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ジョン・ブレンカス(著), 矢羽野薫(訳), 世界記録はどこまで伸びるのか

スポーツファンならば誰でも気になる世界記録の上限 (perfection point) を探る試み。対象となる種目は、帯にもなっている100メートル競走やマラソンから水泳、空中静止時間、ホームランの最長飛距離まで多岐にわたる。この視野の広さは、著者のESPNのエグゼクティブプロデューサーとしての経験からか。予測方法は種目ごとに様々だが、世界記録の変遷に外挿して漸近線を求めるようなよくあるアプローチではなく、ボトムアップで積み上げていく思考が中心。例えば100メートル競走を例に...
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吉田戦車, 逃避めし

吉田戦車が〆切から逃避するために作る創作料理の数々。ほぼ日刊イトイ新聞の連載をまとめたもの。使えるレシピ本ではないが、エッセイ集としては上々。単行本のために描き下ろされたイラストやマンガも良い味が出ている。
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アドルフ・F・V・クニッゲ(著), 服部千佳子(訳), 人間交際術

本書の理想とする交際術は、建前は人格者に見えるように振る舞いながらもどこか損得を考えつつ困った相手を冷笑的に見下す様な種類のもので、その腹黒さが実に人間臭い。その特徴が端的に表れているのが第4章の "どんな人ともうまくつきあえるコツ" 。相手のタイプ (尊大な人、執念深い人、など) 別にどのようなふるまいをするべきか、あまりに率直過ぎる対処方法が清々しい。その一方で、対処的な交際術ではない、自分の内面を振り返るための項目は素直に身につまされるものが多い。この部分は自分を律する...
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マイケル・サンデル(著), 鬼澤忍(訳), それをお金で買いますか 市場主義の限界

最近日本で売れているサンデル教授による市場主義の批判本。市場主義がなじまない事例や、市場主義により引き起こされた問題点のカタログ的な構成。市場主義の問題点として、単純な好き嫌いの道徳面だけではなく、不平等や社会規範の破壊といった視点で捉えているのが興味深い。前者は、ここ数十年の貧困家庭や中流家庭の生活が悪化している原因を、富の配分だけではなくあらゆるものが商品となってしまったがためにお金の重要性が増したことにあると説く。後者は、市民の公共心の問題を金銭の問題に変質させてしまう...
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板橋悟, ビジネスモデルを見える化する ピクト図解

以前読んだダイジェスト版がなかなかの出来だったので親本の方も。ピクト図を書く方法についてはダイジェスト版のままで、新しい情報は無い。差分は多数の事例とダイアグラム発想法やアナロジー発想法と組み合わせた応用例、発想の収束方法など。
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坂戸佐兵衛(原作), 旅井とり(作画), めしばな刑事タチバナ (1) (2) (3) (4)

話題の作品を4巻までまとめ読み。ストーリーはあってないようなもので、延々と食のウンチクを語るだけのマンガ。食といっても本格グルメではなく、ジャンクフードやインスタント食品、チェーン展開している飲食店などのB~C級グルメがターゲット。いずれも、「わかってる」と思える内容で、読みながら頷いてばかり。
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飯田泰之, 雨宮処凛, 脱貧困の経済学 日本はまだ変えられる

経済学という表題がついているが、実際は経済談義とでも言うべき対談本。対談本という形式の限界もあるのだろうが、テーマに掲げている貧困の定義自体がやや揺らいでいる。あるときは低所得の人々全般を指しているかの様でもあり、またあるときは労働者の中では少数派の非正規雇用労働者だけを対象としているようにも読める。また、因果関係も不明な箇所が多い。例えば、貧困の原因が小泉政権による構造改革であることが当然の様な口調だが、構造改革はるか前の1980年代から非正規雇用者比率やジニ係数が増加し続...
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荒川弘, 銀の匙 Silver Spoon (3)

登場人物も増えてストーリーが厚みを増してきた。少し重めの家畜の屠殺やお金のテーマとお笑いのバランスも見事。
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岩崎日出俊, マネー大激震 逆境下の資産運用術

第2章までの資産運用の基礎的な部分は比較的真っ当な内容。内容とはあまり関係がない大震災をテーマに掲げているのが気になるが、これは販売戦略上仕方ないだろう。いくつかの個別銘柄や新興国への投資を薦めているがこれは疑問。根拠が簡単な定性的な分析しか示されていないのに加えて、それらの情報がまだ株価に織り込まれていないことを暗黙の前提としている。
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永野学, 図解 いちばん面白い日本国債入門

日本国債の本当の基礎の部分から、発行母体である日本国の懐事情まで。原理原則の話が多く投資にそのまま活用できる情報は少ないが、読みやすく真っ当な内容なので基礎固めにはお勧めできる。