fiction

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Boichi, Boichi 作品集 HOTEL

以前読んだアンソロジーに収録されていた短編 "全てはマグロのためだった" が良かったので読んでみたのだが、少し異なる作風のものが多く、あまり好みに合わなかった。比較的好みなのは "PRESENT" あたりか。やはり私はベタなSFと馬鹿SFが好きらしい。
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我孫子武丸, 小説たけまる増刊号

雑誌風の装丁という遊び心はさすが我孫子武丸といったところ。内容はホラーあり、ミステリありの短編集で飽きさせない。また、さりげなく挟み込まれている "叙述トリック試論" が妙に質が高い。
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麻耶雄嵩, 螢

古典的な嵐の山荘モノのミステリ。ネタバレになるので内容は書かないが見事にやられた。大ネタの一つは読みながら違和感があったので早い段階で気付いていたが (今思えばそれも作者の意図通りだろう) 、他の大ネタは全く予想外の方向から来た。
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小島英俊, 文豪たちの大陸横断鉄道

夏目漱石、永井荷風、里見弴、林芙美子、横光利一、野上弥生子といった文豪達が残した紀行文から当時の大陸横断鉄道の様子を辿ろうという企画本。面白くないわけがない。
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岡本かの子, 老妓抄

表題作の老妓抄の読後感の悪さが素晴らしい。それなりに好きなことができていて、それなりに生活にも不自由していないと感じている技術職・研究職の人間は一度読むべき。言いようのない罪悪感を感じてしまう。
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上村一夫, 菊坂ホテル

かつての本郷菊富士ホテルを舞台に、竹久夢二、谷崎潤一郎を中心とした文人達を描く。上村の描く女性の艶っぽさは出色。
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岡本一南, 村上レシピ

村上春樹の小説に登場する食事を再現してみようという企画本。当然、小説中で触れられていない細かい部分はかなり想像で補っているのは仕方ないところ。ハルキストならどうぞ。
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日下三蔵(編), 大森望(編), 超弦領域 年刊日本SF傑作選

虚構機関に続く、年度別アンソロジーの2008年度版。今回も打率が高い。中でも伊藤計劃の "From the Nothing, With Love" はまさに王道SFで私の好み。序文で氏の訃報を知ったが、残念でならない。津原泰水の "土の枕" や最相葉月の "幻の絵の先生" など、SFと言って良いのか分からない作品も多いが、その質は間違いない。また、Boichiのマンガは掘り出し物。今まで完全に見逃していた。
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東浩紀(著), 恩田陸(著), 法月綸太郎(著), 宮部みゆき(著), 神林長平(著), 倉田タカシ(著), 小路幸也(著), 新城カズマ(著), 曽根圭介(著), 田辺青蛙(著), 津原泰水(著), 西崎憲(著), 大森望(責任編集), NOVA 2 書き下ろし日本SFコレクション

NOVA 1の続編、といいつつ著者陣は一新。もちろん、今回も全て書き下ろし。前作と比べると "バベルの牢獄" や "夕暮にゆうくりなき声満ちて風" など、実験的作品も多くばらつきが大きい印象。東浩紀や宮部みゆきといった、あまりSF作家として認知していなかった作家が入っているのも面白い。恩田陸の "東京の日記" が私好み。
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山本弘, 去年はいい年になるだろう

山本弘の私小説的要素の強いSF作品。氏の小説が初めてという方には何が何だかという部分もみられるが、や時代からのファンである私には共有できている楽しさがある。また、氏の内面を吐露する場面などファンでなければ赤面してしまうようなものが多いが、これもこの作品の味だろう。もちろん、SF部分の出来は素晴らしく、センス・オブ・ワンダーを十分に堪能させてくれる。