history

book

サイモン・シン, 青木薫(訳), ビッグバン宇宙論 (上, 下)

フェルマーの最終定理、暗号解読に続く、サイモン・シンの最新作。 相変わらず見事な構成力と筆力で、2冊組のボリュームが全く苦にならない。単に最先端の理論を説明するのみにとどまらず、古代ギリシャから現代までの天文学の流れを追わせることで、各時代の人々の宇宙の捉え方の変遷がよくわかる。お勧め。
book

橋本和明, 違法コピー職人たち 誰も語れなかったパソコンの黒歴史

マイコン時代に始まりWinnyに至るまでの違法コピーの歴史をまとめた本。 なかなか活字としてまとめられる機会の少ない種類の情報なのでありがたい。さらに通り一遍の平坦な記述ではなく、その時代の空気を多分に含んだ内容となっているのも嬉しい。そのせいか、ところどころ日本語がアレだったりするのはご愛敬。
comic

熱血!! コロコロ伝説 vol.6 1987-1988

懐かしさに購入。vol.1 (1977-1978) はさすがに物心付く前で記憶にないのでvol.6から。今でも中野の某店で当時のコロコロが買える気もするが、こうして手軽に手にはいるのは嬉しい。 収録作品は当時の人気新作品を大体押さえている感じ。河合一慶先生の「ファミコンランナー 高橋名人物語」や徳田ザウルス先生の「ダッシュ!四駆郎」も収録して欲しかったが、この辺の長期連載はvol.5やvol.7に収録されそう少し小林よしのり率が高すぎる気もするが、当時の「おぼっちゃまくん」は...
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岡田英弘, 世界史の誕生

従来の地中海文明と中国文明を中心とした世界史に疑問を投げかけ、モンゴル帝国を中心とした歴史を説く。 残念ながら自分は歴史にあまり明るくないので、どこまでが真実でどこからがトンデモかは理解できないが、純粋に読み物としても面白い。特に、地中海文明の歴史文化と中国文明の歴史文化の違いなど、細かな歴史知識を必要としない部分は一般人にも楽しめる。
book

橋本進吉, 古代国語の音韻に就いて 他2篇

既に絶版なので古書で入手。 表題作の "古代国語の音韻に就いて" は、万葉仮名の上代特殊仮名遣の研究成果をまとめたもの。講演録を元にしているため、部外者にも読みやすい。 上代特殊仮名遣とは、現代五十音の一部において、古代国語で甲類と乙類の万葉仮名の書き分けが見られる現象のこと。具体的には、エ、キ、ケ、コ、ソ、ト、ノ、ヒ、へ、ミ、メ、モ、ヨ、ロの14音について、甲乙の万葉仮名の書き分けが見られる。この書き分けの理由は音韻 (発音) が甲乙の二種類に分かれていたため、とされる。
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遠藤秀紀, 人体 失敗の進化史

ヒトがその短い歴史の中でどのように無茶な進化を重ねてきたのかを解剖学的観点から。 猿人からホモ・サピエンスまで、わずか4〜500万年で急激に進化した結果、ヒトの身体は多くの問題を抱えている。特に無理矢理に二足歩行となった代償は大きい。たとえば、血液を脳に押し上げるために高い血圧を必要とし、それでも少しの手違いで貧血を起こしてしまう。一方で、下肢の血液を心臓に戻すことも難しく、冷え性やむくみに慢性的に悩まされている。さらに深刻な症状としては、ヒトに際だって多い椎間板ヘルニアや鼠...
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サイモン・シン, 青木薫(訳), 暗号解読 ロゼッタストーンから量子暗号まで

フェルマーの最終定理のサイモン・シンの作品。 古典的な換字式暗号から量子暗号まで、暗号の歴史とそれにまつわるドラマのわかりやすい解説。前作同様、複雑な数式なしで読める構成は見事。おすすめ。
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スー・シェパード, 赤根洋子(訳), 保存食品開発物語

乾燥、塩、酢漬けといった伝統的な方法から、冷凍、フリーズドライといった最新の方法まで、保存食品の歴史を網羅した本。あまり日本人になじみのない食品も多く収録されており、雑学本として楽しめる。 ほぼ時系列順に並んでいるのを通して読むと、食糧の保存こそが文明の源であることを強く感じる。
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三戸祐子, 定刻発車 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?

よく日本の鉄道の正確さは世界一だというようなことを聞く。今までは漠然と日本人の几帳面さが原因くらいに考えていたが、本書はさらに一歩踏み込み、正確さの起源を江戸時代の参勤交代にまで求めている (さすがにちょっと眉唾だと思うところもあるが) 。 定刻発車を維持するための工夫の数々は、他のジャンルでの運用、たとえば通信や各種サーバ管理などに携わる方々にも参考になる部分は多くあると思う。いかに並列化を行うか、いかに障害の波及範囲を押さえるか、いかに回復しやすい設計を行うかなど。 少々...
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速水融, 歴史人口学で見た日本

歴史人口学というのはこの本で初めて知ったのだが、いわゆる歴史学以上に推理の要素を含み、イデオロギーの要素も少なく、私のような人間の興味をそそる。 本書は速水先生の自分史のようなところもあり、研究を進める上での苦労がしのばれるのも興味深い。中でも史料データベースの作成に伴う苦労がたびたび述べられているが、このあたりは自分のようなコンピュータ屋やデータベース屋とうまく連携できる仕組みが何かできないものか、と強く思う。