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遠藤秀紀, ニワトリ 愛を独り占めにした鳥

ニワトリの産業的な位置付けを枕に、セキショクヤケイに始まるそのルーツを追う。 雑学的な意味で面白いのが、意外と知られていない現代のニワトリの産業的価値。経済的な競争力を得られる様に改良され尽くした採卵鶏は生後160日後から年間300個のペースで産卵し、肉用鶏に至っては生後わずか50日で3kg台半ばに達する。 しかしながら、そのニワトリの原種のセキショクヤケイの性質は到底家禽に適したものではなく、どの様な動機で家禽化が進められたかが本書の興味となる。その推論過程は知的好奇心をそ...
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あさりよしとお, まんがサイエンス 13

2000年代中盤以降の比較的最近の作品が中心。Xバンドレーザーによるゲリラ豪雨の観測、鳥インフルエンザなど、タイムリーな話題も豊富。 学研の科学が休刊してしまったが、この連載はりすうかに引き継がれているので、そちらからの収録もあり。
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中村計, 甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実

松井秀喜の5打席連続敬遠を扱ったドキュメンタリー。 松井本人を含む多くの関係者へのインタビューを敢行した労作。あまり白黒を付けようというものではなく、インタビューが中心。当事者だけではなく、もう一歩進んで高野連あたりまで踏み込んで欲しかった。
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新開省二, 50歳を過ぎたら「粗食」はやめなさい! 「低栄養」が老化を早める

著者は疫学の専門家。その観点からは、粗食中心の高齢者よりも栄養十分な食事を取り活動的な生活をしている高齢者の方がむしろ健康長寿を保っている。 この結論は当たり前と言えば当たり前なのだが、粗食の健康イメージを刷り込まれているとその当たり前を見失いがち。
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宮永國子, とつぜん会社が英語になったら… 「まっとうな英語」のすすめ

This, That, Itの使い分けは日本人には理解しがたいものだが、本書の解説は腑に落ちる。ThisとThatは "これ" と "あれ" ではない。 また、形容詞と分詞の違いはThisやThatの違い以上に無自覚だった部分だが、感情表現と厳密表現の違いであると指摘されてみると、なるほどと頷ける。
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中村敏雄, スポーツの見方を変える

スポーツの高度化ばかりに注力し大衆化が軽視されてきた日本の姿を皮切りに、近代スポーツの本質や体育との違いを論じる。 スポーツ文化を語る人は多々あり、Jリーグ立ち上げ後はスポーツと地域社会の関わりに踏み込んだ本も多いが、本書はそれらとはまた違った高度化と大衆化という対立軸を提供する。 最終章の、競泳を例に挙げたスポーツや体育のあり方は、近代スポーツの限界をはっきりと自覚させてくれる好例。様々な報道で取り上げられる競泳はまるで水泳の代表の様な顔をしているが、実は水泳の様々な要素の...
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蒼井上鷹, 4ページミステリー

ミステリーというよりはホラーの様な作品が多い。また、4ページという体裁に縛られてやや消化不良となっている作品も多い。それでも、手軽に読める4ページという長さで一冊分書き上げているのは通勤の友としては嬉しい。
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タイラー・コーエン(著), 高遠 裕子(訳), インセンティブ 自分と世界をうまく動かす

サブタイトルにある "自分と世界をうまく動かす" は少し誇大広告で、実際には行動経済学周辺の小ネタ集。 あまり体系立った本ではなく、読み物として楽しむ本。
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大和田秀樹, ムダヅモ無き改革 (5) (6)

神々の黄昏 (ラグナロク) 大戦編もついに完結。もちろん期待に違わず、想像の一枚上を行く打ち手、無駄に格好良い大技の数々、漫画界の常識を打ち破る異常なコマ割りなど、まったくパワーが落ちていない。
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門倉貴史, 雇用クライシス取材班, リストラされた100人 貧困の証言

派遣切りに遭った人々、内定を取り消された学生、リストラされた正社員、ワーキングプア、貧困ビジネス等の近年話題となっている事例のケーススタディが中心。週刊誌的な興味はそそられるが、それ以上の深い考察は感じられない。