泉康子, 新装版 いまだ下山せず!

1986年の年末から翌年正月にかけて槍ヶ岳を目指して遭難したのらくろ岳友会のパーティを巡るノンフィクション。

のらくろ岳友会の結成メンバーの一人でもある著者はこの山行には参加しておらず捜索側にまわることとなったが、その一人称視点が非常に生々しい。遭難直後の混乱、錯綜する情報に踊らされる捜索隊、長期戦となった後の地道な聞き取り調査、捜索方針の相違が引き起こす会の分裂、すべてが遭難の現実を突きつけてくる。遭難者側に比べ捜索側の視点で綴られた記録は少なく、その意味でも貴重。

唯一残念なのはその文章の読みにくさ。ノンフィクション作品というよりは捜索記録といった意味を込めて書かれているせいもあるかもしれないが、捜索に関わる多数の関係者や親族が何の前触れもなく登場してくるなど、一読して理解しにくい部分が多い。

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