sociology

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晴山陽一, 英語ベストセラー本の研究

戦後60年間分の英語ベストセラー本を時系列順に追ったもの。この英語学習本という視点が実に素晴らしく、単に英語学習法の流行り廃りが見えてくるだけではなく、日本人にとって英語とは何であるかという位置付けの移り変わりまでもが見えてくる。
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柴野京子, 書棚と平台 出版流通というメディア

現在の日本の出版流通がどのように成長してきたのかが学術的に検証されている。雑誌や教科書に始まるメインストリームはもちろん、赤本の歴史や書店の "読書空間" の変遷まで、出版流通史の大きな流れが俯瞰できるようになっている。本好きの人間ならば一度は必ず目を通すべき本。おすすめ。
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内藤朝雄, いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか

いじめを一つの社会的メカニズムから生じる普遍的な現象として捉えた分析。いわゆる "近頃の青少年" 型の精神論とは一線を画している。いじめという現象の分析を踏まえた上での、新たな教育制度案も興味深い。学校の法化や学級制度の禁止といった案は、抵抗勢力は多そうなものの、単純な実施コストという点では実現可能な範疇でありかつ効果的に思える。
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冷泉彰彦, 民主党のアメリカ 共和党のアメリカ

米国の二大政党の仕組みとそれぞれの対立軸は良く取り上げられるが、その原則では説明できないねじれの部分も多い。例えば共和党は小さな政府を指向しているにもかかわらず、なぜ小ブッシュ政権はあれだけの財政赤字を積み重ねてしまったのか、など。そういったねじれにいたった経緯や、歴史的な対立軸の推移などがきちんと押さえられているのは外国人にはありがたい。
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松原岩五郎, 最暗黒の東京

1893年に出版された "最暗黒之東京" を底本に、新仮名遣いに改め再編集されたもの。著者の松原は文学者でもあったため少々文章が走りすぎるところもあり、単なるレポートと言うよりは記録文学といった趣。場末の木賃宿、貧街、残飯屋、人力車夫など、明治時代の日本の底辺の記録が生々しく、とても高々100年前のこととは思えない。この時代の数少ない下層社会の生の記録であるので、ぜひとも読んで欲しい。
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奥野修司, 沖縄幻想

癒しの島、長寿社会といったイメージを持たれることの多い沖縄。そのイメージの裏にある実体は、3K産業 (観光、公共事業、基地) だよりの経済だった。そういった実体を受け止めた上で、沖縄をどう開発して行くべきかの論は、沖縄に対する愛が感じられて実に興味深い。なお、本書には同じ著者によるに関する記述が所々に出てくるので、併せて読んでみた方が良いかもしれない。
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上杉隆, 世襲議員のからくり

なぜ世襲議員が生まれるのかという理由として、政治資金管理団体の非課税相続、後援会組織の世襲、看板の世襲の3点が解説されており非常にわかりやすい。中でも、政治資金管理団体の非課税相続については知らない人も多いと思うので一読をおすすめする。ただし、肝心の世襲議員がなぜダメなのかについての考察が不十分。一部の世襲議員の問題行動を取り上げて叩いているだけで、非世襲の議員と比較しての客観的な評価がされていない。本書の内容とは関係ないが、ブックオフオンラインでこの本を購入したら、上杉氏か...
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軍司貞則, 高校野球「裏」ビジネス

野球特待生達の実体を追ったルポルタージュ。関東にいるとあまりなじみがないボーイズと高校野球とのつながりは想像以上に根が深そう。また、高校野球の現場の人間達のインタビューが実に面白い。少々きれい事に過ぎるのではないかと思われる部分まであるが、教育の側面もある高校野球にはこういった人物が必要なのだろうと思わせる。
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と学会, トンデモ本 女の世界 (上, 下)

女性向けのトンデモ本の紹介。トンデモの世界は男女関係ないのだと気付かせてくれる。と学会のツッコミ芸も熟練の域に達しており、通勤中に気軽に楽しむには最適。
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山本直樹, レッド (1)

連合赤軍を中心とした革命運動を描くマンガ。テーマは非常に面白く、当時の時代を感じさせる描写も良いのだけれど、膨大な登場人物の行動が淡々と描写されるという本書の構成はある程度の予備知識がないと理解しにくい。