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橘玲, 不愉快なことには理由がある

週刊プレイボーイの連載 "そ、そうだったのか!? 真実のニッポン" をまとめたもの。 今回は経済系のトピックよりも政治や社会のネタが多め。進化心理学や脳科学のあたりはまだ受け売り感が残るが、読み物としては面白い。
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門井慶喜, おさがしの本は

図書館のリファレンスカウンターを舞台にした連作短編集。 舞台が舞台だけに本探しにまつわるエピソードを期待してしまうが、それは序盤のみ。中盤以降は政治の話に押されすぎて本の話がどこかへ吹っ飛んでしまった。文庫一冊に様々なネタを詰め込みすぎた感がある。
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川島博之, 「食料自給率」の罠 輸出が日本の農業を強くする

「食糧危機」をあおってはいけない以来の、世界的な食料余りのスタンスは全く変わらず。今作ではそれをさらに発展させ、日本の農業を産業して成り立たせるための方策を論じる。 端的に言ってカロリーベースの食料自給率を上げるということは、儲からない穀物の生産を無理に押し上げることであり、採算を取ることは難しい。無理に辻褄を合わせるのならば農地の大規模化を推し進めるしかないが、これはこれで政治的な理由により難しい。 となると、現実的に可能なのはオランダ型の農業となる。オランダは穀物自給率 ...
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橘玲, 臆病者のための裁判入門

外国人の知人が巻き込まれた小さな民事事件に関わることとなった著者による裁判録。 外国人の代理人として関わっている立場のため、日本の司法制度の問題点が非常に客観的に見えているのが良い。 実際に事件に巻き込まれた場合の対処方法も参考になる部分が多い。どういった機関にどの順序で相談に行くべきかはもちろんのこと、弁護士や裁判官がどういった行動原理で動いているかも非常に重要。 後半は単独の事件からは少し離れて司法制度一般の話。前半の裁判録は橘氏にしては少し珍しい内容であったが、こちらは...
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新雅史, 商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道

それなりに歴史があると思っていた商店街の大半が、実は第一次世界大戦後の離農者対策として政治的に作られたものであることは新たな発見であった。そこを出発点とすると、戦後の商店街の発展を経て、オイルショック後に急激に崩壊し圧力集団となっていく流れがすとんと腹落ちする。
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手嶋龍一, 佐藤優, インテリジェンス 武器なき戦争

インテリジェンス (情報) をテーマにした対談本。検証できない話題が多いので話半分で。 せめて読み物として面白ければと思うが、いい大人がお互いを無批判に褒めあっているのを延々と見せられるのはあまり気持ちのよいものではない。
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奥窪優木, 川満衡, 陣恵運, 中宮崇, 野田雅也, 野村旗守, 三浦小太郎, 宮島理, 山村明義, ヤバい中国人

いつもの別冊宝島のノリで出処不詳の情報も多々あるが、それでもこのテーマに関しては大手マスコミよりもマトモに見える。 扱っているテーマは幅広く、中国の怪しい食材に始まり、その国民性を表すようなエピソードの数々、チベット問題、国費留学生問題など、中国の負の面はひと通り網羅されている印象。
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池上彰, 知らないと恥をかく世界の大問題

池上彰の著作を読むのは初めて。 新書一冊で世界経済から各地の軍事問題、資源争いに年金問題までを扱っているので、当然内容は薄め。2009年の出版ということもあって民主党推しであるが、その点を除けばトンデモ度は低め。
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河合幹雄, 終身刑の死角

死刑について論じる本は多いが、こちらは仮釈放なしの終身刑がテーマ。 超党派の議員連盟である "量刑制度を考える超党派の会" が仮釈放なしの終身刑を主張しているが、多分に感情的な主張であり、法学的にも刑務所の実運用的にも多くの難題を抱えていることがわかる。特に、仮釈放なしの終身刑となった受刑者はもはや怖いものがなくなるため刑務所内の統制がとれなくなる危険性は指摘されるまで気づきにくいところ。 単に法学的な点から論じるだけでなく、刑務所内での処遇や他の制度との兼ね合い、受刑者の更...
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宮崎市定, 科挙 中国の試験地獄

様々な伝説がひとり歩きしている感のある科挙試験の実態を詳細に解説したもの。 特に末期の清朝の制度を中心に解説しているせいもあるが、科挙が恐ろしく複雑な制度であることがよくわかる。中でも特色的なのは、人間を信用しないがために生まれた不正防止の方法の数々。何重にも重ねられたチェック体制がいたずらに試験を肥大化させている原因の一つである。 また、科挙にまつわる道教思想に基づいたエピソードの数々も現代とはかけ離れた感覚があり面白い。 著者独自の考察としては、国家として教育に投資せず民...