book 橘玲, 「読まなくてもいい本」の読書案内 知の最前線を5日間で探検する 複雑系、進化論、ゲーム理論、脳科学、功利主義の進歩が "知のビッグバン" 起こした後の本を中心に読むべきという主張。特に進化論を高く評価しており、遺伝学、脳科学、進化心理学、行動ゲーム理論、行動経済学などが進化論を土台に融合しているとみなしている。専門の科学者ではないので論理の飛躍が多いが、言わんとしていることは理解できる。 2019-01-03 book
book マティアス・ビンズヴァンガー(著), 小山千早(訳), お金と幸福のおかしな関係 経済学者による幸福論。カーネマンらによる幸福研究はセックスなどの行動が幸福感を向上させることを明らかとしたが、ブランチフラワーやオズワルドの調査では収入とセックスの頻度には関係がないことがわかっている。人を幸福にする他の行動も、収入とともに増えるどころかむしろ減っている。ランク付けはさまざまな活動をステータス競争へ変え、内在的なモチベーションを殺し、その活動に関わる人々の幸福度を下げる。フィギュアスケート、学術研究などが代表例。トレッドミルは経済成長の源泉でもあるが、同時に幸... 2018-12-21 book
book クラウディア・ハモンド(著), 木尾糸己(訳), MIND OVER MONEY 193の心理研究でわかったお金に支配されない13の真実 行動経済学や心理学の研究成果をもとにお金と心の関係を探る。金銭的インセンティブの研究から、出来高制の報酬はある水準を超えるとうまく機能しなくなることがわかっている。人は報酬の対象とならない努力をしようとしなくなる。子供の教育に関する研究も面白い。単に良い成績にお金を出すのではなく具体的な課題の達成にお金を払うことが成績向上につながる。また、子供の成果を褒めるよりも、努力や取り組み方を褒める方が効果的。金銭感覚が似ている夫婦は幸福度が高い。離婚の先触れとなる最大の要因はお金に関... 2018-12-05 book
book マーク・ミーオドヴニク(著), 松井信彦(訳), 人類を変えた素晴らしき10の材料 その内なる宇宙を探険する 材料科学者による科学エッセイ。すぐ身の回りにある様々な材料をテーマに、その性質から歴史まで豊富なエピソードを披露してくれる。取り上げられる材料は幅広く、鋼鉄、紙、コンクリート、プラスチック、ガラスといった一見して文明を支えているのが分かるものから、チョコレート、泡、グラファイトなどちょっと毛色の変わったものまで登場して飽きさせない。 2018-10-19 book
book ティム・ハーフォード(著), 遠藤真美(訳), 人は意外に合理的 新しい経済学で日常生活を読み解く 世の中の一見不合理な行動を行動経済学で解釈する試み。ジャーナリストの著作だが、研究による裏付けもしっかりしている。特に興味深いのは、企業の給与体系とそれに伴うインセンティブの分析。広く普及しているトーナメント型のインセンティブが士気を高める一方で裏切りを生み出すことも、行動経済学の視点で見ると合理的であることがわかる。 2018-09-25 book
book KAPPA, 超・株式投資 東大卒医師が教える科学的「株」投資術の続編。まずは長期投資でリスクが減るという説の検証。リスク (ボラティリティ) の絶対額は投資期間長期になればなるほど広がるという考えてみれば当たり前の話。 期待リターンが同じであっても 標準偏差が大きいほど損する投資家が増えることが示され、投資対象の標準偏差が非常に重要であることがよく分かる。やはり長期投資の優位性はリスク低減よりも売買コストの削減や課税繰延効果などにあると考えるべきだと思う。いくつかのアノマリーについても検証されており、... 2018-09-03 book
book ジェームズ・R・フリン(著), 水田賢政(訳), なぜ人類のIQは上がり続けているのか? 人種、性別、老化と知能指数 人類の知能指数が過去100年にわたり上昇し続けているというフリン効果の原因について、フリン教授自らが解明に取り組んでいる。栄養状態の改善、衛生状態の改善、族外婚、現代社会の新しい思考習慣といった様々な可能性をひとつひとつ豊富なデータで検証していく。読み物としては少々退屈だが、知能とは何かを深く考える上で参考になる一冊。 2018-08-28 book
comic 小林銅蟲, 寿司 虚空編 一言でいうと奇書・珍書の類なのだが、これがベラボウに面白い。ふぃっしゅ数に代表される巨大数というマニアックなテーマを素人置いてけぼりなハイペースで駆け抜ける。なぜこれをマンガにしようと思ったのか、なぜ寿司なのか、疑問は尽きないが、数学が大好物ならば絶対に読んで損なし。 2018-07-28 comic
book トラヴィス・ソーチック(著), 桑田健(訳), ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法 オークランド・アスレチックスのマネー・ボールの後に台頭してきたピッツバーグ・パイレーツのセイバーメトリクスを紹介するドキュメンタリ。今ではメジャーリーグの新たな常識となりつつあるPITCHf/xによる捕手のピッチフレーミングの分析、ビッグデータを活かした極端な守備シフト、先発4人制のローテーション、スタットキャストによる守備の数値化、投手の怪我を減らすよりスマートな球数制限などが生み出されるまでが明らかになる。 2018-07-16 book
book 谷岡一郎, 科学研究とデータのからくり 最近はニュースで取り上げられることも多い科学研究の不正がテーマ。著者は本職が社会科学者のため、自然科学のトピックはどうしても端切れが悪くなってしまう。いくら話題になったとはいえ、無理にSTAP細胞の話題を取り上げずとも、本業の社会科学の不正に絞った方が良かったように思う。とはいえ、不正が起きる構造の本質的な部分は学術分野によりさほど差があるわけではない。著者の主張する "研究者による過失・不正のレベル" は、これまた異分野である工学の研究者である私にも十分に納得できるものであ... 2018-04-29 book