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ゲアリー・マーカス(著), 鍛原多惠子(訳), 脳はあり合わせの材料から生まれた それでもヒトの「アタマ」がうまく機能するわけ

進化論では生物の進化は漸進的なものであり、手元の材料にその場凌ぎで新たな機能を継ぎ足し続けた (いわゆるKludge) 結果が現在の姿であるとされる。もちろん、人間の脳も例外ではなく、最初から完成形を想定して設計されていたのならばあり得ないような構造が多数見られる。本書は、その様な非合理な脳の設計を進化心理学の立場から解き明かしたもの。人間の記憶、選択、言語、快楽など、ありとあらゆる機能が、進化の歴史的経緯によって大きく歪められていることがよく分かる。また、巻末にはその脳とい...
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ビートたけし, たけしの最新科学教室

ビートたけしによる科学者10人へのインタビューをまとめたもの。いわゆるタレント教授などではなく本物の先端を行く学者なので、一つ一つの話から熱意が感じられ、読む方もつい熱が入ってしまう。また、聞き手のビートたけしがインタビュー前に相当の予習をしているのが感じられるのも好印象。
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牧野武文, ゲームの父・横井軍平伝 任天堂のDNAを創造した男

ゲームファンなら知らない人はいないあの横井軍平の伝記。遺したおもちゃやゲームを通して横井の生涯を描く。執筆時点で既に故人となっていたことや、本人があまり私的な文書を残していなかったこともあり、各場面での横井の心情を憶測だけで描いているような箇所があるのが気になる。それでも、横井の仕事をきちんとまとめた文書が少ない中で非常に貴重な資料といえる。
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ビョルン・ロンボルグ(編), 小林紀子(訳), 五〇〇億ドルでできること

"環境危機をあおってはいけない" で名を上げたビョルン・ロンボルグが主催したCopenhagen Consensusの結果をまとめたもの。これは、500億ドル (最近の会議では少し増額されている) が与えられた際に社会のどの問題に注ぎ込むのが効果的かを議論する会議。取り上げられる問題は、地球温暖化対策、感染症対策、内戦の抑制、教育投資、政治腐敗の解決、飢餓と栄養不良対策、移住問題対策、水問題対策、補助金問題の解決など、いずれも重要性を否定しにくいものばかりだが、専門家の視点で...
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清涼院流水(著), 西島大介(イラスト), 成功学キャラ教授 4000万円トクする話

なぜ小説家がビジネス成功本を、と思ったが、あとがきによると数百冊の成功本を愛読する趣味が高じて著作に至ったらしい。過去の成功本に共通するエッセンスを抽出して小説仕立てに直した様な内容で、どこかで聞いたことがあるような、それでいて実践できそうでできない成功法則が続く。成功法則として目新しいものはないのだが、それでも一気に読ませてしまう構成はさすが。
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那須川哲哉, テキストマイニングを使う技術/作る技術 基礎技術と適用事例から導く本質と活用法

テキストマイニングの入門書だが、教科書的な体裁ながら非常に実践的な内容。著者は元々IBMでTAKMIに携わっていた方で、ビジネス的な視点も備えており、TAKMIを用いたコンサルティングの経験から得られた知見も各所に見られる。基本的にテキストマイニングの利用者視点で書かれているため、本格的にテキストマイニングの研究をしようという向きには物足りないかもしれない。それでも、テキストマイニングの適用方法から関連技術まで大枠はひと通り押さえているので、入門書としては申し分ない。
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松岡修造, 松岡修造の人生を強く生きる83の言葉

タイトル通りの本。ヘタに賢く見せようとせず、精神論一本で押しているところが清々しい。何はともあれ、元気だけは出る。
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橘玲, (日本人)

橘玲の新刊。表題ともなっている日本人論を出発点に、話は政治哲学にまで及ぶ。本書の日本人論の柱となっているのはWorld Values Surveyの国民性調査やイングルハートの価値調査による各国の価値観比較。それらを通じて極めて利己的で権威や権力を嫌う日本人像を導き出し、過去の日本人達の行動がすべてその日本人像から導かれることを示す。政治哲学に関する章は氏の過去の著作の集大成といったところだが、グローバリズムや正義といった視点からリバタニアリズム、リベラリズム、コミュタニアリ...
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郷田マモラ, モリのアサガオ 新人刑務官と或る死刑囚の物語 (1) (2) (3) (4)

死刑制度をテーマにした作品。とりあえず4巻まで一気読み。悩める新人刑務官の視点を中心に、加害者の死刑囚、遺族、各種の支援団体、ベテラン刑務官など、さまざまな切り口から死刑制度を考える作品となっている。死刑制度の意義についても、賛成側反対側の双方の考えがきちんと取り込まれており、作者の取材の成果が伺える。絵は少々癖があり好みが分かれそうだが、このテーマは誰もが考えるべきもの。食わず嫌いをせずに読んでほしい。
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神戸孝, 勝つ投資信託 良いファンド悪いファンドの見分け方

シャープレシオによる投資信託選定を進める本。当然ながら、アクティブ型の投資信託寄り。本書の一番の問題点は、シャープレシオによる選定を推奨しているにも関わらず、肝心の過去のシャープレシオと未来の利回りの相関を一切検証していないこと。また、各種の投信の比較を行う際に生存者効果によるバイアスを排除していない様に見える点も気になる。