sociology

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ビョルン・ロンボルグ(編), 小林紀子(訳), 五〇〇億ドルでできること

"環境危機をあおってはいけない" で名を上げたビョルン・ロンボルグが主催したCopenhagen Consensusの結果をまとめたもの。これは、500億ドル (最近の会議では少し増額されている) が与えられた際に社会のどの問題に注ぎ込むのが効果的かを議論する会議。取り上げられる問題は、地球温暖化対策、感染症対策、内戦の抑制、教育投資、政治腐敗の解決、飢餓と栄養不良対策、移住問題対策、水問題対策、補助金問題の解決など、いずれも重要性を否定しにくいものばかりだが、専門家の視点で...
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橘玲, (日本人)

橘玲の新刊。表題ともなっている日本人論を出発点に、話は政治哲学にまで及ぶ。本書の日本人論の柱となっているのはWorld Values Surveyの国民性調査やイングルハートの価値調査による各国の価値観比較。それらを通じて極めて利己的で権威や権力を嫌う日本人像を導き出し、過去の日本人達の行動がすべてその日本人像から導かれることを示す。政治哲学に関する章は氏の過去の著作の集大成といったところだが、グローバリズムや正義といった視点からリバタニアリズム、リベラリズム、コミュタニアリ...
comic

郷田マモラ, モリのアサガオ 新人刑務官と或る死刑囚の物語 (1) (2) (3) (4)

死刑制度をテーマにした作品。とりあえず4巻まで一気読み。悩める新人刑務官の視点を中心に、加害者の死刑囚、遺族、各種の支援団体、ベテラン刑務官など、さまざまな切り口から死刑制度を考える作品となっている。死刑制度の意義についても、賛成側反対側の双方の考えがきちんと取り込まれており、作者の取材の成果が伺える。絵は少々癖があり好みが分かれそうだが、このテーマは誰もが考えるべきもの。食わず嫌いをせずに読んでほしい。
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マイケル・サンデル(著), 鬼澤忍(訳), それをお金で買いますか 市場主義の限界

最近日本で売れているサンデル教授による市場主義の批判本。市場主義がなじまない事例や、市場主義により引き起こされた問題点のカタログ的な構成。市場主義の問題点として、単純な好き嫌いの道徳面だけではなく、不平等や社会規範の破壊といった視点で捉えているのが興味深い。前者は、ここ数十年の貧困家庭や中流家庭の生活が悪化している原因を、富の配分だけではなくあらゆるものが商品となってしまったがためにお金の重要性が増したことにあると説く。後者は、市民の公共心の問題を金銭の問題に変質させてしまう...
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飯田泰之, 雨宮処凛, 脱貧困の経済学 日本はまだ変えられる

経済学という表題がついているが、実際は経済談義とでも言うべき対談本。対談本という形式の限界もあるのだろうが、テーマに掲げている貧困の定義自体がやや揺らいでいる。あるときは低所得の人々全般を指しているかの様でもあり、またあるときは労働者の中では少数派の非正規雇用労働者だけを対象としているようにも読める。また、因果関係も不明な箇所が多い。例えば、貧困の原因が小泉政権による構造改革であることが当然の様な口調だが、構造改革はるか前の1980年代から非正規雇用者比率やジニ係数が増加し続...
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上杉隆, ジャーナリズム崩壊

記者クラブを中心とした日本のマスコミ批判。テーマがテーマだけに少々愚痴っぽいのは仕方のない所。ジャーナリズム論としてみると、自身が所属していたニューヨーク・タイムズや諸外国のやり方に合わせろというばかりで、その良し悪しの議論を端折っているのは少し不親切。また、なぜその問題だらけの記者クラブの構造が今まで残っているのかや、それを再構築するにはどうするべきかの議論も足りない。
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酒井あゆみ, 撮影現場にきた女たち

元AV系プロダクション経営者が経験談をまとめたもの。元がサンケイスポーツのコラムを加筆したものなので、内容も大衆紙的な方に振られがち。本格的なドキュメンタリーを求めて読むと期待はずれとなるかも知れないが、真偽や社会的な意義などを気にせずに興味本位として読むのなら面白い。
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谷口正次, メタル・ウォーズ 中国が世界の鉱物資源を支配する

ベースメタル、レアメタル、レアアースといった鉱物資源の世界規模での奪い合いを描いた作品。著者は小野田セメント出身で世界各地での鉱山開発の経験を通じて資源戦争 (メタル・ウォーズ) の現状を熟知しているため、日本の資源戦略のお粗末さに対する怒りが強く感じられる。マクロで見た統計的な情報と、自身の経験や現地取材によるミクロな情報の両方がきちんと押さえられており、資源戦争の現状を把握するには最良の一冊。反面、読み物として見ると少々厳しい。前半半分程度を中国の資源囲い込みの実例が占め...
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斎藤充功, ルポ 出所者の現実

最近では刑務所内の生活などは知られることも多くなったが、出所者のその後の生活に関する情報はまだまだ少ない。新書の制限による限界はあるものの、刑務所の基礎知識や出所者に関する統計的な調査はもちろんのこと、出所者へのインタビューや近年の出所者への支援活動も広く押さえられている。出所者の自立更生と再犯防止を考えるきっかけの一冊としておすすめできる。
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葉山宏孝, AD (アシスタントディレクター) 残酷物語 テレビ業界で見た悪夢

著者は制作会社でのAD経験者。今でこそネットを通じてADの待遇が知られることも増えたが、活字メディアでの内情暴露はまだまだ貴重。著者はルポタージュのつもりで書いているようだが、それにしては踏み込みが浅い。一人の体験談として読むのならば実に興味深い内容。