economics

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根本祐二, 「豊かな地域」はどこがちがうのか 地域間競争の時代

人口コーホート図と経済センサスを用いた地域分析手法の紹介。この二つの簡易な分析だけから様々な仮説が導かれるのを見るのは爽快。
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河邑厚徳, グループ現代, エンデの遺言 根源からお金を問うこと

ミヒャエル・エンデの話は枕として使われているだけで、中心はシルビオ・ゲゼルらによる自由貨幣の話題。 自由貨幣の小さな成功例とメリットばかりで、欠点や批判的な意見に触れることはない。そのため、なぜそんな素晴らしい自由貨幣が限られた範囲でしか利用しかされていないかという素朴な疑問が解決しない。全体を通じて自由貨幣支持者の取材を主要な情報源としていることもあり、参考文献も挙げられておらず、根拠が不明な記述も多い。 意図的かはわからないが、自由貨幣の利点と地域通貨の利点を混同して説明...
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吉田繁治, マネーの正体

断定的な口調がどことなく胡散臭さを感じさせるが、そこをぐっと飲み込んで読み進めると、意外にまともな内容。 経済に関する雑多な内容を寄せ集めた本ではあるが、マクロの視点から投資を考え直す助けとなる内容が多く含まれている。文体の不統一が気になるのはご愛嬌。
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岩井克人, 佐藤孝弘, M&A国富論 「良い会社買収」とはどういうことか

ブルドックソース事件で一躍有名となったM&Aに関する解説と論考。 M&Aを通じて間接的に人材の流動性を高めるべきという思想は日本の実状に合っており、共感できる。企業買収の手順を明確化するためのルールの提言も興味深い。
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小池和男, 日本産業社会の「神話」 経済自虐史観をただす

日本は集団主義の国、日本人は会社人間、長時間労働が競争力を強化、成長は政府のお陰、といった当然の前提のように思われている事項への反論。虚心にデータを眺めることで、新たな事実が見えてくる。 特に興味深いのは、企業内の査定方法の日米比較。日本は独自の慣行から海外に例を見ない年功賃金を生み出したという説が唱えられることがあるが、関連研究を丹念に追っていくと、事はそう単純ではないことが見えてくる。
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ゲーリー・S・ベッカー(著), リチャード・A・ポズナー(著), 鞍谷雅敏(訳), 遠藤幸彦(訳), ベッカー教授、ポズナー判事のブログで学ぶ経済学

The Becker-Posner Blogのより抜きを翻訳したもの。後半にはベッカー教授のBusinessWeek誌の連載も収録。 Blogは双方がやや遠慮しているせいもあるのか、激しい討論というよりはやや落ち着いた議論となっている。率直な深い議論が行われているのはむしろ後半のベッカー教授の単著の部分。こちらは視点も論理展開もなるほどとうならせるものが多い。
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高橋洋一, バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる

負債だけではなく資産の部分も併せて見ることで、日本政府や特殊法人の実態を精査しようという試み。 "バランスシート" と書かれているものの、会計で言うところの正規のバランスシートを扱ったものではないので注意が必要。所々に入っている恨み節が気になるが、読み物としては及第点。最終章の国際政治の話題は本書のスコープから逸脱している様に感じる。
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三品和広, どうする? 日本企業

日本企業の衰退の原因を6つの視点から探る。 売上高の成長を追い求めたために生じた利益率の低下、コンフォーマンス・クオリティを追い求めたために生じたパフォーマンス・クオリティの低下など、ある面での成功が他の成功を奪ってしまう事例は実に刺激的。
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野口悠紀雄, 経済危機のルーツ モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか

1970年代以降の世界経済史。まさにその時代を生きてきた著者の生の感覚や体験談が興味深い。 歴史の延長として見た未来に向け日本がなすべきこととして、衰退産業への支援の中止、資本や人的資源のグローバリゼーション、専門教育への投資が挙げられている。いずれも目新しい提言ではないが、歴史を振り返ればそれらがまさに正論であることがよく分かる。
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ナシーム・ニコラス・タレブ(著), 望月衛(訳), ブラック・スワンの箴言

やで名を上げたナシーム・ニコラス・タレブによる格言をまとめたもの。 どことなく英国風な皮肉に満ちた物言いが心地よい。