philosophy

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野村克也, 野村ノート

野球そのものの話よりも、組織論やリーダー論が中心。スワローズ時代の自慢話が少々くどいが、野村監督が指導者として確固たる意識を持っていたということが伝わってくる。 個々の戦術レベルの話を期待する人にはお勧めできない。配球論や打者のタイプについてもいろいろと語られているが、根拠となるデータが全く示されていないので何ともいえない。スワローズ時代に膨大なデータを集めたという趣旨のことは書かれているが、それを活用した過程については全く触れられていないのが残念。
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ウォルター・ブロック, 橘玲(訳), 不道徳教育

リバタリアン (自由原理主義者) である著者が、「自由」とは何であるかを語るため、あえて本来は不道徳と思われる者たちを擁護する。売春婦、麻薬密売人、恐喝者、ダフ屋、闇金融、幼い子どもをはたらかせる資本家等は、現代社会では不道徳と見なされているが、リバタリアンの視点から見ればどれも何の問題もない人間同士の自発的な取引に過ぎない。 本書は橘玲氏のカラーが強く出た一冊となっている。翻訳はかなりの超訳で、日本の現状に合わせた大幅な改版をおこなっている (例えばSlandererとLi...
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鯖田豊之, 肉食の思想 ヨーロッパ精神の再発見

日本と欧米諸国の食生活パターンの違いを元に、宗教や身分制度、結婚観、果ては社会意識の違いまでを解明する。 少々コジツケにみえる論旨もあるが (本書の性質上、食生活以外のところをバッサリと切り捨てているのでやむをえないが) 、自分が触れてきた欧米諸国の人々を思い出してみても非常に共感を覚えるところが多い。 40年前の本なのでさすがにデータが古くなっているところもあるが、論旨自体は今でも古さを感じない。
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中村敏雄, スポーツルール学への序章

スポーツのルールにはなぜこのようなルールがあるのかと思うものが多い。なぜ野球のルールにだけ「勝つことを目的とする」とわざわざ明記してあるのか、なぜサッカーは手を使用してはいけないのか、なぜ野球やクリケットではプレイヤーからのアピールがないと判定が行われないケースがあるのか。 それらのルールが生まれた過程は、生まれたときにはあまりにも自明であったがために、殆ど記録には残っていない。そんなルールの変遷を、僅かな情報を元に推測していく本書は、推理小説の様でもある。
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土屋賢二にハマってみる

くだらないといいつつ、つい読んでしまう。でも、読み終わった後、あまり損をした気分にならないのが土屋先生のすごいところ。
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土屋賢二, われ笑う、ゆえにわれあり

一冊まるまる屁理屈と高度にひねた笑いとが続く。じつにくだらない (褒め言葉) 。いわゆる読者を選ぶ本なのだが、わかる人には絶対のお勧め。 ……哲学者って、みんなこんな人なのか?
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伊田広行, スピリチュアル・シングル宣言 生き方と社会運動の新しい原理を求めて

正直言って、何が言いたいのかさっぱりでした。全てが抽象的すぎて。 やっぱり普段読まないジャンルの本は厳しいです……。
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中村敏雄, オフサイドはなぜ反則か

オフサイドのルールは本来不合理なものです。相手のゴールにボールを入れるのが目的のゲームでありながら、相手のゴール近くで待ち構えるという有利な戦術をとってはいけないというのですから。例えば、オフサイドのないバスケットボールでは、ボールを奪った後、最前線にいる味方へパスを出す速攻は最大の得点機です。しかし、現実にはサッカー、ラグビー、アメリカンフットボールなど、英国のフットボール起源のゲームの多くがオフサイドのルールを持っています。 その有利な戦術をとってはいけない理由について、...
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広瀬一郎, スポーツマンシップを考える

"スポーツマンシップ" とはよく聞く言葉ですが、その意味はというとなかなか知られていないようです。などと偉そうに書いてますが、恥ずかしながら私も10年以上スポーツをたしなんできたにも関わらず今までその意味を真剣に考えたことがなく、漠然とフェアプレーのようなものだと思いこんでいました。本来はスポーツマンシップとはフェアプレーのみならず、もう少しメタな概念、すなわち "スポーツを通じて身につける人格的な総合力" のことです。 この書籍はその少々抽象的なスポーツマンシップの概念を、...
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岸田秀, ものぐさ精神分析

岸田先生お得意の唯幻論を中心とした雑文集。米国とイラクのアレが起きた今、「国家論 -- 史的唯幻論の試み」を読むと感慨深いものがある。 同じように、アメリカが他民族の大量虐殺というその痼疾的反復強迫をやめるようになるためには、原住民の大量虐殺の経験を正当化するのをやめなければならない。これは大変なことである。それは欺瞞と暴力で奪った土地を原住民に返すことを意味し、さらに、自由、平等、民主のその共同幻想が偽りに過ぎなかったことを認めることを意味する。これは、アメリカ国家の基盤を...