谷本道哉(著), 石井直方(監修), 使える筋肉・使えない筋肉 (からだ読本シリーズ)

ウェイトトレーニングの誤解を解くための正しい知識が満載。ウェイトトレーニングで作った筋肉は実際の競技で役に立たないかのような印象を持たれていることも多いが、それが誤解であることが良くわかる。

強くて太い筋肉がパワーの面でもスピードの面でも優れていることは間違いないのだが、それが現実に “使えない筋肉” となってしまうのにはいくつか理由がある。その最も大きなものが、ウェイトトレーニングとして効率的な動きと、実際の競技で必要とされる動きが異なるということ。ウェイトトレーニングは反動を使わず筋肉に “効かせ” るのが効率的だが、実際の競技ではまったく逆で SSC (Stretch Shortening Cycle) を最大限に活用する動きこそが有利となることが多い。ウェイトトレーニング巧者が競技の際も “効かせ” てしまう傾向にあるのは仕方がないところ。それを補うためのスキルトレーニングを併用するというのは実に理にかなっている。他にもウェイトトレーニングのマイナス面として語られることの多い “関節の可動範囲が狭くなる” や “無駄な重量が増える” といった迷信を一つ一つ丁寧に潰していき、ウェイトトレーニングの重要性を正しく理解させてくれる。

後半では筋肥大のメカニズムが詳述されるが、一般に広く知られている筋損傷からの超回復モデルに加え、筋肉に張力を与える、筋肉に無酸素性代謝物を蓄積させる、筋肉内を低酸素状態にする、といった刺激が筋肥大のシグナルとなることが示されている。特に無酸素性代謝物の蓄積や低酸素状態といった化学的ストレスによる刺激は明確に意識してトレーニングメニューを組む必要があるためなかなか気づきにくい所。

全体を通じて科学的な裏付けもしっかりしている良書。今まであまりウェイトトレーニングに力を入れて来なかったスポーツ選手にぜひ読んでほしい。

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