philosophy

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北寺尾ゲンコツ堂, 「ゲテ食」大全

そこらの新緑やドングリに始まり、果ては犬猫まであらゆるものを食べてみたレポート。 "ゲテ食" というタイトルが付いているが、それほど悪ふざけな内容ではない。むしろ、あらゆる生物は人間の食材として平等であるという強いポリシーが感じられ、哲学的ですらある。 どの食材も入手方法から調理方法まで事細かに書かれているので実食してみたい向きにも。もちろん、興味本位だけでも十分に楽しめる。おすすめ。
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富永直久, ワープロONE DAY 1日あれば10本指で打てる

古本で見つけて、懐かしくなって購入。 中学生時代に (当時はお金もなかったので) 図書館で借りて授業中に練習をしていたら、本当に一日でタッチタイプができるようになったことを思い出す。 教授法そのものに加えて、やる気にさせてくれるサイドストーリーが地味に良い。"熱中没頭の1日は、3万日を凌駕する" のフレーズは今も忘れられない。
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冷泉彰彦, 民主党のアメリカ 共和党のアメリカ

米国の二大政党の仕組みとそれぞれの対立軸は良く取り上げられるが、その原則では説明できないねじれの部分も多い。例えば共和党は小さな政府を指向しているにもかかわらず、なぜ小ブッシュ政権はあれだけの財政赤字を積み重ねてしまったのか、など。そういったねじれにいたった経緯や、歴史的な対立軸の推移などがきちんと押さえられているのは外国人にはありがたい。
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浜野喬士, エコ・テロリズム 過激化する環境運動とアメリカの内なるテロ

日本ではただの過激派団体としてしか報道されない過激な環境保護・動物愛護団体を読み解いた本。 グリーンピース、シー・シェパード、アース・ファースト! といった主要な団体の生い立ちに始まり、その思想史的背景までをも明らかにしてくれる。それらのラディカルな運動の内在論理は単にそれらに閉じたものではなく、米国の根底に流れる市民不服従の思想まで辿ることができるという事実は、米国の考え方を知る上でも役に立つだろう。
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ヴァレリー・ラルボー(著), 岩崎力(訳), 罰せられざる悪徳・読書

教養人となるための読書論。 読書との出会いから教養あるエリートとなるまでの典型的なコースが示されているのだが、その中で挙げられている訪れやすい困難や誘惑は実に身につまされる。稀覯本や初版本の収集といった愛書趣味、博識への傾倒、虚栄心を満足させるための批評などの様々な誘惑に捕らえられていないか、自身の読書スタイルを見直すきっかけには良い一冊。おすすめ。
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池田信夫, ハイエク 知識社会の自由主義

ハイエクの入門書。専門外の人間がいきなりハイエク全集を読むのはかなり厳しいのでありがたい。 今まではハイエクを行き過ぎた自由主義者であるいわゆるリバタリアンだという理解しかなかったが、それが生まれた時代背景と、その背後にある自由主義的な考えと保守主義的な考えとの双方がはじめて繋がった。 後半は池田信夫blogでも度々取り上げられている知的財産権や電波割当の問題に繋がる。このblogを読む人ならば本書も読んでおいた方が良いだろう。
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玉村豊男, 男子厨房学(メンズ・クッキング)入門

いわゆる料理指南書なのだが、そこらのレシピ本などと違うのは料理というものを非常に高い視点から体系的に眺めているところ。たとえば刺身というものをとってみても、刺身とはナマの食材になんらかのソースをつけて食べる料理であり、サラダのバリエーションの一つに過ぎないと見なす。こういった大きな考え方をきちんと身につけると、手元の材料に応じて無限の料理が得られるだろう。 文章の軽さも実に良い。おすすめ。
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本田有明, ミミ&リリ 哲学の冒険

小説仕立ての哲学ガイド。 ガイドと言っても、特にまとめられた結論があるわけではなく、とりあえず哲学について考えるきっかけをつくるための本。巻末の哲学書案内がちょっと嬉しい。 色々と投げっぱなしのストーリーなので、小説としてはちょっとアレ。
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高野陽太郎, 鏡の中のミステリー

鏡に映った自分が上下は変わらないのに左右が逆転したように見える、という古典的な謎に答える本。 従来述べられてきた仮説 (たとえば人間の体がほぼ左右対称なことに起因するという対称仮説など) がきちんとサーベイされ、それぞれの問題点もよくまとまっている。 それらを踏まえて提唱される、筆者独自の多重プロセス理論は見事。人間が無意識のうちに、自身の鏡像と文字の鏡像を全く異なる座標系を用いて処理しているという事実は、指摘されるまでなかなか気づくものではない。
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鯖田豊之, 日本人の戦争観はなぜ「特異」なのか 日本と欧米の比較にみる戦争と人間の風土

肉食の思想と同じく40年前の本の復刊だが、これも全く古さを感じない。 鯖田先生の専門である西洋中世史の知識に基づき、欧米の戦争史を眺めることで、日本と欧米の戦争観の違いを探る。そもそもの近代国家の成立までの道のりが全く異なる以上、戦争観が食い違うのも当然のことのように思える。 また、後半は「死」の概念について、日本と欧米の違いを探っているがこれも興味深い。改めて、自分の死生観が日本人のものであることを認識する。