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ティム・ハーフォード(著), 遠藤真美(訳), 人は意外に合理的 新しい経済学で日常生活を読み解く

世の中の一見不合理な行動を行動経済学で解釈する試み。ジャーナリストの著作だが、研究による裏付けもしっかりしている。 特に興味深いのは、企業の給与体系とそれに伴うインセンティブの分析。広く普及しているトーナメント型のインセンティブが士気を高める一方で裏切りを生み出すことも、行動経済学の視点で見ると合理的であることがわかる。
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KAPPA, 超・株式投資

東大卒医師が教える科学的「株」投資術の続編。 まずは長期投資でリスクが減るという説の検証。リスク (ボラティリティ) の絶対額は投資期間長期になればなるほど広がるという考えてみれば当たり前の話。 期待リターンが同じであっても 標準偏差が大きいほど損する投資家が増えることが示され、投資対象の標準偏差が非常に重要であることがよく分かる。やはり長期投資の優位性はリスク低減よりも売買コストの削減や課税繰延効果などにあると考えるべきだと思う。 いくつかのアノマリーについても検証されてお...
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ジェームズ・R・フリン(著), 水田賢政(訳), なぜ人類のIQは上がり続けているのか? 人種、性別、老化と知能指数

人類の知能指数が過去100年にわたり上昇し続けているというフリン効果の原因について、フリン教授自らが解明に取り組んでいる。 栄養状態の改善、衛生状態の改善、族外婚、現代社会の新しい思考習慣といった様々な可能性をひとつひとつ豊富なデータで検証していく。読み物としては少々退屈だが、知能とは何かを深く考える上で参考になる一冊。
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小林銅蟲, 寿司 虚空編

一言でいうと奇書・珍書の類なのだが、これがベラボウに面白い。 ふぃっしゅ数に代表される巨大数というマニアックなテーマを素人置いてけぼりなハイペースで駆け抜ける。なぜこれをマンガにしようと思ったのか、なぜ寿司なのか、疑問は尽きないが、数学が大好物ならば絶対に読んで損なし。
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トラヴィス・ソーチック(著), 桑田健(訳), ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法

オークランド・アスレチックスのマネー・ボールの後に台頭してきたピッツバーグ・パイレーツのセイバーメトリクスを紹介するドキュメンタリ。 今ではメジャーリーグの新たな常識となりつつあるPITCHf/xによる捕手のピッチフレーミングの分析、ビッグデータを活かした極端な守備シフト、先発4人制のローテーション、スタットキャストによる守備の数値化、投手の怪我を減らすよりスマートな球数制限などが生み出されるまでが明らかになる。
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谷岡一郎, 科学研究とデータのからくり

最近はニュースで取り上げられることも多い科学研究の不正がテーマ。 著者は本職が社会科学者のため、自然科学のトピックはどうしても端切れが悪くなってしまう。いくら話題になったとはいえ、無理にSTAP細胞の話題を取り上げずとも、本業の社会科学の不正に絞った方が良かったように思う。 とはいえ、不正が起きる構造の本質的な部分は学術分野によりさほど差があるわけではない。著者の主張する "研究者による過失・不正のレベル" は、これまた異分野である工学の研究者である私にも十分に納得できるもの...
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ASIOS, 「新」怪奇現象41の真相

いつもの超常現象解明シリーズ。フォーマットも従来通りで、一般に信じられている伝説を述べた後で真相を検証するスタイル。 シリーズを通じて質は高いと思うが、今回はネット上で少々盛り上がった程度の小ネタも多くいかんせん小粒な印象。
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苅谷剛彦, 知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ

表題ともなっている複眼思考とは、常識やステレオタイプにとらわれず、自分の頭で考える思考法を指している。思考法というとコンサルタントの掲げる思考法のフレームワークの類を思い浮かべる人も多いだろうが、本書はより根源的な問題の立て方やその展開法を扱っている点で一線を画している。 若い学生を想定読者としているためか、批判的な読書法に始まり、論理の積み重ね方、問題の立て方、ものごとの多面性を捉えるための方法をひとつひとつ手ほどきしていく構成となっており、順を追って読み進めるだけで知的複...
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ジュディス・リッチ・ハリス(著), 石田理恵(訳), 子育ての大誤解〔新版〕 重要なのは親じゃない (上) (下)

入手に苦労していたあの名著がついに文庫化。内容は言わずもがな。とりあえず、保存用として確保した。
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大川慎太郎, 不屈の棋士

ブームのコンピュータ将棋本だが、コンピュータ将棋そのものではなく棋士へのインタビューを主題に据えた企画が秀逸。もちろん、コンピュータ将棋の事前知識なしでも楽しめる。 羽生、渡辺、森内、佐藤らのトップ棋士がコンピュータ将棋をどう捉えているのか、先駆者たちはコンピュータ将棋をどう活用しているのか、コンピュータ将棋がトップ棋士を越えようとしている現在だからこそ様々な思いが交錯している様子が浮かび上がってくる。おすすめ。