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水島弘史, 水島シェフのロジカルクッキング 1ヵ月でプロ級の腕になる31の成功法則

水島シェフの著作を手にするのは美味しさの常識を疑え! に続いて3冊目。 塩加減、火加減、毒出しの基本に基づく31のレシピ集。いずれも馴染み深い料理ながら、食材の重量に対する厳密な食塩量、弱火や弱い中火を基本とした火加減、低温での毒出しを徹底している点が他のレシピ集とは一線を画している。
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三井誠, ルポ 人は科学が苦手 アメリカ「科学不信」の現場から

創造論を信奉するキリスト教根本主義や温暖化をでっちあげと批判する大統領など、米国を覆う科学不信に迫ったドキュメンタリー。 これらの科学不信の原因は知識の有無ではないかと思いがちだが、問題はそう単純ではない。そもそも人が知識に基づいて理性的に行動する存在というのが思い込みで、何かを決めるときに理性に頼る啓蒙主義も18世紀から広がった最近の流行に過ぎない。学校の先生から教えられた直感と反する進化論よりも、最も身近で信頼できる親から教えられ直感にも合う創造論を信じてしまう子供がいる...
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ニック・ポータヴィー(著), 阿部直子(訳), 幸福の計算式 結婚初年度の「幸福」の値段は2500万円!?

幸福経済学の啓蒙書。心理学、精神医学 (精神神経免疫学) などの研究成果を根拠とした主観的な幸福度に関する研究の紹介が中心。 個人の消費活動が隣人と張り合う気持ちに左右されるというジェームズ・デューゼンベリーの相対所得仮説は、ミルトン・フリードマンの恒常所得仮説と相容れないこともあり、主流派経済学からは軽視されていた。しかしながら、金持ちはたいてい貧乏人よりも貯蓄率が高いのにすべての国民が豊かになっても平均貯蓄率が上がらないという現象をうまく説明できるのは相対所得仮説の方だ。...
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キャロル・キサク・ヨーン(著), 三中信宏(訳), 野中香方子(訳), 自然を名づける なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか

生物分類学の歴史を俯瞰する啓蒙書。単純に科学者の視点から最新の科学的分類学を押し付けるのではなく、人間の環世界 (umwelt) センスを基礎とした古典的な民俗分類学に敬意を払っているのに好感が持てる。 人間の環世界は、人間が生物界を認知するための基本的な手段だ。世界中どこに住む人々も、魚、鳥、ヘビ、哺乳動物など、共通した生物のグループ分けを持つ。人々はさらに、よく似た生物は兄弟として扱い、生物の姿が連想されるような名前をつけ、民俗分類の属を600以下に保ちウィリスのカーブに...
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クリス・クリアフィールド(著), アンドラーシュ・ティルシック(著), 櫻井祐子(訳), 巨大システム 失敗の本質 「組織の壊滅的失敗」を防ぐたった一つの方法

複雑なシステムの失敗を、チャールズ・ペローの理論によって読み解く。ペローの理論によると、システムの脆弱性は二つの変数によって決まる。一つはシステムの構成要素感の相互作用が線形系であるか複雑系であるかだ。構成要素の多くが分かちがたく結びついた複雑系では、何か問題が発生すると、あちこちで問題が生じ、何が起こっているかを把握するのが難しい。もう一つはシステム内の緩みの大きさで、密結合であるか疎結合であるかだ (ソフトウェア工学の密結合/疎結合とは意味が異なるので注意)。構成要素間に...
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動物事件研究委員会(編著), ぼくはこうして動物に襲われた あんなに優しい目をしていたのに

一見危険に見えないが実は危険な動物をテーマにした企画本。動物園でおなじみの動物たちから、イルカやアシカといった水族館の人気者まで、幅広い動物が取り上げられている。いずれも危険なイメージがあまりない動物たちだが、実際に人間が襲われた実例を見ると野生で生き延びてきた動物には必ず恐ろしい一面があることを思い知らされる。 子供向けの装丁だが、大人が読んでも十分に楽しめる。
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アナスタシア・マークス・デ・サルセド (著), 田沢恭子(訳), 戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係

現代のスーパーマーケットで手に入る便利な食品の多くが軍隊生まれであり、さらにその多くが米陸軍出身である。缶詰、レトルト食品、フリーズドライ、パック入りの加工肉、エナジーバーといった身近な食品の数々。いずれも持ち運びに便利で、すぐに食べられ、常温で長期保存でき、手頃な価格で、万人に愛される味。これらの特徴はすべて軍隊で求められるものと共通だ。本書は、それらの食品を生んだ米陸軍のネイティック・ソルジャー・システム・センター (ネイティック研究所) への取材や膨大な文献調査により、...
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平山尚, プログラムはこうして作られるプログラマの頭の中をのぞいてみよう

ゲームプログラマになる前に覚えておきたい技術よりも初心者向きの内容。独自の日本語プログラミング言語Sunabaを用いた演習。Sunabaはかなり割り切ったシンプルな言語だがグラフィック出力を備えており、学習用として見事にデザインされている。
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平山尚, ゲームプログラマになる前に覚えておきたい技術

プログラミング言語の基本的な文法くらいは覚えたけど、いざゲームを作ろうとするとどうしたものか見当もつかないという層を対象にした参考書。見事なマーケティング。 少し前の本で、C++のサンプルコードも少々古くはあるのだが、本質の部分はあまり古くなっていない。文体は好みが分かれそうではあるが、必要十分な説明が簡潔になされており、誠実な技術者であると感じる。細かな小ネタに有用なものが多く、ゲームを作らないプログラマであっても読んで損はない。
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米国科学アカデミー(編), 池内了(訳), 科学者をめざす君たちへ 研究者の責任ある行動とは

研究者は必ず読むべき本。タイトルは科学者となっているが、本書で述べられている研究倫理は、工学やその他の分野の研究者であっても厳守するべきもの。 少し前の本なので実験参加者へのインフォームド・コンセントや個人情報の保護に関する記述はほとんど見られないが、その他の不正なデータ操作、利害関係の衝突、研究資料の帰属、業績評価、剽窃など、研究者が知っておくべき事項は一通り網羅されている。