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中村敏雄, メンバーチェンジの思想 ルールはなぜ変わるか

中村敏雄の著作には、いつも自分のスポーツに対する無知を気付かされる。いくら現行のルールに基づいた戦術の良し悪しや個々の選手の技能を論じたところで、そのスポーツの成立した背景やその背後にある文化を知らなければただ虚しいだけとなる。本書はそのスポーツの歴史や思想に真っ向から切り込んだ論考をまとめたもの。現代の表面だけのスポーツジャーナリズムに満足できない方にはぜひ手に取っていただきたい。
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谷口ジロー, ふらり。

伊能忠敬 (と思しき人物) を主役に据えた作品。帯を見て、散歩ものの舞台を置き換えただけかと思いきや、これがなかなか。江戸の風俗をさりげなく取り入れているのに加え、人間以外の視点を持ち込むなど実験的な要素も面白い。
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中村敏雄, スポーツの見方を変える

スポーツの高度化ばかりに注力し大衆化が軽視されてきた日本の姿を皮切りに、近代スポーツの本質や体育との違いを論じる。スポーツ文化を語る人は多々あり、Jリーグ立ち上げ後はスポーツと地域社会の関わりに踏み込んだ本も多いが、本書はそれらとはまた違った高度化と大衆化という対立軸を提供する。最終章の、競泳を例に挙げたスポーツや体育のあり方は、近代スポーツの限界をはっきりと自覚させてくれる好例。様々な報道で取り上げられる競泳はまるで水泳の代表の様な顔をしているが、実は水泳の様々な要素のうち...
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ヤマザキマリ, テルマエ・ロマエ II

ストーリーの定型が固まりすぎ、2巻目にして既にややマンネリ気味ではあるが、それでもやはり面白い。娯楽作品としてよりも、文化に対する知的好奇心を満たしてくれる楽しさ。
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押切蓮介, ピコピコ少年

著者と同世代で完全にシンクロしてしまう。ゲームばっかりやっているダメ少年の自伝マンガなのだけれど、今思い返すと自分も負けないくらいダメ少年だった。
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小島英俊, 文豪たちの大陸横断鉄道

夏目漱石、永井荷風、里見弴、林芙美子、横光利一、野上弥生子といった文豪達が残した紀行文から当時の大陸横断鉄道の様子を辿ろうという企画本。面白くないわけがない。
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沖浦和光, 幻の漂泊民・サンカ

日本の山中で漂泊生活をしていたサンカの起源に関する調査書。柳田国男の唱えたロマン溢れる先住民起源説に反論し、近世後期の貧窮民が山に入りサンカ (山家) になったという説を提唱する。もっとも、サンカの歴史が比較的浅く、近世以前に存在しなかったという証明は悪魔の証明となるのでやはり難しい。調べた限りではこの時代の文献にサンカに関する記述が見あたらない、といった歯切れの悪い書き方になってしまうのは仕方のないところ。サンカ研究をする上では避けて通れない三角寛の著作の検証も面白い。膨大...
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上村一夫, 菊坂ホテル

かつての本郷菊富士ホテルを舞台に、竹久夢二、谷崎潤一郎を中心とした文人達を描く。上村の描く女性の艶っぽさは出色。
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中野京子, 危険な世界史

怖い絵の著者による世界史の小ネタ集。世界史と言いつつほぼ全てが19世紀頃の西洋史だったり、怖い絵シリーズの内容と被るネタが多かったりするのはご愛敬。
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中沢新一, 古代から来た未来人 折口信夫

折口信夫全集を読む根性のない私にとっては嬉しい入門書。よく聞く折口信夫のキーワードである "まれびと" 、"ムスビ" などの概念がきちんと押さえられていて、この道の素人にもわかりやすい。