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松原岩五郎, 最暗黒の東京

1893年に出版された "最暗黒之東京" を底本に、新仮名遣いに改め再編集されたもの。著者の松原は文学者でもあったため少々文章が走りすぎるところもあり、単なるレポートと言うよりは記録文学といった趣。場末の木賃宿、貧街、残飯屋、人力車夫など、明治時代の日本の底辺の記録が生々しく、とても高々100年前のこととは思えない。この時代の数少ない下層社会の生の記録であるので、ぜひとも読んで欲しい。
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奥野修司, 沖縄幻想

癒しの島、長寿社会といったイメージを持たれることの多い沖縄。そのイメージの裏にある実体は、3K産業 (観光、公共事業、基地) だよりの経済だった。そういった実体を受け止めた上で、沖縄をどう開発して行くべきかの論は、沖縄に対する愛が感じられて実に興味深い。なお、本書には同じ著者によるに関する記述が所々に出てくるので、併せて読んでみた方が良いかもしれない。
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渋谷直角, 定本コロコロ爆伝!! 1977-2009 「コロコロコミック」全史

サブタイトルに1977-2009と書かれているが、80年代頃にウェイトが置かれている感じ。これは編者の渋谷氏の年齢から自然なところだろう。私は渋谷氏と同世代ということもあり非常に楽しめたが、もう少し若い世代には分からないネタが多いかもしれない (まあ、その世代はまだこんな本は買わないかも知れないが) 。歴代の漫画家や編集者はもちろん、高橋名人、前ちゃんなどの関係者を含む豊富なインタビューを中心に構成されており、当時の背景を伺うことができる。また、コロコロの企画記事や、イベント...
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山本直樹, レッド (1)

連合赤軍を中心とした革命運動を描くマンガ。テーマは非常に面白く、当時の時代を感じさせる描写も良いのだけれど、膨大な登場人物の行動が淡々と描写されるという本書の構成はある程度の予備知識がないと理解しにくい。
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一条真也, ユダヤ教VSキリスト教VSイスラム教 「宗教衝突」の深層

同じ啓典宗教であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教の比較本。からの引用が少し多めか。歴史や教義のあたりは説明も分かりやすく素人にもすらすら読めるが、最後の神秘主義に関する解説はさすがにちょっと説明不足に感じる。このあたりは元々かなり詳しい人間でないと何を言っているかがまったくわからないのではないだろうか。
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村石利夫, 麻雀101話 東南西北もの知り事典

日本麻雀道連盟会長である村石氏による麻雀雑学本。昭和51年発行とそれほど古い本ではないが、発行部数が少なく入手困難なので古書としての入手となった。この手の雑学書としても類をみない幅広い話題を扱っている。麻雀の歴史やルール・用語はもちろん、雀荘営業、種々のローカルルール、麻雀用具、麻雀古書、麻雀小唄 (!) などなど、麻雀研究をするならば押さえておくべき一冊だろう。
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縣秀彦, 天文学者はロマンティストか? 知られざるその仕事と素顔

国立天文台普及室長である著者が、現在の天文学者の生態を語った本。自分の専門分野と全く異なる分野の研究者の生態は興味深く、刺激になる。また、天文学の簡単な歴史と興味の移り変わりもコンパクトにまとめられているのでこの分野の素人にも安心。
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浜野喬士, エコ・テロリズム 過激化する環境運動とアメリカの内なるテロ

日本ではただの過激派団体としてしか報道されない過激な環境保護・動物愛護団体を読み解いた本。グリーンピース、シー・シェパード、アース・ファースト! といった主要な団体の生い立ちに始まり、その思想史的背景までをも明らかにしてくれる。それらのラディカルな運動の内在論理は単にそれらに閉じたものではなく、米国の根底に流れる市民不服従の思想まで辿ることができるという事実は、米国の考え方を知る上でも役に立つだろう。
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片桐頼継, レオナルド・ダ・ヴィンチという神話

"万能の天才" として語られ、もはや神話化された様な扱いをされることもあるレオナルド・ダ・ヴィンチの実体を追った本。レオナルドが非凡なクリエイターであったことは間違いないものの、科学・工学への貢献や先見性については多くの疑問が残るのも事実だろう。
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こうの史代, この世界の片隅に (上, 中, 下)

太平洋戦争期の広島・呉を舞台にした一人の女性の物語。この時期のこの場所を描く以上、どうしても鬱展開を避けられないわけだが、そんな中にも生活の温かさが感じられるのはさすがこうのさん。