sociology

book

パオロ・マッツァリーノ, 13歳からの反社会学

タイトルはあまり内容と関係なくなっている。13歳向けではないし、もはや社会学と関係ないネタも多い。それでも読み物としては文句なし。着眼点は面白いし、いつものパオロ節も健在。
book

橋本淳司, 明日の水は大丈夫? バケツ1杯で考える「水」の授業

水問題の本だが、低年齢層を意識している作りで分かりやすい。ヴァーチャル・ウォーターや食糧自給率など批判も多い概念も素朴に紹介しているあたりは、学者ではないジャーナリストの限界か。
book

横田増生, 潜入ルポ アマゾン・ドット・コム

著者はもともと流通業界紙の出身だけあり、その視点からのアマゾンの分析は面白い。また、潜入ルポとしてアマゾンの流通センターの内情を僅かとは言え明らかにしたのは見事。一方で、アマゾンという企業の分析は全く物足りない。アルバイトで潜入した立場から得られる情報は限られており、それをどうこね回しても根拠の薄い憶測にしかならない。その最たるものがアマゾンとブックオフの関係で、たまたまアルバイト中に目にしたベンダーコード一覧にブックオフの名前があったことだけを根拠に中古本を新品として売って...
book

西原理恵子, 西原理恵子×月乃光司のおサケについてのまじめな話 アルコール依存症という病気

元夫の鴨志田穣がアルコール依存症に陥った経験を持つ西原理恵子によるアルコール依存症という病気の紹介。今回はお笑いは一切無し。言ってしまえば "アルコール依存症は病気であるので専門家による正しい対処が必要" というメッセージが繰り返されるだけだが、それだけアルコール依存症が病気として認識されていないということの裏返しだろう。
book

宮本弘之, お金持ちのお金はなぜなくならないの?

野村総研での金融コンサルの仕事を通じて出会ったお金持ちたちの生態を描いた一冊。残念ながらお金持ちになる方法はスコープ外だが、彼らの金融資産ポートフォリオや財産への考え方は実に興味深い。
book

高橋紳吾, サイコパスという名の怖い人々 あなたの隣りにもいる仮面をかぶった異常人格者の素顔とは

本書で取り上げられている異常犯罪の事例は興味深いが、その考察は後付け的に見えてしまう部分が多い。これは本書に限らず、精神医学系の本の多くに言えることだが。
book

岡崎昂裕, 自己破産の現場

著者は長年信販会社で債権管理・回収に携わっていた方。クレジットの法的な問題や社会的な位置付けについては専門外と言うこともあり踏み込みが浅いが、債権管理の立場から見た実エピソードの数々は実に興味深い。
book

尾崎浩一, 危ない! 共同出版 夢を食い物にする錯覚商法

集団訴訟で話題になった新風舎の共同出版商法の糾弾本。被害者側に大きく肩入れしているため、全編を通して新風舎憎しの論調であり、客観性はない。無知なままに共同出版契約を結ぼうとしている著者に注意喚起するという目的は達成されているが、ルポタージュとしての質は低い。新風舎側の人間へのインタビューは、新風舎に嫌気がさして退職した元社員のみ。一番の見所は、その退職者から入手したとされる営業マニュアル。この種の詐欺に遭う人々がどういったキーワードに反応するかは興味深い。
book

堤未果, ルポ 貧困大国アメリカ

アメリカが抱える問題は数多くあるが、それらをすべて貧困という切り口で扱ったルポタージュ。映画 "SiCKO" で有名となった医療費の問題、国民病とも言える肥満問題、災害による経済難民問題、貧困の連鎖の犠牲者となる若者たち、戦争の民営化の犠牲者となるワーキングプア、すべてが貧困と密接な関係がある。米国に拠点を置く著者らしく、豊富なインタビューも魅力。
book

中村敏雄, メンバーチェンジの思想 ルールはなぜ変わるか

中村敏雄の著作には、いつも自分のスポーツに対する無知を気付かされる。いくら現行のルールに基づいた戦術の良し悪しや個々の選手の技能を論じたところで、そのスポーツの成立した背景やその背後にある文化を知らなければただ虚しいだけとなる。本書はそのスポーツの歴史や思想に真っ向から切り込んだ論考をまとめたもの。現代の表面だけのスポーツジャーナリズムに満足できない方にはぜひ手に取っていただきたい。