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ASIOS, 謎解き 超常現象 III

シリーズ3冊目となったが、さすがに有名所の超常現象は前2冊でやり尽くした感があり、小粒なネタが多い印象。超常現象マニア以外には知られていない様なものも多いが、読み物としては水準以上。
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塚本宇兵, 指紋は語る “指紋の神様” と呼ばれた男の事件簿

警視庁鑑識研究所長まで務めた著者による指紋の入門書。指紋の基礎から説明されており、一切の予備知識無しで読める。また、さすがに現場の大ベテランだけあり、現場での採取方法や指紋を用いた推理の実例などの情報が非常に豊富。ヘタな推理小説よりもよっぽど面白く読める。少し不満だったのは、誤認逮捕を誘発しかねない第二種過誤の可能性に関する詰めが甘いところか。特徴点の多さを拠り所に説明しているが、各特徴点が独立であることを暗黙の前提としているのはいただけない。また確率の概算を行う際に、特定の...
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エドアルド・ポーター(著), 月沢李歌子(訳), 「生き方」の値段 なぜあなたは合理的に選択できないのか?

行動経済学の本だが、研究者ではなくジャーナリストがまとめた本ということもあり非常に読みやすい。原題の "The Price of Everything" が示す通り、扱われているテーマは実に幅広い。生命や幸福、信仰など、行動経済学の守備範囲の広さを感じさせてくれる一冊。
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畑村洋太郎, 続 直観でわかる数学

直観でわかる数学の続編。今回は数学と言うよりは算数と言ったほうが近いか。相変わらずの (数学者ではない) 工学者目線で、共感できる部分が多い。図版が多めでついさらりと読み流してしまいそうになるが、よくよく自分の頭で考えながら読むと得られる気付きが多い。
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アビゲイル・アリング(著), マーク・ネルソン(著), 平田明隆(訳), バイオスフィア実験生活 史上最大の人工閉鎖生態系での2年間

1990年代前半、アリゾナの砂漠に作られた閉鎖生態系での生活の様子を描いた作品。一般向けの啓蒙書なので、科学データよりも実際の生活寄りの話題が中心。本書の主題となっているバイオスフィア2 (バイオスフィア1は地球そのものを指す) は、わずか1.2ヘクタールの土地の中に、熱帯雨林、サバンナ、砂漠、湿地、サンゴ礁のある海、農地などを詰め込み、(エネルギーと情報以外は) 外部から完全に隔離された環境で、8人の科学者が2年間の生活を試みるもの。リアルな生活の様子として描かれる毎日の農...
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川島浩平, 人種とスポーツ 黒人は本当に「速く」「強い」のか

オリンピックの100m決勝だけを見て黒人の先天的な運動能力の高さを語る向きもあるが、ことはそう単純ではないことが良くわかる。まずは本書の大部を占める環境要因。黒人社会でその種目が選択されるに至る社会的背景が大きな要因となっていることは否定できない。一昔前はボクシングの世界王者を黒人が占めていることが黒人の運動能力の高さを示していると言われていたが、多くの黒人がボクシングの道へ進む動機を失った現在では、黒人の世界王者はむしろ少数派となっているのがその一例。陸上競技の道へ進む黒人...
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谷本道哉(著), 石井直方(監修), 使える筋肉・使えない筋肉 (からだ読本シリーズ)

ウェイトトレーニングの誤解を解くための正しい知識が満載。ウェイトトレーニングで作った筋肉は実際の競技で役に立たないかのような印象を持たれていることも多いが、それが誤解であることが良くわかる。強くて太い筋肉がパワーの面でもスピードの面でも優れていることは間違いないのだが、それが現実に "使えない筋肉" となってしまうのにはいくつか理由がある。その最も大きなものが、ウェイトトレーニングとして効率的な動きと、実際の競技で必要とされる動きが異なるということ。ウェイトトレーニングは反動...
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高木仁三郎, 渡辺美紀子, 食卓にあがった放射能

チェルノブイリ直後に出版されたを福島後に新装版として再販したもの。高木仁三郎が故人となっていることもあり、加筆修正は特に無し。まだ異国での事故であったチェルノブイリが目の前の問題であり、輸入食品をどう扱っていくべきかが主題となっている。とはいえ、放射線の人体への影響などに関する記述は大きく変化するものでもないので、十分に参考になる。トンデモ度も低く、福島後に校正もそこそこに緊急出版された本を読むくらいならばこちらの方がおすすめ。後半には日本で原発事故が起きた際のシミュレーショ...
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トビアス・J・モスコウィッツ(著), L・ジョン・ワーサイム(著), 望月衛(訳), オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く

行動経済学者の視点からスポーツを読み取ろうというという試み。プロのスポーツ選手も審判員もクラブの幹部たちも皆、行動経済学の言うところの損得勘定に (無意識のうちに) 縛られていることがよく分かる。特に興味深いのは多くの紙幅を割いているホームスタジアムの優位性の原因。今まで良く言われていた通念の数々、観客の声援や遠征の疲れ、本拠地への慣れがほとんど影響していないことを解き明かすくだりは実に痛快。全体としてデータもしっかりしており、読み物としても文句なしに面白い。強いて難を挙げれ...
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KAPPA, 東大卒医師が教える科学的「株」投資術

"EBI (Evidence-Based Investment) のすすめ" の管理人として名を上げた (現在は閉鎖され、blogサイトの "豊かで、健康で、活動的な、人生を目指して:春山昇華" に移行している) KAPPA氏の著作。高尚な理論は横に置き、儲かる投資方法とは何かだけを追求する姿勢が心地良い。内容はアクティブ投資寄りで、効率的市場仮説の前提となっている合理的な投資家が現実と乖離していることを検証し、そこで裁定取引を狙うスタイル。タイトルに "科学的" と入ってい...