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小池和男, 日本産業社会の「神話」 経済自虐史観をただす

日本は集団主義の国、日本人は会社人間、長時間労働が競争力を強化、成長は政府のお陰、といった当然の前提のように思われている事項への反論。虚心にデータを眺めることで、新たな事実が見えてくる。特に興味深いのは、企業内の査定方法の日米比較。日本は独自の慣行から海外に例を見ない年功賃金を生み出したという説が唱えられることがあるが、関連研究を丹念に追っていくと、事はそう単純ではないことが見えてくる。
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ゲーリー・S・ベッカー(著), リチャード・A・ポズナー(著), 鞍谷雅敏(訳), 遠藤幸彦(訳), ベッカー教授、ポズナー判事のブログで学ぶ経済学

The Becker-Posner Blogのより抜きを翻訳したもの。後半にはベッカー教授のBusinessWeek誌の連載も収録。Blogは双方がやや遠慮しているせいもあるのか、激しい討論というよりはやや落ち着いた議論となっている。率直な深い議論が行われているのはむしろ後半のベッカー教授の単著の部分。こちらは視点も論理展開もなるほどとうならせるものが多い。
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高橋洋一, バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる

負債だけではなく資産の部分も併せて見ることで、日本政府や特殊法人の実態を精査しようという試み。"バランスシート" と書かれているものの、会計で言うところの正規のバランスシートを扱ったものではないので注意が必要。所々に入っている恨み節が気になるが、読み物としては及第点。最終章の国際政治の話題は本書のスコープから逸脱している様に感じる。
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三品和広, どうする? 日本企業

日本企業の衰退の原因を6つの視点から探る。売上高の成長を追い求めたために生じた利益率の低下、コンフォーマンス・クオリティを追い求めたために生じたパフォーマンス・クオリティの低下など、ある面での成功が他の成功を奪ってしまう事例は実に刺激的。
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野口悠紀雄, 経済危機のルーツ モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか

1970年代以降の世界経済史。まさにその時代を生きてきた著者の生の感覚や体験談が興味深い。歴史の延長として見た未来に向け日本がなすべきこととして、衰退産業への支援の中止、資本や人的資源のグローバリゼーション、専門教育への投資が挙げられている。いずれも目新しい提言ではないが、歴史を振り返ればそれらがまさに正論であることがよく分かる。
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ナシーム・ニコラス・タレブ(著), 望月衛(訳), ブラック・スワンの箴言

やで名を上げたナシーム・ニコラス・タレブによる格言をまとめたもの。どことなく英国風な皮肉に満ちた物言いが心地よい。
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荒井一博, 学歴社会の法則 教育を経済学から見直す

まずは表題ともなっている学歴社会の "法則" 。人的資本論やシグナリング理論といった主要な学説に加え、両親の学歴と子供の学歴の関係などをデータに基づいて論じる。このあたりは著者の専門分野でもあり、納得できる内容。後半は教育にまつわる雑多な話題をいくつか。経済学の視点からのバウチャー制度批判やいじめ対策、学級規模の最適化などは文献もきちんとしており非常に興味深い提言となっている。一方、著者の思い入れが感じられる英語教育論は個人的な経験に偏りすぎているように見える。随筆として読む...
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マックス・ギュンター(著), 林康史(監訳), 石川由美子(訳), マネーの公理 スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール

面倒な言葉遊びをせずに "投機" と言い切って推奨してしまうところが潔いマネー本。かなり精神論寄りではあるが、投機に最も必要な自己統制を学ぶには良い本。一見すると現代ポートフォリオ理論と真っ向から対立する様な記述も多いが、この著書の立ち位置からすると理論の及ばない範囲の事柄に対する心構えということになるだろう。
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橘玲, 日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル

橘玲の新刊。今作のテーマは、今後実施される大規模な金融緩和の結果がどちらに転んでも対応できる資産防衛法。この種の破綻本にありがちな「未来はこうなる (だからこれを買え) 」という断言はなく、様々なシナリオを想定した上で適切な金融商品を考えるスタイル。最も多くのページを割いている破綻シナリオの投資先には、国債ベアファンドや物価連動国債ファンドなど一般に余り馴染みのないものも含まれているが、理論的に考えると合理的な選択肢の一つとなる。
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佐藤俊樹, 不平等社会日本 さよなら総中流

社会調査の手法により、階層の相続の有無を解き明かそうとする試み。特に、ホワイトカラー雇用上層の再生産に軸足を置いており、近年の知識階級が閉鎖的となっている様子がよく分かる。SSM調査のデータを基礎としているため、少々強引な仮定を置いて推測している箇所も見受けられるが、この種の調査としては許容範囲だろう。一昔前の質実剛健な新書のスタイルのため、読み応えも十分。