sociology

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元永知宏, 殴られて野球はうまくなる!?

野球界、特に高校野球を中心に蔓延している暴力に踏み込んだドキュメンタリ。その暴力の功罪を様々な側面から描いている良書。まずは強豪野球部で日常的に暴力が振るわれている実態を著者自身の体験と経験者へのインタビューから暴き出す。特に能力のある新入生が真っ先に狙われる実態など、暴力を振るう側にそうさせるインセンティブがある構造も見えてくる。一方で少ないながらも肯定的な意見も取り上げられている。私は肯首できないが、愛のある暴力は暴力ではないと本気で信じている人々がいるのも伺える。彼らが...
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谷岡一郎, 科学研究とデータのからくり

最近はニュースで取り上げられることも多い科学研究の不正がテーマ。著者は本職が社会科学者のため、自然科学のトピックはどうしても端切れが悪くなってしまう。いくら話題になったとはいえ、無理にSTAP細胞の話題を取り上げずとも、本業の社会科学の不正に絞った方が良かったように思う。とはいえ、不正が起きる構造の本質的な部分は学術分野によりさほど差があるわけではない。著者の主張する "研究者による過失・不正のレベル" は、これまた異分野である工学の研究者である私にも十分に納得できるものであ...
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ASIOS, 「新」怪奇現象41の真相

いつもの超常現象解明シリーズ。フォーマットも従来通りで、一般に信じられている伝説を述べた後で真相を検証するスタイル。シリーズを通じて質は高いと思うが、今回はネット上で少々盛り上がった程度の小ネタも多くいかんせん小粒な印象。
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ケネス・S・ロゴフ(著), 村井章子(訳), 現金の呪い 紙幣をいつ廃止するか?

高額紙幣を廃止しレスキャッシュ (キャッシュレスではないことは再三言及されている) を実現することで、現金の犯罪利用を減らし、同時にマイナス金利などの金融政策が可能となるという主張。平易な文章ながら専門的な議論もしっかりと押さえられており、データの裏付けも豊富。様々な公的調査を組み合わせる搦め手で現金がどのように利用されているかその実態をあぶり出しており、発行枚数と各家庭の実際の現金所有との大きなギャップから非合法な目的の現金利用を推定している。高額紙幣の廃止によるレスキャッ...
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ジュディス・リッチ・ハリス(著), 石田理恵(訳), 子育ての大誤解〔新版〕 重要なのは親じゃない (上) (下)

入手に苦労していたあの名著がついに文庫化。内容は言わずもがな。とりあえず、保存用として確保した。
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カレン・フェラン(著), 神崎朗子(訳), 申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

経営コンサルタントによる懺悔本。コンサルタントにある種の胡散臭さを感じている人はもちろんのこと、これからコンサルタントと関わるであろう人にはぜひ読んで欲しい。コンサルタントの提案の定番である目標管理による成果測定システムやインセンティブ報酬が上手く機能しない理由が、多くの実例とともに解説されている。その根本的な理由は、組織は機械ではなく人間でできているということだ。巻末の付録1にある、正しい方法を見分ける「真偽判断表」が素晴らしい。コンサルタントの資料やビジネス書に良くある理...
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首都圏鉄道路線研究会, 沿線格差 首都圏鉄道路線の知られざる通信簿

首都圏の主要路線の格付け本。内容は薄めなので、あるあるネタを楽しむくらいでどうぞ。
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サンキュータツオ, ヘンな論文

いわゆる珍論文を眺めて楽しもうという本。取り上げられている論文は13本。性質上、科学系よりも社会学系のものが多いか。各論文のアカデミックな背景などをもう少し掘り下げるような敬意があっても良かったのではないかと思う。
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友里征耶, グルメの嘘

グルメライター業界の暴露本と言えば良いだろうか。業界への恨みつらみがつのっているためかやや独善的に感じるが、業界の裏事情を知れるという点は悪くない。
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フランク・ディケーター(著), 中川治子(訳), 毛沢東の大飢饉 史上最も悲惨で破壊的な人災 1958-1962

機密解除された公文書を丹念に精査し、大躍進政策の実態を明らかにした労作。大躍進政策の期間の拷問・処刑死、餓死者の総計が4500万人以上にのぼるという推計には目を疑ったが、その丹念な調査過程を読み解いていくと、実に真っ当な推計だと納得させられる。中間人民共和国史を学ぶ上で、間違いなく必読と言える一冊だろう。訳はあまりこなれておらず、学術的な記述が多いことと相まって、今ひとつ読みにくいのが唯一残念なところ。