book エドアルド・ポーター(著), 月沢李歌子(訳), 「生き方」の値段 なぜあなたは合理的に選択できないのか? 行動経済学の本だが、研究者ではなくジャーナリストがまとめた本ということもあり非常に読みやすい。原題の "The Price of Everything" が示す通り、扱われているテーマは実に幅広い。生命や幸福、信仰など、行動経済学の守備範囲の広さを感じさせてくれる一冊。 2012-11-12 book
book 橘玲, 臆病者のための裁判入門 外国人の知人が巻き込まれた小さな民事事件に関わることとなった著者による裁判録。外国人の代理人として関わっている立場のため、日本の司法制度の問題点が非常に客観的に見えているのが良い。実際に事件に巻き込まれた場合の対処方法も参考になる部分が多い。どういった機関にどの順序で相談に行くべきかはもちろんのこと、弁護士や裁判官がどういった行動原理で動いているかも非常に重要。後半は単独の事件からは少し離れて司法制度一般の話。前半の裁判録は橘氏にしては少し珍しい内容であったが、こちらは平常営... 2012-11-08 book
book 野口大, 労務管理における労働法上のグレーゾーンとその対応 労務トラブル本の世界では労働者側に立った本が主流だが、こちらは徹底して企業経営者側に立った本。元々グレーゾーンが広い世界ではあるが、過去の判例から裁判所が重視する要素が抽出されておりわかりやすい。また、徹底して実務寄りの対処方法が示されている点も心強い。 2012-10-30 book
book 中村淳彦, 職業としてのAV女優 今時のAV女優の実態について。その賃金や志望理由の変化はもちろんのこと、労働実態や労使トラブル、引退後のキャリアなど様々な視点を押さえているのは長年AV女優の取材やインタビューを継続している著者ならでは。一部、気分の悪くなるような内容もあるが (著者の表現の問題ではなく、内容の問題である) 、実態を知るには良い本。 2012-10-29 book
book 新雅史, 商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 それなりに歴史があると思っていた商店街の大半が、実は第一次世界大戦後の離農者対策として政治的に作られたものであることは新たな発見であった。そこを出発点とすると、戦後の商店街の発展を経て、オイルショック後に急激に崩壊し圧力集団となっていく流れがすとんと腹落ちする。 2012-10-21 book
book アビゲイル・アリング(著), マーク・ネルソン(著), 平田明隆(訳), バイオスフィア実験生活 史上最大の人工閉鎖生態系での2年間 1990年代前半、アリゾナの砂漠に作られた閉鎖生態系での生活の様子を描いた作品。一般向けの啓蒙書なので、科学データよりも実際の生活寄りの話題が中心。本書の主題となっているバイオスフィア2 (バイオスフィア1は地球そのものを指す) は、わずか1.2ヘクタールの土地の中に、熱帯雨林、サバンナ、砂漠、湿地、サンゴ礁のある海、農地などを詰め込み、(エネルギーと情報以外は) 外部から完全に隔離された環境で、8人の科学者が2年間の生活を試みるもの。リアルな生活の様子として描かれる毎日の農... 2012-10-18 book
book 川島浩平, 人種とスポーツ 黒人は本当に「速く」「強い」のか オリンピックの100m決勝だけを見て黒人の先天的な運動能力の高さを語る向きもあるが、ことはそう単純ではないことが良くわかる。まずは本書の大部を占める環境要因。黒人社会でその種目が選択されるに至る社会的背景が大きな要因となっていることは否定できない。一昔前はボクシングの世界王者を黒人が占めていることが黒人の運動能力の高さを示していると言われていたが、多くの黒人がボクシングの道へ進む動機を失った現在では、黒人の世界王者はむしろ少数派となっているのがその一例。陸上競技の道へ進む黒人... 2012-10-11 book
book キンマサタカ(編集), 本当は怖い昭和30年代 ALWAYS地獄の三丁目 いわゆるコンビニ500円本だが、これがなかなか。増刷もかかっている。三丁目の夕日に代表される昭和懐古ブームに対抗し、昭和30年代の悪いところだけを抜き出したもの。キレイなところだけを抜き出した作品よりもこちらの方が娯楽としてよっぽど面白い。 2012-09-30 book
book ダニエル・ジロディ(著), アンリ・ブイレ(著), 松岡智子(訳), 美術館とは何か ミュージアム&ミュゼオロジー ミュゼオロジーの入門書であるが、事前知識なしで読める構成なので、素人でも楽しめる。美術館や博物館はただの見世物小屋ではなく、それらを中心とした街作りまで踏み込んで考えるべきものであることを認識させられる。美術館の中の空間作りにも詳しく、どのような意図で展示されているかを考えるための助けになる内容。また、図版の質も高く、眺めているだけでも楽しい一冊。 2012-09-26 book
book 池上彰, 知らないと恥をかく世界の大問題 池上彰の著作を読むのは初めて。新書一冊で世界経済から各地の軍事問題、資源争いに年金問題までを扱っているので、当然内容は薄め。2009年の出版ということもあって民主党推しであるが、その点を除けばトンデモ度は低め。 2012-09-25 book