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ヘンリー・ペトロスキー(著), 池田栄一(訳), 本棚の歴史

フォークの歯はなぜ四本になったかのヘンリー・ペトロスキーが扱っていたもう一つのテーマは何と本棚。 現在ではあまりに当たり前過ぎて視界に入らない本棚だが、この形が確立するまでには本の形とともに様々な紆余曲折を経てきた。本の形、本の社会的な位置づけ、読書スタイルの変化が相互に絡み合って変化していく様子はエンターテイメントとしても素晴らしい。おすすめ。
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谷口ジロー(作画), 古山寛(原作), 柳生秘帖 柳生十兵衛 風の抄

1990年代前半の作品の新装版。文庫ではなく大判で読めるのがうれしい。 歴史モノではあるが、かなりエンターテイメント寄り。谷口ジローの数少ない時代劇だが、これも味があって良い。
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パオロ・マッツァリーノ, 「昔はよかった」病

パオロ・マッツァリーノの新刊。 今回の標的は、捏造されがちな庶民文化史の捏造。戦前戦後の新聞を中心とした資料で説き伏せていく姿は痛快。
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原田実, トンデモ日本史の真相

トンデモ説の中でも日本史に注目した一冊。 源義経 = チンギス・ハーン説から竹内文書まで、主要な奇説はほぼカバーされている印象。解説も丁寧なので、この分野の初心者でも楽しめる。
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磯田道史, 武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新

"金沢藩士猪山家文書" を読み解き、加賀藩の御算用者であった猪山家のお金の流れを見事に解明した仕事。 史学的な成果の大きさはもとより、読み物としても秀逸。2010年の映画化に至ったのも、この臨場感の高さによるところが大きいのだろう。
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原田実, 江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統

著者はASIOSの中の人。 江戸しぐさの矛盾や嘘を暴くだけにとどまらず、それが生まれた背景まできちんと踏み込む姿勢が良い。ところどころに独善的な推理が見られるところがやや難か。
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網野善彦, 古文書返却の旅 戦後史学史の一齣

東海区水産研究所月島分室で蒐集していた全国各地の漁村の古文書を返却する旅をテーマにしたエッセイ。その多くが (著者の責任でないものもあるたとはいえ) 借用期間を過ぎているもののため、懺悔の旅となるのだが、それでも関係者の温情に助けられる様子が描かれている。 史学のフィールドワークの現場を知る上でも非常に興味深い一冊。
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ゾルゲ市蔵, 8bit年代記

各所で物議を醸している著者ではあるが、本書は比較的おとなしい部類か。 ゲームの話から脱線する部分も多く、どちらかというと青春自伝マンガといった趣。
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グレゴリー・クラーク(著), 久保恵美子(訳), 10万年の世界経済史 (上) (下)

日本語版の表題は "10万年の世界経済史" となっているが、10万年というbig historyよりも、産業革命の背景やその影響が主題。原著の表題の "A Farewell to Alms" の方が著者のメッセージを正しく伝えているように感じる。ダジャレだが。 上巻はマルサスの罠による産業革命以前の停滞が中心。世界各国の人口、出生率、死亡率、生活水準、技術水準、実質賃金の豊富な推移データを元に、短期的な所得の増大が常に人口の増大によって打ち消されてきたことを示す。 下巻では、...
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谷口ジロー, 千年の翼、百年の夢

ルーブル美術館を舞台に夢と現の間を飛び回りながら、その歴史の重みを感じさせてくれる。 ルーブル美術館という尻込みしてしまうような題材を描き切る谷口ジローの筆致も見事。