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服部昇大, 邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん (1) (2) (3)

美ー子ちゃんに続き、作者の偏愛をそのままマンガにぶつけた作品。数々の邦画を笑いのネタにしながらも、根底にある愛のせいか嫌な印象はまったくない。取り上げられる作品はどれも筋金入りのマイナー作品なので、Netflixなどでお手軽に観られない作品も多い。愛が試されている。
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山田寛英, 不動産投資にだまされるな 「テクニック」から「本質」の時代へ

不動産を専門に扱う会計士が、最近のサラリーマン大家さんブームに警鐘を鳴らす。 よく "不動産投資" と言われるが、その実態は不動産賃貸業の起業。商売である以上、完璧な必勝法などなく、法律や制度、社会の変化に敏感な人でないと勝ち目はない。 不動産事業は立ち上げの最初期がもっとも苦労するが、代々の不動産オーナーはすでに軌道に乗っており、全く異なる存在。そういった人々はまた当たり前のように王道的な知恵や工夫をも受け継いでいたりする。不動産事業を始めるということは、その新規参入者には...
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諸富徹, 私たちはなぜ税金を納めるのか 租税の経済思想史

税金の成り立ちを追ってみると、租税の仕組みそのものが国家であることがわかる。 著者はまずホッブズとロックの租税論に立ち返る。彼らが租税を国家が市民に提供する便益への対価と定義したことが、国家を形づくったと言える。すなわち、王権神授説から社会契約論にもとづく国家論への転換である。イギリス社会では納税を権利とみなす自発的納税倫理が定着していたのも、この影響が大きい。 一方、無数の領邦国家に分裂していた後進国ドイツでは、イギリスやフランスといった先進国家に対抗して経済的基盤を整えて...
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田中慎弥, 孤独論 逃げよ、生きよ

15年間の引きこもり生活の後に小説家としてデビューした著者が、その間に向き合っていた孤独を論じる。 外圧による思考停止 (これを著者は奴隷状態と呼んでいる) に陥らないため、意識的にいまいる場所から逃げ、冷静な頭で能動的に将来のことを考えることが必要。この過程で、孤独と向き合い、不安に耐え、思考を強化することは避けられない。
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パオロ・マッツァリーノ, エラい人にはウソがある 論語好きの孔子知らず

神格化されている孔子の実像に迫ろうという試み。文章はいつもの軽いノリだが、文献調査もしっかりしており内容はマトモ。 そもそも孔子の生涯は謎な部分が多く、有名なエピソードも裏付けがないものが多い。それでも史料を追っていくと、正式に礼法を学んだこともない一介のマナー講師にも関わらず礼法による平和的天下統一を目指した変わり者という実像が見えてくる。 論語を用いた道徳教育へのツッコミも頷けるところが多い。美化されない等身大の孔子の姿と論語の原典をそのまま受け入れることで学べることは多...
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ロバート・H・フランク(著), 金森重樹(監訳), 幸せとお金の経済学

幸福学の啓蒙書。 特に、ロバート・フランクの提唱した「地位財」と「非地位財」の違いを重視している。「地位財」は周囲との比較により満足を得るもので、所得や社会的地位、車・家・時計といった物的財が代表的。一方「非地位財」は他人が持っているか否かに関係なくそれ自体に価値を見いだせるもので、健康、安全、自由、愛情などが挙げられる。「非地位財」は希少で、その価値を見極めにくいが、これを選んで投資することで、幸福度を高められる。 これだけを見ると精神論か「地位財」を獲得できない人間の負け...
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シン・ゴジラ

Amazon Prime Videoで視聴。 ピエール瀧の影響はなく、出演シーンのカットなどもなし。 前評判通りの面白さ。早口に繰り出される洪水のような情報量に圧倒されっぱなしであったが、気がつけばグイグイと引き込まれていた。日本の官僚組織をハイコンテクストのまま描ききったのも潔い。もちろん、庵野監督らしく怪獣映画としての面白さも忘れていない。画になるシーンがこれでもかと詰め込まれている。
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大石浩二, トマトイプーのリコピン (1) (2) (3)

磯部磯兵衛物語の後釜として週刊少年ジャンプの巻末ギャグ枠に入ったが、諸事情により少年ジャンプ+へ移籍。単行本は続いて欲しい (週刊少年ジャンプで一旦完結させた版が単行本未収録だが)。 グッズ化できそうなかわいいキャラクターと時事風刺ネタとのギャップがすばらしい。
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岩田一平, 珍説・奇説の邪馬台国

邪馬台国の解説書だが、大和説や九州説などのメジャーどころだけではなく、いわゆるトンデモ説も真面目に解説しているのが売り。それも単に文献を漁るだけではなく、提唱者本人へのインタビューを多数実施している労作。ジャワ島説、新潟説など一見荒唐無稽な説も提唱者本人は大真面目で、どれも一理はあることがよく分かる。
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スコット・A・シェーン(著), 谷口功一(訳), 中野剛志(訳), 柴山桂太(訳), 〈起業〉という幻想 アメリカン・ドリームの現実

華やかに見える米国のスタートアップも、その実態は大きく異ることをデータで示している。 米国はそもそも起業が盛んなわけではなく、その起業もハイテク産業ではなく建設業や小売業などの枯れた業種が中心。起業の動機も、世界を変えるという華々しいものは少数派で、他人の下で働きたくないという理由が多い。起業した結果、雇われていたときよりも長時間労働かつ低収入に陥っていることも多い。 それでも、起業自体が幸福度を挙げることにつながっているのは救い。他人のために働くよりも自分のために働いたほう...