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中村敏雄, スポーツの見方を変える

スポーツの高度化ばかりに注力し大衆化が軽視されてきた日本の姿を皮切りに、近代スポーツの本質や体育との違いを論じる。スポーツ文化を語る人は多々あり、Jリーグ立ち上げ後はスポーツと地域社会の関わりに踏み込んだ本も多いが、本書はそれらとはまた違った高度化と大衆化という対立軸を提供する。最終章の、競泳を例に挙げたスポーツや体育のあり方は、近代スポーツの限界をはっきりと自覚させてくれる好例。様々な報道で取り上げられる競泳はまるで水泳の代表の様な顔をしているが、実は水泳の様々な要素のうち...
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蒼井上鷹, 4ページミステリー

ミステリーというよりはホラーの様な作品が多い。また、4ページという体裁に縛られてやや消化不良となっている作品も多い。それでも、手軽に読める4ページという長さで一冊分書き上げているのは通勤の友としては嬉しい。
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タイラー・コーエン(著), 高遠 裕子(訳), インセンティブ 自分と世界をうまく動かす

サブタイトルにある "自分と世界をうまく動かす" は少し誇大広告で、実際には行動経済学周辺の小ネタ集。あまり体系立った本ではなく、読み物として楽しむ本。
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大和田秀樹, ムダヅモ無き改革 (5) (6)

神々の黄昏 (ラグナロク) 大戦編もついに完結。もちろん期待に違わず、想像の一枚上を行く打ち手、無駄に格好良い大技の数々、漫画界の常識を打ち破る異常なコマ割りなど、まったくパワーが落ちていない。
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門倉貴史, 雇用クライシス取材班, リストラされた100人 貧困の証言

派遣切りに遭った人々、内定を取り消された学生、リストラされた正社員、ワーキングプア、貧困ビジネス等の近年話題となっている事例のケーススタディが中心。週刊誌的な興味はそそられるが、それ以上の深い考察は感じられない。
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あさりよしとお, まんがサイエンス 12

今回は登場人物一新前の1990年代後半から2000年代中盤にかけての作品を収録。この歳になっても未だに知らないことが多く、新鮮な驚きがある。大人の鑑賞にも耐えるクオリティ。
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ちきりん, ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法

Chikirinの日記に大幅に加筆修正して単行本化したもの。"ゆるく" と言いながらその実きちんとしたポリシーが感じられるのは読んでいて気分がいい。
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ドナルド・ノーマン(著), 伊賀聡一郎(訳), 岡本明(訳), 安村通晃(訳), 複雑さと共に暮らす デザインの挑戦

ノーマン先生の新著。複雑さは避けられるものでも無理に減らすべきものでもなく、一貫性を持って扱える様にするべきものであるとの論。他の著作と同様、豊富な事例や図版に気付かされることが多い。
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鳥越規央, 9回裏無死1塁でバントはするな

セイバーメトリクス本だが、あまり新味がないのに加えて、首を傾げたくなる項目が多い。第2章2 "2ストライク・ノーボールで本当に1球外すべきか" では、2ストライクからのボール球に対して打者は必ず正確に見逃すことを暗黙の内に仮定しているが、釣り球に引っかかることを考慮しないのは雑過ぎる第2章3 "敬遠して次のバッターと勝負は良い作戦といえるか" では、得点期待値の算出方法が不明。値からは、リンゼイ・パルマーモデルを組み合わせてイニングの総得点期待値を算出するのではなく、単に対象...
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青砥恭, ドキュメント高校中退 いま、貧困がうまれる場所

著者は公立高校の教諭出身の研究者であり、豊富なフィールドワークによる実例が並べられている。あまりにリアルな高校中退の実例の数々は、読むだけで虚しさがこみ上げてくる。高校中退によって生じる貧困は、決して本人だけの問題ではなく環境要因が大きいことが良くわかる。家庭の事情により基本的な生活習慣を確立することができず、小学校低学年で勉強について行けなくなり、そこからの復帰手段がないままずるずると高校中退となる多くのケースを見せられると、著者の主張するサポート体制の強化や高校の義務教育...