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鄭大均, 在日・強制連行の神話

いわゆる強制連行の実像に迫る本。本書で取り上げられる多くの文献や証言は、在日一世の多くがチャンスを求めてもしくは教育を受けに自らの意志で日本に渡ってきたことを示している。また、強制連行の神話がどのように広がってきたかについてもきちんと踏み込んでいるのが素晴らしい。
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杉山隆男, 兵士を追え

陸空に続く新作のテーマは海。それも最高機密の塊である潜水艦。潜水艦の内部はもちろん、それを取り巻く哨戒機への同乗取材まで行われている。このシリーズらしく充分なボリュームで、前作同様に自衛隊員たちの生の声が多く取り上げられているのが興味深い。
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藤和彦, 石油を読む 第2版 地政学的発想を超えて

石油はもはや戦略物資などではなく、国際市場で流動的に取り引きされるコモディティであるという主張。地政学的なリスクよりも、投資マネーの動向による価格変動のリスクの方がはるかに大きいという点は同意できる。現在の国際石油市場の様子、OPECやメジャーの凋落など、この一冊で現在の石油を取り巻く状況がよくわかる。おすすめ。
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中村秀樹, 本当の潜水艦の戦い方 優れた用兵者が操る特異な艦種

元海上自衛隊潜水艦長の著作だけあって、現在の海上自衛隊の状況がよく伝わってくる。3章の第二次世界大戦における日本海軍潜水艦作戦に多くのページを割いているのが特徴的で、海軍時代から続く潜水艦運用の問題点が浮き彫りになっている。このあたりは興味がないと少々退屈になりがちなところではあるが、他の戦史本よりははるかに読みやすくまとめている。
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松村劭, 戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方

アドバンスド大戦略な表紙に、ゲーマー向けの本かと思って手に取ったら、本気の軍事本だった。著者の松村氏は防大卒業後、情報幕僚、作戦幕僚、防衛部長などを歴任された方。(一応PHP文庫なので) ビジネス書のフリをしているが、中身は完全に戦術シミュレーション本。戦術に興味がある人は読んで損はない。
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江畑謙介, 安全保障とは何か 脱・幻想の危機管理論

まずは冷戦後の大きな紛争要因である資源問題や通商ルート問題を中心とした、現代の安全保障の構造の解説。冷戦中の東西ブロック構造から冷戦後の共同体を基盤とした構造への変化がよくわかる。さらに、アジア・太平洋の安全保障を考える上で重要なプレイヤーとなる米国、中国、ロシアのそれぞれの思惑と戦力が分析されている。不明な点や比較が困難なパラメータはきちんとことわっているため、トンデモ率が低く抑えられているのは評価できる。
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高部正樹, 傭兵の誇り 日本人兵士の実録体験記

著者の高部氏は、「最強の男になる」という夢を叶えるために、日本を飛び出し海外の戦場で傭兵として戦っている方。傭兵が (少なくとも先進国の人間から見ると) 割に合わない商売というのは軍事に詳しい人には広く知られていると思うが、その実際の数字を見ると愕然とする。男達がどのような思いで傭兵となることを選んだのか、傭兵と正規軍の関係、傭兵同士の信頼関係など、現場の人間でなければ書けないエピソードの数々。繰り返されるマスコミ批判が少し鼻につくが、これが現場の人間達の偽らざる気持ちなのだ...
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サイモン・シン, 青木薫(訳), 暗号解読 ロゼッタストーンから量子暗号まで

フェルマーの最終定理のサイモン・シンの作品。古典的な換字式暗号から量子暗号まで、暗号の歴史とそれにまつわるドラマのわかりやすい解説。前作同様、複雑な数式なしで読める構成は見事。おすすめ。
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菊月俊之, 世界のミリメシを実食する 兵士の給食・レーション

に比べると収録されているレーションの種類が少なく、先進国に偏っている。しかしながら、この値段でオールカラーな上、レーションはもちろん、メスキットの写真や歴史資料も多数含まれているのが嬉しい。
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杉山隆男

とをまとめ読み。膨大な取材を元に、ミクロな視点から自衛隊を見つめるスタイルは、近頃氾濫している机の上だけの憲法改正論や自衛隊論とは一線を画した迫力がある。仮想敵国がソビエトだったりとさすがに記述が古くなっている部分もあるが、自衛隊の本質は変わっていないと感じる。特に、自衛隊の微妙な位置付けは、本書の書かれた10年前から進歩がないように思う。