history

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横山宏章, 中国の異民族支配

中国はチベット問題をはじめとする様々な異民族問題を抱えているが、その根底にある思想を追う。中国の歴史を追っていくことで、優れた文明を持つ中華と野蛮な夷狄を峻別する "華夷之辨" と、異民族を含む "大一統" の二つの一見相反する思想が複雑に絡み合いながら現代の異民族支配に至っていることがよく分かる。
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森川方達, 帝国ニッポン標語集 戦時国策スローガン・全記録

戦時中のスローガン4237句をまとめただけの本なのだが、下手な歴史書よりも、その時代のムードがよく伝わってくる。
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安田敏朗, 国語審議会 迷走の60年

国語審議会の歴史を追ってみると時流に流された "迷走" としか言えないものであった。効率を重視する "現在派" と歴史や文化を重視する "歴史派" との対立が迷走の大きな要因であるものの、そのバランスが世間の空気や政治的な意図によって大きく揺れ動いてきた様子がよく分かる。
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晴山陽一, 英語ベストセラー本の研究

戦後60年間分の英語ベストセラー本を時系列順に追ったもの。この英語学習本という視点が実に素晴らしく、単に英語学習法の流行り廃りが見えてくるだけではなく、日本人にとって英語とは何であるかという位置付けの移り変わりまでもが見えてくる。
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柴野京子, 書棚と平台 出版流通というメディア

現在の日本の出版流通がどのように成長してきたのかが学術的に検証されている。雑誌や教科書に始まるメインストリームはもちろん、赤本の歴史や書店の "読書空間" の変遷まで、出版流通史の大きな流れが俯瞰できるようになっている。本好きの人間ならば一度は必ず目を通すべき本。おすすめ。
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冷泉彰彦, 民主党のアメリカ 共和党のアメリカ

米国の二大政党の仕組みとそれぞれの対立軸は良く取り上げられるが、その原則では説明できないねじれの部分も多い。例えば共和党は小さな政府を指向しているにもかかわらず、なぜ小ブッシュ政権はあれだけの財政赤字を積み重ねてしまったのか、など。そういったねじれにいたった経緯や、歴史的な対立軸の推移などがきちんと押さえられているのは外国人にはありがたい。
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松原岩五郎, 最暗黒の東京

1893年に出版された "最暗黒之東京" を底本に、新仮名遣いに改め再編集されたもの。著者の松原は文学者でもあったため少々文章が走りすぎるところもあり、単なるレポートと言うよりは記録文学といった趣。場末の木賃宿、貧街、残飯屋、人力車夫など、明治時代の日本の底辺の記録が生々しく、とても高々100年前のこととは思えない。この時代の数少ない下層社会の生の記録であるので、ぜひとも読んで欲しい。
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奥野修司, 沖縄幻想

癒しの島、長寿社会といったイメージを持たれることの多い沖縄。そのイメージの裏にある実体は、3K産業 (観光、公共事業、基地) だよりの経済だった。そういった実体を受け止めた上で、沖縄をどう開発して行くべきかの論は、沖縄に対する愛が感じられて実に興味深い。なお、本書には同じ著者によるに関する記述が所々に出てくるので、併せて読んでみた方が良いかもしれない。
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渋谷直角, 定本コロコロ爆伝!! 1977-2009 「コロコロコミック」全史

サブタイトルに1977-2009と書かれているが、80年代頃にウェイトが置かれている感じ。これは編者の渋谷氏の年齢から自然なところだろう。私は渋谷氏と同世代ということもあり非常に楽しめたが、もう少し若い世代には分からないネタが多いかもしれない (まあ、その世代はまだこんな本は買わないかも知れないが) 。歴代の漫画家や編集者はもちろん、高橋名人、前ちゃんなどの関係者を含む豊富なインタビューを中心に構成されており、当時の背景を伺うことができる。また、コロコロの企画記事や、イベント...
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山本直樹, レッド (1)

連合赤軍を中心とした革命運動を描くマンガ。テーマは非常に面白く、当時の時代を感じさせる描写も良いのだけれど、膨大な登場人物の行動が淡々と描写されるという本書の構成はある程度の予備知識がないと理解しにくい。