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田村正之, 人生100年時代の年金戦略

かなりポジティブな年金解説本。 年金のシステムに肯定的なこと自体は良いのだが、年金を擁護するために無理な理屈が見られるのはいただけない。例えば、厚生年金保険料の事業主負担分を無視し (事業主の視点から見れば加入者負担も事業主負担も人件費で変わりない)、その多くを加入者が支払っている税金からの支出もどこかから湧き出してきたかのように扱って、 "払った以上に多くもらえる" と述べるのは詭弁と感じる。 またこちらも意図してかはわからないが、各種制度の良いところしか書いていないのも不...
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山崎俊輔, 大人になったら知っておきたいマネーハック大全

大全という大仰なタイトルだが小ネタが中心。節約ひとつとっても王道である固定費の削減にはほぼ触れず、変動費の削減ばかりを小手先でいじっている印象。昨今の流行を反映してか幸福度にも言及しているが、参考文献などはなし。
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長谷川高, 家を買いたくなったら 令和版

この分野のロングセラー本の改訂版。 最近の住宅価格の高騰を反映してか、人口動態やマンション供給戸数から需給バランスの変動を予測し、 中長期的には住宅の価格は下がっていかざるを得ないでしょう。 と述べているのは、この種の本としては良心的。 その他の部分も極めて真っ当な内容で、最初に読む教科書としてもお勧めできる。
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忍者増田, 忍者増田のレトロゲーム忍法帖

忍者増田が語るレトロゲームの話というだけで同じ時代を生きた読者は買う価値がある。特別対談も高橋ピョン太、横山裕一、ほえほえ新井とツボを抑えた人選。もちろん後半半分は期待通りのウィザードリィの話。ファミコン版だけではなく外伝も押さえているなど抜かりない。
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天原, 33歳独身女騎士隊長。 (2)

33歳独身女騎士隊長。にまさかの続編。3年ぶりの単行本だがこのくらいのペースで細々と続いていくのが良いと感じる。
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朝倉康心, 麻雀の失敗学 ミスから生まれた必勝戦術

麻雀に限らず、トッププロが自らの失敗を振り返る本は貴重。 単純な手順ミスはさすがに少ないが、基準に沿った押し引きなどの人間が不得意な分野はやはりトッププロでもミスをするもの。聴牌料の押し引き基準など、参考になる資料も多い。
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詠坂雄二, 電氣人閒の虞

遠海事件以来久しぶりの詠坂雄二。ホラーかと思わせつつ、最後はきちんとミステリとして落としてくれた。それだけに終わらず、最後の一文の壮大な引きを入れるあたりはやはり只者ではない。 なお文庫版の解説は完全なネタバレなので、これから読む人は要注意。
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公益社団法人 日本ボディビル・フィットネス連盟(監修), ボディビルのかけ声辞典

ボディビルのネタ本。企画も写真も良いのだが、いかんせんボリューム不足。"辞典" を名乗るのならば、それなりの量が欲しかった。
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芦沢央, 許されようとは思いません

表題作の "許されようとは思いません" が秀作。ホワイダニット型の安楽椅子探偵モノだが、因習が残る地方の舞台設定と勘のいい探偵役の彼女という組み合わせが見事。文体も読みやすい。
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冨田和成, 資本主義ハック 新しい経済の力を生き方に取り入れる30の視点

資本主義社会の攻略本。資本主義の未来を楽観視した上で、アービトラージを推奨する。 金融資本の運用一辺倒ではなく、元手を生み出すための人的資本の形成に半分以上を割いているのが特徴。その上で課税や社会保障を "重力" と呼び、重力の大きい人的資本から重力の小さい事業資本へシフトしていくことを勧めている。 金融資本の運用部分はプロと競合しにくい長期投資や新興銘柄を推奨。期限を切らない長期の大きな予測は概ね外れず、板が小さい新興銘柄はアービトラージの余地が生じやすい。また、金余りの世...