sociology

book

増田弘(監修), なぜ世界で紛争が無くならないのか

日本でもニュースでよく取り上げられるものの、その背景がよくわからない世界の7つの紛争、"アラブ対イスラエル"、"アメリカ対イラク紛争"、"朝鮮半島危機"、"台湾海峡危機"、"日中危機"、"アフリカの紛争"、"東ティモール紛争" を取り上げて解説する。各章はそれぞれ個別の専門家が解説する形式。各章が完全に独立しており寄せ集め感は免れず、また紙幅の制限からやや踏み込みが浅いが、一冊の新書でこれだけ幅広くまとめられているのはありがたい。
book

永江朗, 本の現場 本はどう生まれ、だれに読まれているか

本の企画・編集から流通までの現場を押さえたルポタージュ。やや雑多な内容ではあるが、全面を通して本への愛が感じられるのは良い。再販制度への問題提起を反映して、本書も非再販となっているあたり芸が細かい。
book

柳沢有紀夫(編), 値段から世界が見える! 日本よりこんなに安い国、高い国

海外書き人クラブのメンバーが各国の生活を値段の視点から綴ったもの。様々な国で実際に生活している日本人の実感溢れるレポートは読んでいるだけで楽しい。
book

橘玲, 不愉快なことには理由がある

週刊プレイボーイの連載 "そ、そうだったのか!? 真実のニッポン" をまとめたもの。今回は経済系のトピックよりも政治や社会のネタが多め。進化心理学や脳科学のあたりはまだ受け売り感が残るが、読み物としては面白い。
book

村上福之, ソーシャルもうええねん

最近5年分のブログを選り抜きしたもので、文章量は少ないが中身は濃い。自身の体験談や経験則が中心で、非常に地に足のついた内容。ヘタに高所からの目線を入れないところが実に良い。日本のネット界隈の裏話の面白さはもちろんのこと、ライフハック的なネタも質が高い。中でも、"nullなり適当な値をつっこんでコンパイルする勇気が必要" という話は素直に共感できる。複数の人気連載を持っていただけあって、見事に読ませる文章。皮肉の効いた表現も良い。おすすめ。
book

川島博之, 「食料自給率」の罠 輸出が日本の農業を強くする

「食糧危機」をあおってはいけない以来の、世界的な食料余りのスタンスは全く変わらず。今作ではそれをさらに発展させ、日本の農業を産業して成り立たせるための方策を論じる。端的に言ってカロリーベースの食料自給率を上げるということは、儲からない穀物の生産を無理に押し上げることであり、採算を取ることは難しい。無理に辻褄を合わせるのならば農地の大規模化を推し進めるしかないが、これはこれで政治的な理由により難しい。となると、現実的に可能なのはオランダ型の農業となる。オランダは穀物自給率 (カ...
book

岩村暢子, 家族の勝手でしょ! 写真274枚で見る食卓の喜劇

現代の食卓の実態を調査する "食DRIVE" の成果をまとめたもの。対象が対象だけに定性評価の手法を用いているのは問題ない。実験参加者に一週間分の食卓を撮影してもらい、その前後に質問紙調査とインタビューを行う方法も問題ない。問題は、その後の定性分析の過程が全く示されていないこと。そのために、著者が読者受けしそうな見出しを考え、それに合った都合の良い結果だけを抜き出している印象が拭えない。もちろん、きちんとした定性分析によって見出しとなる要素を抽出している可能性もあるのだが、本...
book

エドアルド・ポーター(著), 月沢李歌子(訳), 「生き方」の値段 なぜあなたは合理的に選択できないのか?

行動経済学の本だが、研究者ではなくジャーナリストがまとめた本ということもあり非常に読みやすい。原題の "The Price of Everything" が示す通り、扱われているテーマは実に幅広い。生命や幸福、信仰など、行動経済学の守備範囲の広さを感じさせてくれる一冊。
book

橘玲, 臆病者のための裁判入門

外国人の知人が巻き込まれた小さな民事事件に関わることとなった著者による裁判録。外国人の代理人として関わっている立場のため、日本の司法制度の問題点が非常に客観的に見えているのが良い。実際に事件に巻き込まれた場合の対処方法も参考になる部分が多い。どういった機関にどの順序で相談に行くべきかはもちろんのこと、弁護士や裁判官がどういった行動原理で動いているかも非常に重要。後半は単独の事件からは少し離れて司法制度一般の話。前半の裁判録は橘氏にしては少し珍しい内容であったが、こちらは平常営...
book

野口大, 労務管理における労働法上のグレーゾーンとその対応

労務トラブル本の世界では労働者側に立った本が主流だが、こちらは徹底して企業経営者側に立った本。元々グレーゾーンが広い世界ではあるが、過去の判例から裁判所が重視する要素が抽出されておりわかりやすい。また、徹底して実務寄りの対処方法が示されている点も心強い。