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サイモン・シン, 青木薫(訳), 暗号解読 ロゼッタストーンから量子暗号まで

フェルマーの最終定理のサイモン・シンの作品。 古典的な換字式暗号から量子暗号まで、暗号の歴史とそれにまつわるドラマのわかりやすい解説。前作同様、複雑な数式なしで読める構成は見事。おすすめ。
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スー・シェパード, 赤根洋子(訳), 保存食品開発物語

乾燥、塩、酢漬けといった伝統的な方法から、冷凍、フリーズドライといった最新の方法まで、保存食品の歴史を網羅した本。あまり日本人になじみのない食品も多く収録されており、雑学本として楽しめる。 ほぼ時系列順に並んでいるのを通して読むと、食糧の保存こそが文明の源であることを強く感じる。
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松永和紀, 踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓

前作の食卓の安全学に続いて読んでみた。前作はメディアリテラシーに重点を置いていたが、今回は農薬にフォーカスした内容。 普段は危険性ばかりが指摘される農薬だが、現在どのような規制が行われ安全が確保されているのか、またその厳しい規制によりマイナー作物たちにどのような影響がでているのかをわかりやすく解説する。また、2006年度に導入されたポジティブリスト制の解説も充実している。おすすめ。
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サイモン・シン, 青木薫(訳), フェルマーの最終定理

一時世間をにぎわせたフェルマーの最終定理。その当時の報道のほとんどはアンドリュー・ワイルズの業績に触れたのみであったが、実際にはそこに至るまでに多くの数学者たちの3世紀に渡る苦闘があった。 谷山=志村予想やフライの楕円方程式からフェルマーの最終定理に至るまでの流れがよく整理されており、一気に読ませる。また一般書だからといって数学の論理から逃げることなく、それでいて数学の専門家以外にも理解させる構成は見事としか言いようがない。おすすめ。
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松永和紀, 食卓の安全学 「食品報道」のウソを見破る

著者の松永氏は、農学で修士号を取得した後、新聞記者を経て科学ライターという経歴。さすがに専門の農学の知識は深く、参考になる。 また新聞記者の経歴を生かしてか、多くのページがメディアリテラシーの話に割かれている。食品報道だからといって特別なわけではなく、ジャーナリズムを正しく利用することが重要であるのは他の報道と変わらない。
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中谷内一也, リスクのモノサシ 安全・安心生活はありうるか

リスクをはかるには、危険か安全かの二分法ではなく、統計に基づくリスク評価が重要というお話。 年間死亡率に基づく標準化されたリスク比較セットをモノサシとして使用するべきという考え方は合理的に思える。
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ジェームズ・スロウィッキー, 小高尚子(訳), 「みんなの意見」は案外正しい

集団の中の人々が意見の多様性を持ち、独立に行動し、身近な情報を利用できる状況で、各人の意見を集約するメカニズムを導入してやることで、正しい意志選択が可能になるとのこと。確かにそう指摘されると思い当たるところはいろいろある。自分のまわりだけをみても、オープンソースソフトウェアの成功や、(効率的な) 株式市場などが思い浮かぶ。 本書中で数多くの例が紹介されているが、本当に上の様な条件を満たせば正しい選択が可能になるのか、もしくは都合のよい例を集めているだけなのか、という点だけは疑...
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速水融, 歴史人口学で見た日本

歴史人口学というのはこの本で初めて知ったのだが、いわゆる歴史学以上に推理の要素を含み、イデオロギーの要素も少なく、私のような人間の興味をそそる。 本書は速水先生の自分史のようなところもあり、研究を進める上での苦労がしのばれるのも興味深い。中でも史料データベースの作成に伴う苦労がたびたび述べられているが、このあたりは自分のようなコンピュータ屋やデータベース屋とうまく連携できる仕組みが何かできないものか、と強く思う。
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田村秀, データの罠 世論はこうしてつくられる

いわゆるデータリテラシー本。世論調査に始まり、視聴率、都道府県ランキング等、よくみる "危うい" データに触れられている。解説も読みやすく、はじめてのデータリテラシー本としてもお勧めできる。 また巻末では、近年の中央省庁の再編によるスリム化の検証を行っているのが、この手の本にしては珍しいところか。
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トム・スタッフォード, Mind Hacks 実験で知る脳と心のシステム

人間が潜在意識下でどのような処理を行っているかを知ることができるのは興味深い。文中でも触れられているように、生存に有利な方向に進化してきたのだろうということが伺える。 内容も堅すぎず、豊富な実験を実際に自分で体験しながら読みすすめられるので飽きない。内容には全く不満はないが、webページにあるデモンストレーションを見ながらでないと楽しめない項が多く、電車の中で読むのには難があるのだけが残念。