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松尾貴史, ネタになる「統計データ」

松尾貴史の本なので、統計リテラシー系に斬り込む本かと思えばさにあらず。元が夕刊紙の連載で紙幅が限られていることもあり、統計調査1本に軽くツッコミを入れて小ネタを披露するのが精一杯。読み物としては上々。
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船山信次, 〈麻薬〉のすべて

あまりアングラでもなく堅過ぎる専門書でもない麻薬の解説本は貴重。基礎の部分からきちんと解説されているので、予備知識無しでも読み進められる。最近は一部で大麻容認の動きなどもあり、自身の考えも何となく容認に傾いていたが、事はそれほど単純ではないことがよく分かる。
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リチャード・セイラー(著), 篠原勝(訳), セイラー教授の行動経済学入門

特に後半の金融市場のアノマリーを行動経済学の視点から読み解いたコラム群が秀逸。そのまま鞘取りに利用できるような内容ではないが、投資家の感情が市場に与える影響について考える良いきっかけになる。
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小田亮, 利他学

人間はなぜ利他的な行動をとるのか。その理由を様々な角度から追った本。著者は自然人類学や比較行動学を専門にしているが、生物科学や心理学、経済学にも造詣が深く、それらの知識を総動員してこの境界領域にある難問に挑んでいる。自身の実験を含む様々な先端研究の成果もよくまとめられており、一冊目のリファレンス本としても優秀。
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橋本淳司, 明日の水は大丈夫? バケツ1杯で考える「水」の授業

水問題の本だが、低年齢層を意識している作りで分かりやすい。ヴァーチャル・ウォーターや食糧自給率など批判も多い概念も素朴に紹介しているあたりは、学者ではないジャーナリストの限界か。
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高橋紳吾, サイコパスという名の怖い人々 あなたの隣りにもいる仮面をかぶった異常人格者の素顔とは

本書で取り上げられている異常犯罪の事例は興味深いが、その考察は後付け的に見えてしまう部分が多い。これは本書に限らず、精神医学系の本の多くに言えることだが。
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石川憲二, 自然エネルギーの可能性と限界 風力・太陽光発電の実力と現実解

自然エネルギーのうち、風力、太陽光、水力、地熱の実態を探った本。著者は科学者ではなく科学ジャーナリスト。3.11の前年に出版された本のため、過剰な原子力バイアスはない。出力規模や安定性の観点から見ると風力や太陽光がそれほど効率的でないという結論は概ね同意できるが、コストに関する議論がほとんど行われていないのが片手落ち。また、これらの自然エネルギーの議論をする際には欠かせない蓄電池や送電を端折っているのも物足りない。とはいえ、語り口は平易でトンデモ度も低いので、一冊目に読む入門...
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ASIOS, 奥菜秀次, 水野俊平, 検証 陰謀論はどこまで真実か パーセントで判定

前作までの超常現象から少し切り口を変えて陰謀論という目の付け所は良いのだが、取り上げられているネタが否定しやすそうなものだけに偏っているのが残念。信憑性をパーセントで示すというせっかく試みも、信憑性が低すぎるネタばかり選んでいるせいで全く機能していない。
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遠藤秀紀, ニワトリ 愛を独り占めにした鳥

ニワトリの産業的な位置付けを枕に、セキショクヤケイに始まるそのルーツを追う。雑学的な意味で面白いのが、意外と知られていない現代のニワトリの産業的価値。経済的な競争力を得られる様に改良され尽くした採卵鶏は生後160日後から年間300個のペースで産卵し、肉用鶏に至っては生後わずか50日で3kg台半ばに達する。しかしながら、そのニワトリの原種のセキショクヤケイの性質は到底家禽に適したものではなく、どの様な動機で家禽化が進められたかが本書の興味となる。その推論過程は知的好奇心をそそる...
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あさりよしとお, まんがサイエンス 13

2000年代中盤以降の比較的最近の作品が中心。Xバンドレーザーによるゲリラ豪雨の観測、鳥インフルエンザなど、タイムリーな話題も豊富。学研の科学が休刊してしまったが、この連載はりすうかに引き継がれているので、そちらからの収録もあり。