economics

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荒井一博, 学歴社会の法則 教育を経済学から見直す

まずは表題ともなっている学歴社会の "法則" 。人的資本論やシグナリング理論といった主要な学説に加え、両親の学歴と子供の学歴の関係などをデータに基づいて論じる。このあたりは著者の専門分野でもあり、納得できる内容。 後半は教育にまつわる雑多な話題をいくつか。経済学の視点からのバウチャー制度批判やいじめ対策、学級規模の最適化などは文献もきちんとしており非常に興味深い提言となっている。一方、著者の思い入れが感じられる英語教育論は個人的な経験に偏りすぎているように見える。随筆として読...
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マックス・ギュンター(著), 林康史(監訳), 石川由美子(訳), マネーの公理 スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール

面倒な言葉遊びをせずに "投機" と言い切って推奨してしまうところが潔いマネー本。 かなり精神論寄りではあるが、投機に最も必要な自己統制を学ぶには良い本。一見すると現代ポートフォリオ理論と真っ向から対立する様な記述も多いが、この著書の立ち位置からすると理論の及ばない範囲の事柄に対する心構えということになるだろう。
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橘玲, 日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル

橘玲の新刊。今作のテーマは、今後実施される大規模な金融緩和の結果がどちらに転んでも対応できる資産防衛法。 この種の破綻本にありがちな「未来はこうなる (だからこれを買え) 」という断言はなく、様々なシナリオを想定した上で適切な金融商品を考えるスタイル。最も多くのページを割いている破綻シナリオの投資先には、国債ベアファンドや物価連動国債ファンドなど一般に余り馴染みのないものも含まれているが、理論的に考えると合理的な選択肢の一つとなる。
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佐藤俊樹, 不平等社会日本 さよなら総中流

社会調査の手法により、階層の相続の有無を解き明かそうとする試み。特に、ホワイトカラー雇用上層の再生産に軸足を置いており、近年の知識階級が閉鎖的となっている様子がよく分かる。 SSM調査のデータを基礎としているため、少々強引な仮定を置いて推測している箇所も見受けられるが、この種の調査としては許容範囲だろう。一昔前の質実剛健な新書のスタイルのため、読み応えも十分。
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橘玲, 不愉快なことには理由がある

週刊プレイボーイの連載 "そ、そうだったのか!? 真実のニッポン" をまとめたもの。 今回は経済系のトピックよりも政治や社会のネタが多め。進化心理学や脳科学のあたりはまだ受け売り感が残るが、読み物としては面白い。
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エドアルド・ポーター(著), 月沢李歌子(訳), 「生き方」の値段 なぜあなたは合理的に選択できないのか?

行動経済学の本だが、研究者ではなくジャーナリストがまとめた本ということもあり非常に読みやすい。 原題の "The Price of Everything" が示す通り、扱われているテーマは実に幅広い。生命や幸福、信仰など、行動経済学の守備範囲の広さを感じさせてくれる一冊。
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新雅史, 商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道

それなりに歴史があると思っていた商店街の大半が、実は第一次世界大戦後の離農者対策として政治的に作られたものであることは新たな発見であった。そこを出発点とすると、戦後の商店街の発展を経て、オイルショック後に急激に崩壊し圧力集団となっていく流れがすとんと腹落ちする。
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トビアス・J・モスコウィッツ(著), L・ジョン・ワーサイム(著), 望月衛(訳), オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く

行動経済学者の視点からスポーツを読み取ろうというという試み。プロのスポーツ選手も審判員もクラブの幹部たちも皆、行動経済学の言うところの損得勘定に (無意識のうちに) 縛られていることがよく分かる。 特に興味深いのは多くの紙幅を割いているホームスタジアムの優位性の原因。今まで良く言われていた通念の数々、観客の声援や遠征の疲れ、本拠地への慣れがほとんど影響していないことを解き明かすくだりは実に痛快。 全体としてデータもしっかりしており、読み物としても文句なしに面白い。強いて難を挙...
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池上彰, 知らないと恥をかく世界の大問題

池上彰の著作を読むのは初めて。 新書一冊で世界経済から各地の軍事問題、資源争いに年金問題までを扱っているので、当然内容は薄め。2009年の出版ということもあって民主党推しであるが、その点を除けばトンデモ度は低め。
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KAPPA, 東大卒医師が教える科学的「株」投資術

"EBI (Evidence-Based Investment) のすすめ" の管理人として名を上げた (現在は閉鎖され、blogサイトの "豊かで、健康で、活動的な、人生を目指して:春山昇華" に移行している) KAPPA氏の著作。高尚な理論は横に置き、儲かる投資方法とは何かだけを追求する姿勢が心地良い。 内容はアクティブ投資寄りで、効率的市場仮説の前提となっている合理的な投資家が現実と乖離していることを検証し、そこで裁定取引を狙うスタイル。タイトルに "科学的" と入って...