sociology

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村田沙耶香, コンビニ人間

芥川賞受賞作ながら、純粋に読んで面白い作品。画一的で清潔で無機質なコンビニという存在と重ね合わされた主人公の存在が読み手の心を強く揺さぶる。
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レガシィマネジメントグループ, 100億円相続事典 1億円との徹底比較で見えてくる違い

目の付け所は良い本だが、繰り返しのネタが多く水増し感がある。100億円規模の富裕層は大きく相続組と起業組に分かれるが、両者が混ざって記述されているので混乱を招いている。同様に1億円の富裕層も資産運用に成功した人々とそれらには手を出さずに出世とマイホーム購入で無意識に富裕層になった人々が十把一絡げになっている。
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大内伸哉, どこまでやったらクビになるか サラリーマンのための労働法入門

タイトルからはサラリーマンがどこまで攻められるかという指南本を想像してしまうが、中身はかなりまっとうな労働法の事例集。賃金、労働時間、転職など、労働者が直面する問題は一通りカバーされている。
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柳治男, <学級> の歴史学

現代の日本の公教育で当たり前となっている "学級" だが、中世までの学校には存在しないものであった。当時は教室 (class room) すら存在せず、ひとつの教場 (school room) にまちまちの年齢の生徒が集まって教育を受けるのが一般的であった。本書は学級制に基づく学校、すなわち義務教育制度が成立する過程を丁寧になぞり、その上で現代日本の学校がはらんでいる問題を明らかにするものである。学級が存在するにはその前提として学習内容を時間割として定めておく必要がある。これ...
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甚野博則, ルポ 超高級老人ホーム

週刊誌をそのまま書籍にしたような内容。表題も小見出しも扇情的なものばかり。入居予定者を装った施設見学と身分を明かしての業務体験が一度づつある他はインタビュー取材のみで、超高級老人ホームの実態に迫ったかと問われると心もとない。
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大鐘良一, 小原健右,ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験

主にJAXAの宇宙飛行士選抜試験に密着したドキュメンタリ。元々JAXAは宇宙飛行士選抜試験の取材に積極的ではなかったが、NHKスペシャルで初めてその扉が開かれた。本書はその副産物に当たる。世間一般の宇宙飛行士のイメージというと、よくわからないけれど何か優秀な人といったところだろうが、その実態は大きく異なる。もちろん優秀であることに疑いはないのだが、それ以上に情熱や協調性、仲間を思いやる心が何よりも重視される。これは考えてみれば当たり前の話で、宇宙という閉塞環境で様々な国のメン...
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ジャレド・ダイアモンド(編著), ジェイムズ・A・ロビンソン(編著), 小坂恵理(訳), 歴史は実験できるのか 自然実験が解き明かす人類史

歴史関連の学問で用いられている比較研究法のケーススタディ集。古代ポリネシアの社会政治や経済から19世紀の銀行制度まで、古今東西の様々な比較研究の事例を取り上げている。この種の学問では厳密な統制を伴う操作的実験は不可能だが、一部の顕著に異なる要因以外は似通っているシステムを比較する自然実験ならば実現できる可能性がある。もちろん、意図しない変数による撹乱、欠落変数バイアスなど注意するべき事項は様々あるが、従来のナラティブな歴史研究に得ない深みを与えてくれることは間違いない。
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三宅香帆, なぜ働いていると本が読めなくなるのか

労働と読書の歴史から、表題の「働いていると本が読めなくなる」問題に切り込む。定性的な話ばかりで定量的なデータは一切出てこないが、現代ではノイズ (ここでは自分が欲していた情報以外のもの、すなわち予想していなかった展開や知識などを指す) を含む読書よりもノイズが除去されたインターネット上の情報が好まれるという仮説は興味深い。
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西村晋(著), 井上純一(イラスト), 中国共産党 世界最強の組織 1億党員の入党・教育から活動まで

中国共産党と聞くと党大会のニュースで見る党中央ばかりが思い浮かぶが、それは中国共産党の頂点の部分に過ぎない。日本の報道によくある中国共産党の組織図も最上層部のみに過ぎず、実際には1億人に迫る一般党員が何層もの階層を形成して中国共産党を支えている。これだけの巨大組織をトップダウンだけで動かすのは不可能であり、ビジョンを共有して人の和 ("人和" は孫氏にも出てくる言葉であり中国の組織にも馴染みが深い) を成す必要がある。この部分を担う仕組みが中国共産党には内蔵されており、党中央...
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ダイアナ, 夜のことばたち

Twitterの有名アカウント、ダイアナの投稿漫画を単行本化したもの。水商売系の闇を描いた作品で、これもTwitter文学と言えるかもしれない。