クレイグ・R・ライト(著), トム・ハウス(著), 薙野正明(訳), ベースボール革命 21世紀への野球理論

原書はまだセイバーメトリクスが普及する前の1989年の発行だが、今読んでも新鮮な内容が多い。

CERA (捕手防御率) 、エラー記録の欠点、タイ・カッブとピート・ローズの時代を超えた比較、ナックルボーラーの育成、ホーナス・ワグナーの再評価など、記録ヲタクには興味をそそられる内容ばかり。その中でも注目するべきは以下の2項目。

一つ目は多くの紙幅を割いている投手起用。メジャーリーグ黎明期から現在に至るまで、ルールや環境の変化が投手の寿命にどのような影響を与えてきたかを調査している。その手法はある種疫学的で、成長期 (25歳以前) の労働負荷が投手の寿命に大きな影響を与えることを発見している。また、負荷の推定において単純な投球回数に代わるBFS (Batter Faced Per Start) を考案することで限界を超えた負荷を見極めようとしているのも興味深い。

もう一つは、球場が成績に与える影響について。パークファクターのような単純な数値補正に止まらない深い考察は一読の価値がある。

翻訳は読みにくくはないものの、やや誤字が多いのが気になる。また、脚注はあるが歴史的なメジャーリーガーの名前をある程度知らないと読み辛いかもしれない。

セイバーメトリクスに興味のある人なら必ず読むべき本。

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