マイケル・サンデル(著), 鬼澤忍(訳), それをお金で買いますか 市場主義の限界

最近日本で売れているサンデル教授による市場主義の批判本。市場主義がなじまない事例や、市場主義により引き起こされた問題点のカタログ的な構成。

市場主義の問題点として、単純な好き嫌いの道徳面だけではなく、不平等や社会規範の破壊といった視点で捉えているのが興味深い。前者は、ここ数十年の貧困家庭や中流家庭の生活が悪化している原因を、富の配分だけではなくあらゆるものが商品となってしまったがためにお金の重要性が増したことにあると説く。後者は、市民の公共心の問題を金銭の問題に変質させてしまうことで市民としての義務感が締め出されてしまった事例や、罰金を事実上の料金として扱うことで社会的な規範が失われてしまった事例が多数示されている。いずれも、市場主義者が主張する社会効用の最大化が必ずしも実現できない反例として理解できる。

全体としてやや冗長に感じる箇所があるが、単純な道徳論だけではなく市場主義の目指す効用の最大化を実現できない場合があることをロジカルに示す構成は新鮮で、市場主義を信奉する人にも一読して欲しい。お勧め。

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