バン・K・タープ(著), D・R・バートン・ジュニア(著), スティーブ・ジュガード(著), 柳谷雅之(訳), 井田京子(訳), 魔術師たちの投資術 経済的自立を勝ち取るための安全な戦略
まだFIREという言葉が流行る前の本ながら、経済的自立を達成するまでの道のりを扱っている。節約による種銭の確保からパッシブ収入の確保まで一通りを解説しているのは良い。しかしながら、資産運用の利回りはかなり楽観的で、ミューチュアルファンドや不動産投資を本書の通り行うことで超過利益が得られるという主張を鵜呑みにするのは危険だろう。また、米国の事情に依存した部分が多く日本人が取り込むには色々と工夫が必要となる。何かにつけて著者らのIITMのサイトなどへ誘導しようとするのにも閉口する。
ロバート・P・クリース (著), 青木薫(訳), 世界でもっとも美しい10の科学実験
10の実験の選定には異論がない。科学実験と謳いながらも物理実験に偏っているが、ここに割り込めるような化学や生物の実験があるかというと思い当たらない。
“美しい” に重きをおいているせいもあり、科学実験自体の詳細な説明は最小限となっている。実験にまつわる科学者の描写も多め。このあたりのバランスは賛否が分かれるかもしれない。
ナシーム・ニコラス・タレブ(著), 望月衛(訳), ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質 (上)(下)
決して読みやすい本ではないし、読んですぐに儲かるようになるわけでもないが、投資の本質というものを考える上で必ず読むべき本。
経済の事象の多くは正規分布のベルカーブに従うものではなくむしろ対数正規分布と捉えた方が実態に近いのだが、モデルの作りやすさや扱いやすさを重視して正規分布と仮定していることが多い。本書はそれぞれを月並みの国、果ての国とユーモアを持って名付け、その差異の解説に多くのページを割いている。
正規分布は外れ値である黒い白鳥 (ブラック・スワン) がいる世界を正しく予測できないが、不確実性を飼いならした気分にしてしまう。著者はこれを壮大な知的サギ (Great Intellectual Fraud) と容赦なく呼ぶ。著者がこうした不確実性について深く考え、リスクの本質に向き合わない学者やエコノミストに厳しい態度をとるようになったのは、レバノン内戦という “ブラック・スワン” を生き抜いた経歴が関係しているのだろう。
高牧康, 「裏声」のエロス
声楽の専門家による “裏声” の解説書。裏声の正体だけではなく、裏声を鍛えることのさまざまな効用が (根拠が怪しいものもあるが) 述べられる。声楽の素養のない人が本書だけで裏声を正しく扱えるようになるのは難しいとは思うが、きっかけには良い本。