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小室直樹, 経済学のエッセンス 日本経済破局の論理

小室先生お得意のケインズ、サムエルソンのマクロ経済学の入門書。経済学のエッセンスであるところのケインズモデルの解説のわかりやすさに加え、この文庫のために加筆された「平成大不況のエッセンス」がまた素晴らしい。まさにバブル後の平成大不況の仕組みが腑に落ちる。相変わらずの小室節も健在でお勧めの一冊。
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畑村洋太郎, 失敗学のすすめ

失敗をいかにして生かすかを科学的に実証した本。畑村先生の研究室では、過去にあった失敗を後輩に伝えるにあたり失敗者の実名を伝えることにしている、というくだりが興味深い。素人考えでは、実名を隠す方が失敗を公開しやすいのではないかと思えてしまうが、以下の3つの理由を読んで納得できた。聞く者によりリアルで強烈なインパクトを与えることができる興味を覚えた者がより詳しい内容を知りたいとき、失敗者本人に直接聞くことができる実名を出すことで、失敗とは隠すものではないという文化をつくることがで...
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大竹文雄, 経済学的思考のセンス お金がない人を助けるには

経済学を身近なミクロの見地から眺めるので非常に読みやすい。各種のインセンティブが、人間の行動にどう作用するかに力点を置いている。いくつかプロ野球を扱った話があるが、読み物としては面白いものの納得しかねる部分がある。"プロ野球における戦力均衡" は数値的な裏付けなしに理屈をこね回しているように見えてしまう。また、"プロ野球監督の能力" はチーム戦力の評価に下式を使用しているが、さすがにセイバーメトリクス全盛の現在に平均打率はないだろうと思う。元論文が1994年のものの様なのでや...
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スティーヴン・レヴィット, ヤバい経済学 悪ガキ教授が世の裏側を探検する

ヤバい経済学 (Freakonomics) と名乗っているが、経済学というよりは社会学の領域のものが多いと思う。日本人としては、やはり大相撲の八百長の話題が興味深い。千秋楽で7勝7敗の力士が妙に強いのは日本人なら誰でも知っていることだが、それを数値で示し、さらに星の貸し借りが次の対戦で調整されている事実までを暴く。まあ、半分神事としての性質を残す相撲に対して大真面目に八百長を指摘するというのも野暮だとは思うけれど。その他、一部アメリカ依存でいまひとつピンとこないもの (ク・ク...
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友野典男, 行動経済学 経済は「感情」で動いている

いわゆる行動経済学の入門書。この分野の一冊目として読むのには良いと思う。行動経済学の基本となるプロスペクト理論の解説が分かりやすい。特に価値関数や確率加重関数の実例は興味深い。人がギャンブルにハマる心理なども、これらの関数に大いに関係しているのだろう。
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ゲームにおけるセオリーに注目したプレーヤーモデルの構築

ゲームにおけるセオリーに注目したプレーヤーモデルの構築という修士論文を見つけた。麻雀のモデル化と推論エンジンの提案。実装と評価がなされていない様なのが残念。
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小林信也, データで読む 常識をくつがえす野球

データスタジアムのデータをもとに、主に昨期 (2005年シーズン) のプロ野球の分析を行う。データ本にしてはなかなか読みやすくまとまっている。しかしながら、せっかくのデータの読み方を間違っていると思われる項目が散見されるのが残念。例えば、「初回の得失点が勝率を大きく左右する」として初回の得失点と勝率の相関の高さを述べているが、初回に限らず得失点があれば勝率と強い相関が出るのは当たり前。初回の得失点の重要性を述べたいのであれば、初回以外に得失点があった場合との比較をしなければい...
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ケン・ブレイ(著), 近藤隆文(訳), ビューティフル・ゲーム 世界レベルのサッカーを科学する

ワールドカップ前に読もうと思っていた本だが、ようやく読了。戦術 (システム) の変遷から、フリーキックの解析まで、サッカーに関する事柄を科学的に解明する。戦術の変遷などはある程度サッカーの歴史を知らないと理解しにくい部分もあるが、その他は数値や図表も豊富で存分に楽しめる。おすすめ。
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ドゥニ・ゲージ(著), 南条郁子(翻訳), 藤原正彦(監修), 数の歴史

読み終わるまで気付かなかったが、監修は最近話題の藤原正彦。数が生まれてから近代数学に至るまでの流れを俯瞰できる。特に、数の記録と計算の間のギャップが埋まるまでのくだりは実に興味深い。また、図版の美しさは特筆もの。これを眺めているだけでも幸せな気分になれる。お勧め。
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安富和男, 虫たちの生き残り戦略

何かの役に立つわけではないけど、純粋に読んで楽しい虫たちの雑学本。一般人の興味を引きそうな話をきちんと絞り込んでいるのが良い。