説の実体を一つ一つ解きほぐしてくれる。「BRICsが世界の穀物を食らいつくす」、「買い負けで魚が手に入らなくなる」、「食料生産は限界に達している」などなど、よく語られる内容のほとんどが、過去にも定期的にブームとなっている (そして予測が大外れしている) 各種の食料危機説と同様に根拠のない煽りだということがよくわかる。また、食料危機説に反論するだけでなく、それらが生まれる背景についても触れているのが面白い。特に、なぜ日本でだけ食糧危機が叫ばれるのかについ...