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アーロン・ブラウン(著), 櫻井祐子(訳), ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学

短期投資はゼロサムゲームであり、その本質はギャンブル (本書ではテキサス・ホールデムを中心に説明しているが、多くのギャンブル・ゲームに当てはまるだろう) であるという身も蓋もない本だが、きちんと本質を捉えている。単純なゲーム理論に傾倒してしまうとつい忘れがちになる、ゲーム理論の限界の先にプレイヤーの心理があるという事実を思い出させてくれる。第9章でエセル・リドルによる1921年の経験的ポーカー研究が紹介されているが、これがズバリと自分のことを言い当てられているようで衝撃を受け...
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Jessica Lage, Trailrunner’s Guide: 50 Runs Around the Bay

こんなピンポイントな本が出てしまうあたりが、米国の懐の深さか。全50コースで、Marin county、East bay、Peninsulaが大体1/3ずつといったところ。10マイル以下の数時間程度で走れるコースが多い。60 Hikes Within 60 Milesと同じく地図がやや粗いので、迷いにくいコースが中心とはいえこの本の地図だけを頼りに走るのは少々不安ではある。周辺のトレイルランニングコース探しに眺める分には文句無し。
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視覚デザイン研究所(編), わかりやすくて効果的 Webデザイン基礎講座

7日間でマスターするレイアウト基礎講座や7日間でマスターする配色基礎講座の姉妹品。Webに関する技術的な解説やユーザビリティの話は一切なく、あくまでも単一ページの見え方だけに絞った内容。2000年の出版物なので例題のページがまだまだ素朴だが、基本的なデザインの方針はそれほど古くなるものでもない。
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スティーヴン・ヤング(著), 薄井ゆうじ(訳), 本の虫 その生態と病理 絶滅から守るために

本の虫 (bookworm) は実在した! として、一冊丸々仕上げてしまったユーモア本。本の虫に寄生された場合の症状には思い当たるところが多い :-)文中にちりばめられた小ネタの数々にもニヤリとさせられる。イザヤ・ベンダサン方式も効果的。
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Zipcarを契約してみた

日本では普通に車を持たない生活をしていた。金銭的にはどう計算しても車の所有コストの元が取れないし、車の運転をするくらいなら電車に乗って本のひとつでも読みたいし、やむを得ず車で移動する場合も事故リスクはタクシー会社にでも押しつけたい。しかし、米国はさすがに公共交通機関だけで生活するのは不便と感じるときがある。日々の通勤通学だけならば自転車で用が足りるし、休日ののトレイルも10マイルかそこらならば自転車でアクセスできるが、それを超える距離の移動はさすがに車が必要になるので、渋々な...
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Dennis E. Shasha(著), 吉平健治(訳), プログラマのための論理パズル 難題を突破する論理思考トレーニング

問題はオリジナリティの高いものが多く、総じて質は悪くない。ただし、最適値や最小値を求める系列の問題では、本当にそれが最適解であるかの証明が甘い部分が多く、訳者やレビューアにさらに最適な解を指摘されている箇所も目立つのが少し格好悪い。これは、著者がどちらかといえばヒューリスティックな問題や解法を好んでいるせいもある。
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岡本一南, 村上レシピ

村上春樹の小説に登場する食事を再現してみようという企画本。当然、小説中で触れられていない細かい部分はかなり想像で補っているのは仕方ないところ。ハルキストならどうぞ。
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平塚晶人, 入門講座 2万5000分の1 地図の読み方

恥ずかしながら告白すると、普段トレイルランニングのトレーニングで山に入る際は、登山地図やGPSは持っていくものの2万5000分の1地図は持っていなかった。しかしそれでは、著者の指摘する通り、分岐という点と登山道という線を追うだけになりがちで、山を立体的に捉えることができない。もちろん、トラブル時の対処にも大きく差が出てくる。耳が痛い。本書は、2万5000分の1地図の読み方を基礎から教えてくれる。本文を読みつつ、100枚近い地図を含む別冊地図帳をめくり、尾根や沢をなぞり、コース...
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日下三蔵(編), 大森望(編), 超弦領域 年刊日本SF傑作選

虚構機関に続く、年度別アンソロジーの2008年度版。今回も打率が高い。中でも伊藤計劃の "From the Nothing, With Love" はまさに王道SFで私の好み。序文で氏の訃報を知ったが、残念でならない。津原泰水の "土の枕" や最相葉月の "幻の絵の先生" など、SFと言って良いのか分からない作品も多いが、その質は間違いない。また、Boichiのマンガは掘り出し物。今まで完全に見逃していた。
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阿佐田哲也, 阿佐田哲也の麻雀秘伝帳

長らく絶版になっていたせいで読み逃していた "阿佐田哲也のマージャン秘密教室" が新装版で復活。全自動卓全盛の現在にはそぐわない積み込み系の技が多いが、実用書ではなく古典として読むべき本だろう。ルールの変遷など、歴史的に興味深い部分も多い。最終章の "本技" は、出版年月からして、の原型となったと思われるもの。戦術論としてはいささか古臭さが否めないが、考え方自体は今でも通用するものがある。